3月25日付 産経新聞より
公設秘書起訴 小沢氏続投は通らない
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/090325/stt0903250313002-n1.htm
■「悪質な違反」と指弾された
西松建設をめぐる違法献金事件で、東京地検特捜部が政治資金規正法違反罪(虚偽記載など)で小沢一郎・民主党代表の公設第1秘書らを起訴したにもかかわらず、小沢氏は代表続投を表明した。
起訴された公設秘書の大久保隆規被告は会計責任者であり、小沢氏と一心同体といえる側近だ。
検察側は起訴にあたり、特定の建設業者から長年にわたり資金が提供された「看過できない重大かつ悪質な事案」と位置付けた。この事件が秘書だけに責任を押しつけて一件落着する事案ではないことを示している。
小沢氏は政治的、道義的責任に加え、大久保被告の刑事責任にどう関与したかが問われることになる。検察のさらなる解明を期待する。小沢氏は24日夜の会見で「責任は大きい」と自ら認めた。その意味では、民主党代表を辞任するなどして政治責任を明確にすべき事態である。
民主党の対応もきわめて遺憾だ。小沢氏の続投を無批判で容認した。同党の自浄能力が働いていないことを国民にみせつけた。
小沢氏や民主党執行部には、大久保被告の起訴が逮捕容疑と同じ規正法違反だけなのか、新事実に基づいて再逮捕されるかを、起訴後の対応の目安に置く考え方があったといわれる。
≪「形式犯」ではない≫
規正法違反が「形式犯」であり、あっせん利得や贈収賄などの罪に比べれば、軽視しても構わないという認識が根底にある。
小沢氏自身が「政治資金収支報告書の問題の認識の違い」であり、「後になって(西松建設からの献金だと)分かれば、収支報告を訂正する」と述べてきた。
規正法上の虚偽記載は「5年以下の禁固」の罰則が設けられた重い犯罪である。刑が確定すれば公民権も停止する。平成15年、後援企業から集めた巨額の寄付を収支報告書に記載しなかったとして、秘書にとどまらず坂井隆憲衆院議員(当時)が逮捕された。
政治資金規正法の柱は、政治資金の「収支の公開」と「授受の規正」だ。後者は政治献金の質、量とともに、対象者を制限するねらいがある。資金提供者をあいまいにするため、ダミーの政治団体を経由させる行為は、法の本来の趣旨と相いれない。
小沢氏は秘書逮捕の後、「不公正な国家権力、検察権力の行使」と検察批判を展開し、「民主主義を危うくする」と強調した。
これまで通用してきた献金が、なぜ悪いのかといった思いがあり、実質的に建設業界との間で構築してきた集金システムの合法性を強調したいのだとすれば、規正法の抜け道探しを政党党首が奨励するようなものだ。
それこそ民主主義の危機ではないか。検察側は起訴に際し、規正法を「議会制民主主義の根幹をなす法律」と位置付けた。
≪政党の生命線を左右≫
「民主党はかくあるべしという姿を国民に示すチャンスだ」
鳩山由紀夫幹事長は党代表時代、自民党議員の疑惑追及で歯切れの良い言葉を残してきた。
今回の事件では「小沢氏を信じるしかない」と繰り返し、硬直的な対応に終始している。
民主党は、公共事業受注企業からの企業献金禁止をマニフェスト(政権公約)に盛り込むなど、政治資金の透明性の拡大を掲げてきた政党だったはずだ。
その意味では、ゼネコンなど企業側から多額の資金を受けている小沢氏は、多くの議員にとって異質の存在に映っていただろう。
小沢氏の資金管理団体が東京都内に多数の不動産物件を購入し、与党側から追及を受けたことも、ほかの党幹部らにとっては説明に窮する重荷だったはずだ。
巨額の資金が西松建設側からダミーの政治団体を経由して提供された実態は、民主党も否定できないだろう。党首が“古い自民党”の体質を引きずっている姿を目の当たりにしたのではないか。
しかし、有権者の視線をとりわけ意識する必要のある政治とカネというテーマに目をつぶり“小沢頼み”を続けようとしている。
現体制の継続は、政党としての生命線にかかわる選択につながる。そういう危機意識はないのか。小沢氏は会見で、献金額の大きさについては「隠すことも恥じることもない」と強調した。
小沢氏の続投の是非を見極めることが、現時点で民主党に問われる自浄能力である。
公設秘書起訴 小沢氏続投は通らない
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/090325/stt0903250313002-n1.htm
■「悪質な違反」と指弾された
西松建設をめぐる違法献金事件で、東京地検特捜部が政治資金規正法違反罪(虚偽記載など)で小沢一郎・民主党代表の公設第1秘書らを起訴したにもかかわらず、小沢氏は代表続投を表明した。
起訴された公設秘書の大久保隆規被告は会計責任者であり、小沢氏と一心同体といえる側近だ。
検察側は起訴にあたり、特定の建設業者から長年にわたり資金が提供された「看過できない重大かつ悪質な事案」と位置付けた。この事件が秘書だけに責任を押しつけて一件落着する事案ではないことを示している。
小沢氏は政治的、道義的責任に加え、大久保被告の刑事責任にどう関与したかが問われることになる。検察のさらなる解明を期待する。小沢氏は24日夜の会見で「責任は大きい」と自ら認めた。その意味では、民主党代表を辞任するなどして政治責任を明確にすべき事態である。
民主党の対応もきわめて遺憾だ。小沢氏の続投を無批判で容認した。同党の自浄能力が働いていないことを国民にみせつけた。
小沢氏や民主党執行部には、大久保被告の起訴が逮捕容疑と同じ規正法違反だけなのか、新事実に基づいて再逮捕されるかを、起訴後の対応の目安に置く考え方があったといわれる。
≪「形式犯」ではない≫
規正法違反が「形式犯」であり、あっせん利得や贈収賄などの罪に比べれば、軽視しても構わないという認識が根底にある。
小沢氏自身が「政治資金収支報告書の問題の認識の違い」であり、「後になって(西松建設からの献金だと)分かれば、収支報告を訂正する」と述べてきた。
規正法上の虚偽記載は「5年以下の禁固」の罰則が設けられた重い犯罪である。刑が確定すれば公民権も停止する。平成15年、後援企業から集めた巨額の寄付を収支報告書に記載しなかったとして、秘書にとどまらず坂井隆憲衆院議員(当時)が逮捕された。
政治資金規正法の柱は、政治資金の「収支の公開」と「授受の規正」だ。後者は政治献金の質、量とともに、対象者を制限するねらいがある。資金提供者をあいまいにするため、ダミーの政治団体を経由させる行為は、法の本来の趣旨と相いれない。
小沢氏は秘書逮捕の後、「不公正な国家権力、検察権力の行使」と検察批判を展開し、「民主主義を危うくする」と強調した。
これまで通用してきた献金が、なぜ悪いのかといった思いがあり、実質的に建設業界との間で構築してきた集金システムの合法性を強調したいのだとすれば、規正法の抜け道探しを政党党首が奨励するようなものだ。
それこそ民主主義の危機ではないか。検察側は起訴に際し、規正法を「議会制民主主義の根幹をなす法律」と位置付けた。
≪政党の生命線を左右≫
「民主党はかくあるべしという姿を国民に示すチャンスだ」
鳩山由紀夫幹事長は党代表時代、自民党議員の疑惑追及で歯切れの良い言葉を残してきた。
今回の事件では「小沢氏を信じるしかない」と繰り返し、硬直的な対応に終始している。
民主党は、公共事業受注企業からの企業献金禁止をマニフェスト(政権公約)に盛り込むなど、政治資金の透明性の拡大を掲げてきた政党だったはずだ。
その意味では、ゼネコンなど企業側から多額の資金を受けている小沢氏は、多くの議員にとって異質の存在に映っていただろう。
小沢氏の資金管理団体が東京都内に多数の不動産物件を購入し、与党側から追及を受けたことも、ほかの党幹部らにとっては説明に窮する重荷だったはずだ。
巨額の資金が西松建設側からダミーの政治団体を経由して提供された実態は、民主党も否定できないだろう。党首が“古い自民党”の体質を引きずっている姿を目の当たりにしたのではないか。
しかし、有権者の視線をとりわけ意識する必要のある政治とカネというテーマに目をつぶり“小沢頼み”を続けようとしている。
現体制の継続は、政党としての生命線にかかわる選択につながる。そういう危機意識はないのか。小沢氏は会見で、献金額の大きさについては「隠すことも恥じることもない」と強調した。
小沢氏の続投の是非を見極めることが、現時点で民主党に問われる自浄能力である。