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金正男氏の暗殺で蘇る120年前の悲運の朝鮮人 遺体斬刑が日清戦争の導火線となった歴史は繰り返すのか

2017-02-27 11:34:29 | 歴史
金正男氏の暗殺で蘇る120年前の悲運の朝鮮人 遺体斬刑が日清戦争の導火線となった歴史は繰り返すのか


http://www.sankei.com/premium/news/170227/prm1702270003-n1.html



北朝鮮の金正日総書記(1941~2011年)の長男・金正男氏がマレーシアのクアラルンプール国際空港で暗殺されたテロは、120年の時をさかのぼり、とある悲運の朝鮮人を現代に蘇らせた。



 金玉均(1851~94年)


 異国の地で、回転式拳銃で暗殺された後、胴体を川に棄てられ、首/片手・片足/残りの手足を、それぞれ自国の別々の地でさらされた。遺体を斬刑に処すのは朝鮮の伝統だ。


 李氏朝鮮(1392~1910年)末期、王朝内の守旧派にとって、清国からの完全独立や、大日本帝國が成し遂げた明治維新を範とし朝鮮近代化を目指す金玉均は、目障りこの上ない存在であった。金玉均は日本の立憲君主制をお手本としたが、北朝鮮の「世襲制度」を批判した金正男氏と重なる部分を認める。


 金正男氏暗殺以降、安全保障・公安関係者と接触すると、金玉均の話が結構持ち上がる。古今の朝鮮が墨守する恐怖政治の「国柄」にもがき、祖国の守旧派ににらまれた末の悲劇…など、「二人の金」の運命を見つめ直すと、情勢分析の一助になるためだ。

 「ひょっとしたら、金正男氏の遺体が北朝鮮に引き取られていたら斬刑に処され、さらされたのでは」と観測する関係者もいた。しかし、最も注目すべきは、金玉均暗殺が《明治二十七八年戦役=日清戦争/1894~95年》の導火線の一つとなった史実。


 折しも、韓国は朴槿恵大統領のスキャンダルで、乏しい統治機能が一層低下している。韓国の政治不安と金正男氏暗殺に、北朝鮮の兄弟国・中国がどう出るのかも、不透明だ。

 何より、北朝鮮の核・大陸間弾道ミサイル(ICBM)の完成を待たず「攻勢」に移る-そんな観測も出始めた米トランプ政権と、体制引き締めに向け戦争を辞さない構えをチラつかせ、揚げ句、間合いを間違え戦争に突入する懸念が排除できない朝鮮労働党の金正恩委員長率いる北朝鮮指導部とのせめぎ合いの結末が気になる。


 本年は、朝鮮戦争(1950年~)が休戦中に過ぎぬ現実を、近年なかったほど自覚する年になるに違いない。




◇哀れな「事大主義」外交


 金玉均の暗殺は明治27(1894)年3月。日本に亡命中の金玉均は上海におびき寄せられ、暗殺された。清国と朝鮮の共同謀略に遭難したのだった。李氏朝鮮の第26代王・高宗(1852~1919年)の妃・閔妃(1851~95年)らを“主役”とする、暗殺前後の経緯はこうだ。


 【第一幕】閔妃は義父・興宣大院君(1820~98年)の有した実権を奪うや、大院君の攘夷政策を一転、開国路線に舵を切り、欧露に先駆けて真っ先に日本と外交条約を締結。日本は朝鮮を、清国の冊封より独立した、国家主権を持つ独立国である旨を明記し、軍の近代化に協力した。


 【第二幕】結果、新旧2種の軍が並列。そこに旧式軍隊への待遇・給与未払い問題が絡み、《大院君派》が旧式軍隊を利用、呼応して1882年、大規模な反乱《壬午事変》を起こす。《閔派》に加え、近代化を果たした日本に学び、朝鮮を清国より完全独立させ、立憲君主国を目指す《開化派》、さらに日本人の軍事顧問や外交官らを殺害・駆逐。大院君は復権する。


 【第三幕】王宮を脱出した閔妃は、朝鮮駐屯の清国軍を頼る。清国は反乱鎮圧などを口実に漢城(ソウル)に軍を増派し、反乱を指揮したとして大院君を清国に幽閉する。閔妃は、清国への依存を深めていく。


 日本も日本公使館警備に向け条約を結び、朝鮮に派兵し、日清戦争の火ダネの一つとなる。


 【第四幕】開化派は閔妃の清国服属に反発し1884年、クーデター《甲申政変》を決行する。清国や妻=閔一族に実権を握られていた王・高宗もクーデターを快諾した。が、閔派の通報を受けた清国が1500名を派兵。高宗の求めで、王宮警護に就いていた日本公使館警備部隊150名との間で戦闘となる。結局、3日で制圧される。


 【第五幕】甲申政変の失敗で、開化派の指導者・金玉均は、過去の日本滞在で培った人脈を頼りに、日本に亡命する。慶應義塾の福澤諭吉(1835~1901年)や、政治結社・玄洋社の総帥・頭山満(1855~1945年)、後の首相・犬養毅(1855~1932年)ら欧米列強のアジア侵出を憂うアジア主義者の庇護を受け、再起を期していた。だが、体制固めを強行する閔派にとっては危険分子で、日本に再三、引渡しを要求した。


 日本政府は日朝間に犯罪人引渡し条約が締結されていない上、政治犯だとみなして、要求を拒絶した。


 【第六幕】朝鮮側は、今も「国技」として伝承される拉致目的で諜者を日本に潜入させるも失敗。いよいよ、暗殺に舵を切るものの、これもまた失敗に終わる。

 日清間で1885年、日清双方の朝鮮半島撤兵と、やむを得ず再出兵するに当たっての事前通告義務をうたった《天津条約》を締結する。条約により日本は、朝鮮の独立を担保しようと考えたのだ。


 【第七幕】朝鮮が送り込んだ刺客と、朝鮮と謀議した在日清国公使館の諜者は、日本国内でジワジワと金玉均に接近。最後は「朝鮮政府の要職に就かせ、必ずや内政改革を担わせる」と、ニセ条件をぶらさげ、金玉均を清国上海におびき出した。日本国内の支援者も罠とみて反対し、金玉均自身も疑ってはいたが「虎穴に入らずんば虎子を得ず」の意志で上海に赴き、非業の死を遂げた。


 【第八幕】暗殺成功に大喜びした清国は、逮捕した朝鮮人刺客と金玉均の遺体を清国海軍の軍艦で朝鮮に送り届けてしまう。


 【第九幕】日本人は金玉均に深く同情した。反面、清国・朝鮮の残虐非道の手口や公正を欠く処置を大いに非難した。同時に、日本政府の弱腰姿勢もやり玉に挙げられ、金玉均の遺体引取り運動が起こった。この時点で既に「屍への惨刑」が予想されていた証左。実際、日本政府も「屍への惨刑が朝鮮古来の習慣であろうと、国際の信用を著しく損なう」と申し入れた。ところが、朝鮮側は「古来の刑律」をタテに拒絶する。


 【第十幕】日本の申し入れにもかかわらず、金玉均の遺体はバラバラに寸断された。首と四肢は獄門台にさらされ、胴体は漢江に棄てられた。その後、冒頭述べた通り、首/片手・片足/残りの手足を、それぞれ別の地域に送り、さらした。


 本人だけでなく、家族・親族・友人まで罰せられた。



 【終幕】金玉均の遺髪や衣服の一部は密かに日本に持ち込まれ、東京・浅草の寺で営まれた葬儀では、多くの政治家や一般国民が手を合わせた。かくして、日本国内では《清朝同罪論》が熱を帯び、「清国と朝鮮を討伐せよ」といった世論が盛り上がった。


 ただし、金玉均の暗殺→遺体への斬刑だけで、激高するほど日本国民は「朝鮮的」ではない。《長崎事件》など、清国とその子分・朝鮮の相次ぐ傲岸無礼に対し、堪忍袋の緒が切れたのだった。長崎事件は、清国なる大国の正体をよく表している。



 明治19(1886)年、清国海軍北洋艦隊の定遠など4隻が修理のため長崎港に入港した。勝手に上陸した延べ800名の水兵が2日間にわたり、泥酔し、商店に押し入り金品を強奪したり、交番前で放尿したり、婦女子を追いかけ回す乱暴狼藉の限りを尽くす。鎮圧の官憲と斬り合いになり、清国海軍水兵の他、日本の官憲や一般市民を含む大勢の死傷者を出した。けれども、軍事力で圧倒する清国は謝罪をせず、居丈高な態度を改めなかった。


 無論のこと、長崎事件に対する世論の怒りだけでも日清戦争には至らない。


 そもそも日清戦争前夜、清国から日本列島南部に、匕首を突き付けるように伸びる朝鮮半島は、わが国の生命線であった。日本の安全と朝鮮半島の安定は同義といってよい。


 清国はロシアがアジア進出を狙うシベリア鉄道建設に脅え、朝鮮へのさらなる影響力を確保せんと考えた。日本も同じく、ロシアが朝鮮→日本と侵出してくる事態を国家存亡の危機と認識していた。最悪の場合、清国と戦端を開いても、朝鮮半島の安定=緩衝帯を構築する覚悟が国家戦略となったのである。


 かくなる緊張下、役人の汚職や増税に怒る農民が新宗教と結び付いて1894年《甲午農民戦争》を起こす(大院君の陰謀説アリ)。一揆は朝鮮軍を撃破し続け、閔派はまたも清国に援兵を求める。当然、天津条約(既述)上の権利で、日本も出兵を決断。クーデターで閔派を追放した大院君派は、日本に清国軍掃討を要請し、日清戦争に突入する。 



 振り返れば、わが国は朝鮮を近代化し、清国との主従関係を断ち切らせる他、国家の存続を図れなかったが、肝心の朝鮮の腰はまったく定まらなかった。李氏朝鮮は末期、清国→日本→清国→日本→ロシア→日本→ロシア…と、内外情勢変化の度に、すがる先をコロコロと変えていった。《小》が《大》に《事(つか)える》ので《事大主義》と呼ぶ。強国に弱国が服従する哀れな外交形態だ。


 朴槿恵大統領の父、朴正煕元大統領(1917~79年)は暗殺される前「民族の悪い遺産」の筆頭に事大主義を挙げ、改革を模索した。皮肉にも、北朝鮮は「悪い遺産」を嫌悪し自主・自立を意味する《主体思想》を看板に、米国と対立するのみならず、中国にも反発し始めた。





◇「二人の金」の相違点と類似点


 つまり、金玉均は《事大主義》の、金正男氏は《主体思想》の、正反対の主義・思想に押し潰された犠牲者といえるだろう。 

 他にも相違点はあるが少ない。金玉均が祖国に対するクーデター《甲申政変》を起こした後、金正男の方は金正恩委員長に反旗を翻すことなく、暗殺された点ぐらい。

 むしろ、共通点が多い。


 (1)金玉均の遺体は切断されて、さらされた。一方、金正男氏も闇から闇ではなく、ビデオカメラだらけの国際空港という、メディア映像が世界中に拡散しやすい“舞台”が選ばれた。共に国内外の反体制派・不穏分子・亡命者ばかりか、軍人・官僚・外交官への「見せしめ」目的を強く感じる。

 駐マレーシアの北朝鮮大使は「遺体の返還」を連呼したが、安全保障・公安関係者の間で、「金正男氏の遺体の斬刑」可能性が流れるのには、理由がある。


 北朝鮮の初代最高指導者・金日成(1912~94年)の娘=金正日の妹を妻とし、甥・金正恩委員長の後見人的存在で実質的ナンバー2だった張成沢(1946~2013年)の最期。張は、やはり甥の金正男氏をわが子のように溺愛し、2012年、中国の胡錦濤国家主席(当時)に面会した際、金正恩委員長を排して金正男氏を北朝鮮の最高指導者にすえる提案をした、ともされる。


 《金正恩委員長の逆鱗に触れた張は、自分の部下が処刑される残虐シーンに立ち会わされ、自身は数百発の機銃掃射でハチの巣に。遺体は金正恩委員長の「地球上から痕跡をなくせ」という命令で火炎放射器で焼かれた…》


 張への惨刑は産経新聞の《秘録金正日》で、龍谷大学の李相哲教授が明らかにするなど、複数のメディアが報じた。「屍への惨刑」は北朝鮮で、今も続いているのだ。


 (2)金玉均の遺体斬刑は「国際の信用を著しく損なう」と、日本は朝鮮に忠告したが、朝鮮側は聞き入れなかった。現代のまともな国においては、毒殺すら有り得ない。しかも、兄殺しとあっては、国際的イメージを極度に低下させる。国際的イメージに関して、朝鮮も金正恩指導部も理解不能なほど鈍感ではあるが、孤立を自覚できぬあたりもソックリ。死守すべき対象の前にあっては、死に物狂いになる。


 (3)金玉均は日本による、金正男氏も中国による身辺警備や庇護を受けていた。日本国内での金玉均暗殺は失敗ばかり。拉致・暗殺には場所的制約が伴う。本妻の居る北京や愛人を囲うマカオなどは、金正男氏の生活・ビジネス拠点だった。だが、「兄弟国」たる中国の主権の及ぶ場所では、さすがに金正恩指導部も金男氏暗殺を躊躇した。


 他方、中国が北朝鮮と水面下で何らかの取引をし、見返りに身辺警護をはずして金正男氏を北に売った、とする見方がある。暗殺が「中朝合作」とすれば、朝鮮が清国と共謀して金玉均を消し去った後、日本で沸き起こった「清朝同罪論」が頭をかすめる。


 (4)金日成直系の金正男氏。子息の金ハンソル氏も北朝鮮の“統治継承権”を有する。従って、金ハンソル氏を筆頭標的に、金正恩委員長が「正男氏の血」を根絶する恐れは否定できない。金玉均の時代は既述した通り、家族・親族・友人まで刑に処された。北朝鮮でも同種の「連座制」が適用されている。      




                        ◇       



 朝鮮半島に在った最後の統一国家・李氏朝鮮は腐敗と恐怖政治と事大主義で滅んだ。北朝鮮は恐怖政治と主体思想で自滅するのだろうか。そして、韓国も腐敗と事大主義で…



2017.2.27






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憎しみの種を植える中国 加担する記者たちは責任を負う 

2017-02-25 19:24:51 | 支那(中国)
憎しみの種を植える中国 加担する記者たちは責任を負う 

米国人ジャーナリスト、マイケル・ヨン氏


http://www.sankei.com/premium/news/170225/prm1702250023-n1.html


 アメリカ人のジャーナリストに、「あなたは中国政府を信じるか」と尋ねてみなさい。もし、答えがイエスであるなら、もうその人と何も話す必要はない。しかし、もし、答えがノーであるならば、次には「彼ら(中国政府)は、日本について真実を語っていると思うか」とたださなければならない。


 中国は、死をもたらす情報戦争を主導している。第一の標的は日本。最終的な目標は米国だ。2年以上、私たちのチームは、中国が推し進める過激化プログラムが、日本を標的としたテロの発生につながるだろうと警鐘を鳴らしてきた。これらの警告が正しかったことは、小規模な攻撃が加えられたことなどから証明されている。



 2015年11月には、過激な韓国人の男が靖国神社内で爆発物を起爆させた。男は韓国に逃亡したが、翌月、日本に戻ったところを逮捕された。


 2013年には、別の韓国人の男が靖国神社に不法侵入し、建物にシンナーが入った缶を投げつけて取り押さえられた。これは2011年に中国籍の男が靖国神社の門に放火した事件を模倣したものとみられている。同じ男がその後、ソウルの日本大使館を襲撃し、逮捕された。しかし、男が靖国神社放火犯だとわかると、韓国当局は男の身柄引き渡しを拒否した。


 さらに、2010年に日本大使殺害未遂事件を引き起こした韓国人の慰安婦活動家が、2015年には、米国のリッパート駐韓大使暗殺未遂事件を起こし、大使は刃物で顔を切りつけられて血まみれになった。



 中国、韓国のメディアと両国政府が、日本を悪魔のように扱うことが多くなるにつれ、同様の事件が増え、それが当たり前のようになってきているのだ。


 私は個人的に、この題材などについて中国、韓国、日本、タイ、台湾、フィリピン、オーストラリア、インドネシア、マレーシア、ミャンマー、そして米国の11カ国・地域で調査を行った。だが、反日感情を持つとプロパガンダ(政治宣伝)されているこれらの国のほとんどが、まったく逆の状況であった。たとえば、インドネシアでは、日本人は同国の独立のために戦ったとして、米国のアーリントン国立墓地に相当するインドネシアの墓地に埋葬されている。私と研究チームの仲間は実際、数千ものイスラム教徒が眠る墓地に、日本人がまず先に埋葬されているのを見た。


 タイも、(日本人に対する)恨みを持った国であると喧伝されている。私は米国人だが、私のタイ人の家族は、休暇には日本に旅行する。タイ人たちは、日本人に対する恨みなどはない。彼らは、(日本人を)仲間だと思っている。市民の草の根レベルから政府まで、関係は良好である。


 私の事務所近くのバン・カットには、日本兵を祀った大きな記念碑が学校の敷地内にある。もし、日本人が地域を破壊し尽そうとしたなら、タイ人たちは1万8000人もの日本兵士の記念碑を学校に建立するのを許すだろうか。タイのアピシット・ウェーチャチーワ元首相とバンコクで個人的に話す機会があり、靖国神社や慰安婦について、タイの立場について尋ねたが、答えは、何もないだった。


 一握りの日本人たちは、第二次大戦の戦場だったバターンやカンチャナブリで戦争犯罪は行われなかったと、主張している。私たちはこれらの場所やほかの場所でも調査を行った。その結果、日本兵による戦争犯罪は事実であった。ただ、反日プロパガンダとは異なり、その問題について学んだほとんどの日本人は、証明された事実やほぼ確実な事実については痛恨の念を表明している。


 しかしながら、日本人が慰安婦として40万人もの女性たちを性の奴隷として組織的に誘拐していたというプロパガンダは偽りだ。そうしたことは起きなかった。20年前、先ほどの誘拐された女性の数は20万人だったが、その前には2万人だった。このまま増え続けると、そのうち100万人になるだろう。誰も、慰安婦という名の合法的な売春制度が存在していたことを、議論しようとしているわけではないのだ。慰安婦制度は存在していた。そして、韓国にも、そのほかの国にも、いまなおそうしたものが存在している。


 こうした慰安婦たちは、旧オランダ領のジャワ島でいくつか報告されているほか、私もミャンマーのカロゴン村で新たに3人の元慰安婦の女性を見つけた。97歳の生存者にも聞き取り調査も行った。しかしながら、ほとんどの女性たちは自ら奉仕していたと語った。ただ、朝鮮人のブローカーたちにだまされて、連れてこられたという女性たちもいた。


 ある米国人の作家で、有力な雑誌のジャーナリストが、ソウルを旅して突然、慰安婦についての記事を発表した。彼の記事は、中国と韓国の視点を載せたものだった。私は彼に電話をして、どこから情報を得たのか尋ねた。

 彼と、ほかのジャーナリストたちはツアーに招かれ、「説得力のある」展示をみせられたのだ。私も同じツアーに参加したが、時期が違った。詐欺であることは明らかだった。真摯な研究者はこうした罠には陥らない。しかし、ジャーナリストたちは、日々、誤った方向に報道を繰り返す。偽りのニュースは広がり、しばし、それを邪魔する者を破壊するのに十分な慣性を得るのである。


 私は、丁重に彼が情報戦の渦中に踏み込んだことを知らせた。彼は、自らを守る姿勢に転じ、私がホロコーストを否定する者であると非難した。ホロコーストは実際にあった出来事だ。その証拠は動かしがたい。だが、日本とはまったく無関係なのである。彼は、反日勢力理想的な道具となった。情報の戦士たちは、キーボードをたたくことで雄叫びをあげる。勝ち誇った叫び声なしに、情報戦はうまくいかないのだ。



 ソウルでの3週間に及ぶ調査では、毎日のように、時には1日に数回、ソウルの日本大使館前の慰安婦像に足を運んだ。今から1年以上前のことだが、反日団体として知られる韓国挺身隊問題対策協議会の活動の一環として学生たちは、像のそばに24時間体制で寝泊まりしていた。カトリック教会の修道女たちもしばしば彼らとともに夜を徹して抗議行動を行うのだ。ソウルのカトリック教会は、公然とこうした政治的な憎悪が波及するのを助け、日本大使館前で毎週のように行われる抗議行動に参加している。ソウルにあるフランシスコ会修道院の入り口にまで、慰安婦像が設置されていた。




 中国の南京では、大虐殺をテーマにした巨大な博物館に行った。建築費は、数千万ドルはかかっただろう。そこは、中国政府が支援してつくった、日本への憎しみを焚きつける場所のひとつであった。建物の前には、生徒たちで満員となったバスが次々到着し列をつくり、生徒たちは鮮やかな色の旗を持ったガイドに連れられてディズニーランドの水準にある博物館に入る。博物館の展示物は、忘れられないほどショッキングなものだ。1000点以上にも上る展示品は、スマホのカメラで撮影しやすいようにライトで照らされ、斬首している人形の写真撮影を勧めている。博物館は、まさに(情報戦争の)最前線の武器となっているのだ。


 南京で様々な者たちによる戦争犯罪は起きた。日本人も部分的には責任を負っている。しかし、中国側が誇張するほどのものではない。日本は過ちに対する自責の念を表明したが、中国は決して自らの過ちを認めない。中国側は現在、30万人が殺害され、多くの女性がレイプされたと主張している。米国の反日ジャーナリストたちは、当時の犠牲者数は2万から3万人だとしている。中国側は決して明らかにはしないだが、犠牲者の多くは、中国国内で起きていた内戦に起因するものなのである。


 現段階で最低限言えることは、▽南京において戦争犯罪は発生した▽犠牲者の数は、宣伝されている数より遙かに少ない▽中国人の軍人自身が多くの残忍な行為に関わっていた▽そして、現在、中国側はそれ(南京事件)を、国民が日本への憎悪を育むための肥料として使っている-という事実である。



 米国のベストセラー作家、ローラ・ヒレンブランド氏が著書『アンブロークン』において、第二次大戦中の1944年、日本軍が北マリアナ諸島のテニアン島で、5000人の朝鮮人を皆殺しにしたと偽りの主張を二度もして、真っ黒なしみを残してしまった。私たちは、彼女の主張に反論した。そして、軽蔑され、さげすまれた。ヒレンブランド氏は、まだ生存している可能性がある人々たちに対して、戦争犯罪の疑いをかけたのだ。戦争犯罪に対する時効というものは存在していない。

 ヒレンブランド氏が1944年に起きたと主張する虐殺のすぐ後に、米軍はテニアン島に侵攻し占領。その島から2つの原爆投下作戦を遂行した。私たちの調査チームは、朝鮮人たちが元気に生存していた証拠である米国の月間人口調査報告など多くの文書を見つけた。それらの中には、朝鮮人たちが日本を敗戦に導くため、666ドル35セントの寄付をしたとする文書も含まれている。


 私たちは、ヒレンブランド氏が彼女の読者たちを欺いたことを証明した。最後に私は、ヒレンブランド氏、もしくは彼女の告発が正しいと証明できた最初の人物に対し、2万ドルを支払うと公表した。もし、その告発が真実であるなら、驚くほど簡単に証明できるはずだが、いまだ証明した者はいない。



 もう一つの情報戦の舞台は、東京にある靖国神社だ。私を含む米国の退役軍人の多くがその聖なる地を参拝し、自分たちの祖先とかつて戦った日本人に敬意を示している。慰安婦や南京に焦点を当て憎悪を扇動することは、人々が靖国神社への参拝に対し、感情的に反応するよう仕向けているのだ。しかしながら、靖国神社を批判する者や抗議する活動家たちは、北京でガラスの下に横たわる、史上最悪の大量虐殺を行った毛沢東の蝋人形を中国が崇拝している、という皮肉を決して口にはしない。


 靖国神社とアーリントン国立墓地を比較すると、アメリカ人の中にも反発する人が出てくる。彼らは、自分たちにとって都合のよい見識に合うように勝手に決めつける人か、靖国には戦犯たちが合祀されていると、反発するかのどちらかだ。しかし、アーリントンにも戦犯たちが埋葬されていると反論することはできる。私たちの内戦(南北戦争)で(合衆国に反旗を翻し、敗れた)南軍の軍人たちもアーリントンには眠る。彼らは、奴隷制度存続のために戦った。フィリピンでの暴動や、アメリカ大陸の原住民に対する扱いなど、ほとんどすべての戦争の戦犯たちがアーリントンには確かに埋葬されているのである。



 ベトナム戦争中に起きたソンミ村での虐殺事件で、軍事法廷で処分を受けたコスター准将も、その一例である。コスター准将は、第二次大戦後に戦犯として処刑され、靖国神社に合祀された山下奉文大将とも比較される。コスター准将は、(米陸軍士官学校の敷地内につくられた)ウエスト・ポイント墓地(第18区画、G列、墓標番号084B)に埋葬された。果たして、米国人はベトナムの大統領からの不満表明を真剣に受け止めるだろうか。あるいは、政府高官がアーリントンかウエスト・ポイントの墓地に敬意を表したとして、何か問題が起こるだろうか。


 米国で尊敬されている指導者のひとり、米軍人のカーチス・ルメイ大将は、こんな名言を残した。「もし、私たちが戦争に敗れれば、われわれはすべて戦犯として罰せられていただろう」


 
 日本人の死生観は、ほかの多くの国の人たちとは異なっている。神道では、死んだ人はすべて平等になる。突如として、将軍も、個人の権利も、犯罪者も、聖人もなくなるのだ。すべての人は、ニュートラルなものとなるのだ。ロサンゼルスには、ほとんどの隊員が日系アメリカ人からなる第442連隊戦闘団の記念碑がある。第二次大戦中につくられた第442連隊戦闘団は、米国史上最も多くの勲章を受けた部隊となった。第442連隊戦闘団は、記念碑を有し、それは正真正銘、名誉ある場所なのである。第442連隊戦闘団の記念碑は、戦没した英雄たちの名が刻み込まれた大きな壁だ。だが、そこに階級は記されていない。彼らの魂は平等なのだ。これが日本人の価値観なのである。


 靖国神社には、240万柱以上の英霊が祀られている。朝鮮人も、軍務で亡くなった動物たちも含まれている。その中には、14柱のA級戦犯も含まれている。中国人は、これをうまく使ってアメリカ人をだまし、韓国人をたきつけ刺激する。その一方で、中国人は、日本の残虐行為を批判しながら大虐殺を行った毛沢東を礼賛し続けている。だまされやすいアメリカ人は特に、この皮肉の意味を理解できないのだ。朝鮮人たちは、彼らが日本国民として、日本軍兵士や将校として戦った事実に目を背けたいようだ。ただし、アメリカ人捕虜たちを虐待した「日本の」憲兵隊の多くは、実は朝鮮人たちだった。しかし、こんな事実もほとんど語られない。



 中国は、日本人が悪霊を呪文で呼び起こすために靖国神社に祈りを捧げていると宣伝することで、中国自身の犯罪から目をそらさせ、日米の関係に摩擦を起こすという一石二鳥の効果を得るのである。これはまるで、映画の筋書きのようである。


 2016年12月29日、日本の防衛大臣が靖国神社を参拝した。予測されたように、米紙ワシントン・ポストは次のように伝えた。

 「東京発-米国の真珠湾から先ほど帰国した日本の防衛大臣、稲田朋美氏が木曜日、戦犯たちを含む日本の戦没者を祀った東京にある神社を参拝した…稲田氏の参拝と、それに先立ち行われた別の閣僚による同神社への参拝は、日本に隣接する韓国と中国から非難を浴びた」-。



 中国政府は、人々の心に憎しみを植え付け、過激化させることで、紛争が起こるように仕向けている。これは、マインド・ゲームどころの話ではない。人々が武器と化すのである。

 中国が人々の心に植え付ける憎悪によって日本人が殺害されるのは、もはや時間の問題である。そして、中国が作り出す、日本で軍国化が進んでいるという神話は、もはや単なる予言ではなくなるだろう。だまされやすい記者たちは、そうした結果をもたらすことに責任を負う必要がある。





 ■マイケル・ヨン 1964年、米国・フロリダ州ウィンターヘイブン生まれ。元グリーンベレー隊員だったが、90年代以降、独立した特派員として活動を開始。イラク戦争やアフガニスタン戦争の前線の真実を伝えたリポートが評価された。慰安婦問題では、米政府が3千万ドル(約35億6200万円)と7年の歳月をかけた調査で強制連行や性奴隷化を裏付ける証拠は発見できなかったと結論づけたIWG報告書をスクープした。

 ヨン氏は「中国の謀略としての慰安婦問題」と題してジャーナリストの古森義久氏とも対談。その内容は発売中の正論3月号に掲載されている。










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周到な「聖徳太子抹殺計画」 次期指導要領案は看過できない

2017-02-23 16:55:24 | 正論より
2月23日付      産経新聞【正論】より



周到な「聖徳太子抹殺計画」 次期指導要領案は看過できない 拓殖大学客員教授・藤岡信勝氏


http://www.sankei.com/column/news/170223/clm1702230006-n1.html



≪国民に「厩戸王」の定着を狙う≫


 文部科学省は2月14日、次期学習指導要領の改訂案を公表した。その中に、国民として決して看過できない問題がある。日本史上重要な人物で、日本国家自立の精神的よりどころとなった聖徳太子の名を歴史教育から抹殺し、「厩戸王(うまやどのおう)」という呼称に置き換える案が含まれているのである。


 聖徳太子(574~622)は、冠位十二階と十七条憲法によって国家の仕組みを整備し、天皇を中心とする国づくりへ前進させた指導者だった。中国大陸との外交では、「日出づる処(ところ)の天子、書を日没する処の天子に致す」という文言で知られる自立外交を展開し、日本が支那の皇帝に服属する華夷秩序に組み込まれるのではなく、独立した国家として発展する理念を示した。

 こうして聖徳太子はその後1世紀にわたる日本の古代国家建設の大きな方向付けをした。


 そこで当然のことながら、現行の学習指導要領(平成20年)では「聖徳太子の政治」を学習すべき一項目として設け、日本の古代律令国家確立の出発点に位置づける次のような指示が書かれている。


【「律令国家の確立に至るまでの過程」については、『聖徳太子』の政治、大化の改新から律令国家の確立に至るまでの過程を、小学校での学習内容を活用して大きくとらえさせるようにすること】(中学社会歴史的分野「内容の取扱い」の項。二重カギは引用者)

 この一文は改訂案でもそのまま踏襲されているのだが、ただ1カ所、右の「聖徳太子」が「厩戸王(聖徳太子)」に突如として置き換えられたのである。


 括弧を使ったこの書き方の意味するところは、「厩戸王」が正式な歴史用語であるが、すぐには誰のことかわからない者もいるので、それは一般には聖徳太子と呼ばれてきた人物のことだ、と注記をしたというものである。

 ということは、新学習指導要領とそれに基づく歴史教科書によって「厩戸王」が国民の間に定着すれば、次期改訂ではこの注記は無くしてしまえるということになる。





≪反日左翼に利用される珍説≫


 改訂案は、小学校ではこの表記の前後を入れ替えて「聖徳太子(厩戸王)」と教えることにするという。学校段階に応じて「厩戸王」という呼称に順次慣れさせ、「聖徳太子」の呼称をフェイド・アウトさせる。周到な「聖徳太子抹殺計画」といえるだろう。


 なぜこんなことになったのか。その根拠は、今から20年近く前に、日本史学界の一部で唱えられた「聖徳太子虚構説」と呼ばれる学説だ。その説は「王族の一人として厩戸王という人物が実在したことは確かであるが」「『日本書紀』や法隆寺の史料は、厩戸王(聖徳太子)の死後一世紀ものちの奈良時代に作られたものである。それ故、〈聖徳太子〉は架空の人物である」(大山誠一『〈聖徳太子〉の誕生』平成11年)と主張する。


 しかし、この説には根拠が乏しい。「聖徳太子」は100年以上たってから使われた称号だが、核となる「聖徳」という美称は、『日本書紀』以前に出現しているからだ。この学説が公表されたあとも、「聖徳太子」の名を冠した書物はたくさん出版されている。



 戦後の日本史学界では、さまざまな奇説・珍説が登場した。騎馬民族征服王朝説、大化改新否定論、三王朝交替説などが典型例である。それらはしばらくもてはやされても、やがてうたかたのように消え去った。「聖徳太子虚構説」もそのような一過性の話題として消え去る運命にあった。

 ところが、事情は不明だが文科省は、この珍説が歴史学界の通説であるととらえてしまったようだ。この説は日本国家を否定する反日左翼の運動に利用されているのであり、その触手が中央教育行政にまで及んだ結果である。





≪日本を精神的に解体させるのか≫


 死後付けられたということを理由にその呼称が使えないとすれば、歴代の天皇はすべて諡号(しごう)(没後のおくり名)であるから、いちいち、大和言葉の長い名称を書かなければならず、歴史教育の用語体系は大混乱となる。そもそも歴史教育は歴史学のコピーではない。歴史教育には国民の歴史意識を育てる独自の役目がある。


 聖徳太子抹殺の影響は古代史のみにとどまらない。明治以降発行された紙幣の人物像として最も多く登場したのは聖徳太子である。このことが象徴するように、聖徳太子は日本人の精神の支えとなる人物だったのだ。

 聖徳太子の抹殺は日本国家を精神的に解体させる重大な一歩である。「日本を取り戻す」ことを掲げて誕生した安倍晋三政権のもとで見逃されてよいはずがない。


 だが、まだ間に合う。文科省は学習指導要領の改訂案について、3月15日まで国民の意見をパブリック・コメントとして募集している。「聖徳太子の呼称を厩戸王に変えるな」という明確なメッセージを文科省に届けて、日本の歴史教育を救わねばならない。(拓殖大学客員教授・藤岡信勝 ふじおかのぶかつ)






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プーチン氏は北方領土返還の決意まで熟していない 日本が「木を揺さぶり」続けても徒労に終わる

2017-02-20 17:34:58 | 正論より
2月20日付    産経新聞【正論】より


プーチン氏は北方領土返還の決意まで熟していない 日本が「木を揺さぶり」続けても徒労に終わる 

北海道大学名誉教授・木村汎氏


http://www.sankei.com/column/news/170220/clm1702200005-n1.html


 今年は、ロシア革命勃発から数えて100周年に当たる。ロシア革命は、一体なぜ起こったのか。この機会にこの問いを考えることは、他の歴史的事件の原因を考えるうえにも参考になろう。




≪タイミングを見定めた揺さぶり≫


 ロシア革命の発生事由に関しては、「リンゴの木」理論がある。リンゴが木から落ちたのを見て、或(あ)る者は説く。「ニュートンの法則」が作用したにすぎない。万物が上から下へと落下するのは、自然の摂理である。ソビエト期にマルクス主義に立つ学者たちは、主張した。帝政ロシアの専制、経済的困難、帝国主義外交-これらの結果として、ロシア革命は起こるべくして起こった。客観的必然性に基づく事件だった、と。

 ところが別の或る者は説く。リンゴの木の下で人間が幹を揺るがしたからこそ果実が落下したのだ、と。人間の主観的営為を重視する見解である。例えば、当時のロシアにレーニンなる人物がいなかったと仮定しよう。その場合、ロシア革命はきっと異なった経過を辿(たど)ったり、違った結果を招来させたりしたのではなかろうか。レーニンを含む革命指導者たちの意志や主張が果たした役割の大きさを強調する見方に他ならない。


 右の2説とも極論であり、両説を統合させた第3説こそが適切。これが、私の意見である。リンゴは熟すと、たしかに落下する運命にあったのかもしれない。だが、その落下は下から揺さぶるという人間の行為がきっかけになって促進されたり、若干違った形を導いたりするに違いない。つまり、客観的状況が熟しかけた頃合いを見計らって、人為的な圧力を加えると、本来の行為がよりスムーズ、かつ当方が望むような形で進捗(しんちょく)する。したがってタイミングを見定めて適切な行動をとること-これこそが単に革命のみならず、全ての政治行動の「要諦」になる。

 「リンゴの木」の例えは、ロシア革命以外の政治現象の説明にも適用可能だろう。戦後日本外交の最大の懸案事項は、北方領土問題を解決しての平和条約締結。では、この課題に取り組む日本側のアプローチや行動様式は、果たして適切なものだろうか。「リンゴ理論」を参考にして、この問いを検討してみよう。





≪経済は追い詰められているのか≫


 現政権はロシアが経済的苦境に陥っていると判断して、同国に経済協力を提供し、それと引き換えに北方領土返還を勝ち取ろうともくろむ。


 現ロシアが目下、経済上の“三重苦”の最中にあることは確かだ。原油価格の下落、ルーブル安、先進7カ国(G7)による制裁である。ところが、右のような政経リンケージ(連関)作戦は、少なくとも次の2点で現ロシア事情を正確に捉えていない。


 1つは、ロシア経済がいまだ領土を譲る決意を下さねばならないまでに、落ち込んでいるわけでないこと。ゴルバチョフ、エリツィン政権下ではほとんどそう決心させるまでに経済が困窮した時期があった。ところが、プーチン政権は約10年近くのあいだ空前の石油ブームに恵まれ、一時は世界3位の外貨準備高すら蓄積した。その恩恵は社会の下部にもしたたり落ち、ロシア国民はいまだ若干のたんす貯金を隠し持っている。


 日本からの支援によってロシア経済が潤うことになっても、それは劇的な万能薬とはなりえない。ロシア極東地方や北方四島の住民が多少の利益を被るだけにとどまり、ロシア国民全体にとっては恐らく、すずめの涙程度の効果しかもたらさないだろう。





≪領土返還の機はいまだ熟せず≫


 もう1つは、プーチン大統領の目眩(めくら)まし作戦が、目下、功を奏していること。


 同大統領は経済的困難から国民の目をそらすために巧妙な戦術を実行している。具体的な外敵を設定し、それに対する「勝利を導く小さな戦争」の遂行である。国有化されたロシアの3大テレビは、ウクライナやシリアでロシア軍が輝かしい戦果を収めつつあるとの報道を、連日連夜、垂れ流す。結果として、プーチン大統領は80%台の高支持率を享受している。


 このような状況に身をおいている大統領が、一体なぜ現時点で日本に対して領土返還に応じなければならないのか。ウクライナからクリミアを奪う一方で、日本へは北方領土を引き渡す。理論上は正当化可能かもしれないが、これは大概のロシア人の心情にはしっくりとこない取引だろう。

 しかもプーチン氏は、2018年3月に次期大統領選を控えている。同選挙さえクリアできれば、氏には24年までさらに6年間の任期が保障される。このように重要な時期に当たり、同氏があえて火中のクリを拾ってまで経済協力の代償として領土返還を決意する-。到底このようには思えない。

 以上要するに、いまだ客観情勢、即(すなわ)ちタイミングはプーチン大統領をして北方領土の対日返還を決意させるまでに熟していない。にもかかわらず今年も日本政府が「木を揺さぶり」続けることだけに熱中するならば、努力は徒労に終わりかねないだろう。(北海道大学名誉教授・木村汎 きむらひろし)













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トランプ大統領にぜひ靖国神社の参拝を 同盟強化が歴史戦を封じ込める 

2017-02-17 17:06:42 | 正論より
2月17日付     産経新聞【正論】より


トランプ大統領にぜひ靖国神社の参拝を 同盟強化が歴史戦を封じ込める 

ジャーナリスト・井上和彦氏


http://www.sankei.com/column/news/170217/clm1702170005-n1.html


 今回の日米首脳会談で、安倍晋三首相とトランプ大統領は「揺らぐことのない日米同盟」を再確認した。さらにアメリカは核および通常戦力の双方によって、日本の防衛に対してあらゆる種類の軍事力を使うと言及した。



 ≪結束を誇示する日米関係≫


 このところ安倍首相が日米関係を語るとき、同盟の結束という言葉を忘れない。2015年4月に米議会で演説した際、「熾烈(しれつ)に戦い合った敵は、心の紐帯(ちゅうたい)が結ぶ友になりました」と述べ、日米同盟をはじめて「希望の同盟」と例えた。昨年末のハワイ真珠湾訪問でも「和解の力」と「希望の同盟」を高らかにうたい上げた。

 大東亜戦争で熾烈な戦いを演じた日米両国が、戦後は和解し、強固な同盟関係を結ぶに至ったことを世界に発信したのである。

 これは昨年5月に広島を訪問したオバマ大統領も同じだった。ただしオバマ大統領のスピーチにも安倍首相のそれにも“謝罪”の言葉は盛り込まれなかった。これについて違和感を覚えた人もいただろうが、それは日本に対し、執拗(しつよう)な歴史戦を挑んでくる中国へのメッセージであったことも忘れてはなるまい。


 中国の脅威が顕在化し、日米両国が1997年9月に「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)の見直し作業の最終報告を行った翌月、当時の江沢民国家主席は中国の元首として12年ぶりに訪米し、その途上でハワイに立ち寄って真珠湾攻撃で撃沈された戦艦アリゾナに献花した。

 そこには中国がアメリカの負った古い傷を思い起こさせ(リメンバー・パールハーバー)、日米同盟に楔(くさび)を打ち込もうとする政治的意図が見え隠れしていた。




 ≪効力失った中国の対日カード≫


 そもそも日本が対米戦を前に大陸で戦っていたのは、主として蒋介石率いる国民党軍(中華民国)である。同時に当時のアメリカが軍事援助も含めて共闘していたのも国民党軍だった。


 ところが、「中華民国」に代わって国連安保理の常任理事国の座についた中華人民共和国は、そのまま「戦勝国」になってしまった。そもそも中華人民共和国は、終戦後に勃発した国共内戦で勝利した結果、1949年10月1日に建国された国であり、日本は中華人民共和国とは戦争しておらず、まして同国が対日戦の「戦勝国」を名乗るのには無理がある。



 毛沢東は、64年に北京を訪れた佐々木更三氏(のち日本社会党委員長)にこう述べている。


 《日本軍国主義は中国に大きな利益をもたらし、中国人民に権力を奪取させてくれました。みなさんの皇軍なしには、我々が権力を奪取することは不可能だったのです》(東京大学近代中国史研究会訳『毛澤東思想万歳』下巻)


 ところが現在では、そんな史実は封印され、中国は「対日戦勝国」に成り上がったのである。だからこそ中国は日本に対して贖罪(しょくざい)の姿勢を求め、執拗に歴史戦を仕掛けてくるのだ。


 日米両国首脳は昨年、大東亜戦争の最初と最後の象徴の地を相互訪問し、恩讐(おんしゅう)を乗り越えて真の和解を成し得た。これは、中国の対日歴史カードの効力を著しく低下させたといってよかろう。

 それを示すように安倍首相のハワイ真珠湾慰霊に同行した稲田朋美防衛相は帰国後、靖国神社を参拝したが、反発はごく短期間で収束した。これで安倍首相の参拝再開の道は開かれたとみてよいだろう。そもそも「靖国問題」の実相は、中国の対日歴史戦の一環なのだ。





 ≪トランプ大統領は靖国参拝を≫


 中国が日本の首相の靖国神社参拝に反対表明してきたのは米ソ冷戦のまっただ中の1985年、ちょうど中曽根康弘首相とレーガン大統領が「日米蜜月」をアピールした時代だった。

 最近では小泉純一郎首相の靖国神社参拝に対して中国が猛反発したが、これも、対テロ戦争でブッシュ大統領との強い結束が示されたときである。

 安倍首相は積極的平和主義に基づく防衛政策や安全保障法制の整備を進め、日米同盟の強化を一段と深めている。

 中国の対日歴史戦の目的は、日米同盟に楔を打ち、日本の安全保障政策を牽制(けんせい)することだ。中国が対日外交を有利に展開し、地域における日本のプレゼンスを封じ込めるためには、日本が“贖罪意識”を持つ戦争の「加害者」であり続けなければ困るのだ。

 安倍首相のハワイ真珠湾訪問に際し、中国の陸慷報道官は「真珠湾以外にも南京大虐殺記念館などの慰霊施設がある」などと記者会見で述べていたが、ならば日本にも慰霊施設がある。靖国神社だ。


 今回の訪米で、安倍首相はアメリカの戦没者を追悼するためにアーリントン墓地を訪問し鎮魂の誠をささげた。であれば年内に予定されたトランプ大統領の来日時に、日本の戦没者を祀(まつ)る靖国神社を、安倍首相とともに参拝してもらえないだろうか。これで戦後日本の軛(くびき)は取り除かれることになろう。(ジャーナリスト・井上和彦 いのうえ かずひこ)













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韓国教科書「日本軍による慰安婦集団殺害」のウソに制裁を 日本政府が抗議しない不思議

2017-02-16 20:59:11 | 政府
韓国教科書「日本軍による慰安婦集団殺害」のウソに制裁を 日本政府が抗議しない不思議


http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20170216/frn1702161530006-n1.htm


韓国政府が編纂(へんさん)した国定教科書(高校用歴史)の見本本には「慰安婦は戦争に敗北して逃げる日本軍に集団殺害されたりした」との記述が新たに加わった。韓国各紙が1日付で報じたことだ。



 しかし、「日本軍による慰安婦集団殺害」とは、どこにも記録も証拠もない。反日惹起のための悪質なデマだ。


 それを教科書に記載するとは、まさに「どうしようもない国」だが、不思議なことは日本政府が抗議していないことだ。大使が帰国中だろうと、まだ見本本だろうと、これは日本国の名誉にかかわる重大事案だ。許してはならない。「制裁措置」に踏み切るべきだ。



 韓国はこれまで、対日被害の甚大さを装うためなら、陳腐なニセ史料や学説にも食らいついてきた。その姿勢からすれば「集団殺害」という刺激性十分な“お話”を、今日まで放置してきたのは不可解極まる。

 もし、昔から「慰安婦集団殺害」が“お話”としてでもあれば、朝日新聞の大誤報に煽られて、慰安婦を対日の材料にした瞬間から「強制連行され、集団殺害された」と叫んでいて当然だ。


 韓国の新聞は、慰安婦問題にことさら熱心だが、国定教科書の記事が出るまで「集団殺害」を示す史料や証拠を報じたことがない。つまり、取って付けたウソなのだ。


 なぜ、こんな荒唐無稽の“お話”が最終見本本に登場したのか。

 考えられることの第1は、左翼陣営の「親日の教科書だ」という攻撃を回避するため、編纂者が「どの教科書も採り上げなかった『集団殺害』も記載した」とアピールしようとしたことだ。


 もう1つは、昨年夏に大ヒットした『鬼郷』という反日プロパガンダ映画が「慰安婦集団殺害」を“売り”にしたことだ。あるいはベトナム戦争で自分たちがしたことを思い出し、「日本軍もしたはずだ」と勝手判断(=心理学の『投影』)をしたのだろうか。


韓国の小学生用「道徳」の教科書には、「アリランは世界一美しいメロディーに選ばれた」「ハングルは世界一優れた文字に選定され、国連は文字を持たない民族にハングルを採用するよう勧めている」と書いてあったことがある。ネットのヨタ情報を確認もせず載せていたのだ。



 韓国の教科書編纂者とは、その程度のレベルだから、「親日の教科書」だとする攻撃を避けるため、映画を根拠に「日本軍に集団殺害されたりした」と書いたとしても、まったく不思議はない。


 しかし、これまでと次元が違う。日本国の名誉にかかわることだ。


 教科書に載るというのだから、日本政府は「証拠を出せ」と韓国の教育省に怒鳴り込まなければいけないことだ。


 証拠もないのに、そんなことを教科書に記載するというのならば、「大使の一時帰国」程度ではなく、韓国に痛撃となる「制裁措置」を発動すべきだ。ビザ関係、輸入品の検査関係…。簡単なことでも、いろいろある。


 それらは大部分が「日本国内での脱法行為の取り締まり」に過ぎない。これまで見逃してきたことがおかしいのだ。




 ■室谷克実(むろたに・かつみ) 1949年、東京都生まれ。慶応大学法学部卒。時事通信入社、政治部記者、ソウル特派員、「時事解説」編集長、外交知識普及会常務理事などを経て、評論活動に。主な著書に「韓国人の経済学」(ダイヤモンド社)、「悪韓論」(新潮新書)、「呆韓論」(産経新聞出版)、「ディス・イズ・コリア」(同)などがある。






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日本にもマッドドッグが必要だ 無抵抗主義は、現代の国際社会の常識では「悪」である

2017-02-15 12:31:05 | 正論より
2月15日付     産経新聞【正論】より


日本にもマッドドッグが必要だ 無抵抗主義は、現代の国際社会の常識では「悪」である 

東京国際大学教授・村井友秀氏


http://www.sankei.com/column/news/170215/clm1702150004-n1.html


 今回の日米首脳会談でも同盟強化が確認された。強い同盟は共通の価値観によって支えられている。日米は共通の価値観を持っているのか。

 2月3~4日、「マッドドッグ(狂犬)」マティス国防長官が来日した。日本で嫌われる狂犬がなぜ米国で尊敬されるのか(議会承認で反対票は1票だけだった)。優しさを重んじる日本に対して米国は力を信奉する社会であり、マッドドッグは力の象徴である。




≪無視されてきた軍隊本来の任務≫


 現在の世界には、テロや虐殺を防ぎ外国の侵略から自国を守る「正義の力」が存在する。正義の力は強ければ強いほど良い。


 ところが、第二次世界大戦後の日本では戦争が徹底的に否定され、軍隊は国民を害する存在と見なされて「軍隊からの安全」だけが議論された。「軍隊からの安全」のためには軍隊は弱いほど良い。他方、軍隊の本来の任務である外国の侵略から国民を守る「軍隊による安全」は無視されてきた。日本ではなぜ「軍隊による安全」が議論されないのか。戦後教育の結果である。戦後の日本は戦争を深く反省し、戦争に関係あるものを全て否定した。その結果、日本人の思想が世界の常識からずれていったのである。


 人間が行動する基準である道徳には、戦争時に必要な道徳と平和時に必要な道徳がある。戦争に必要な道徳とは、「戦友は助けよ、自身は死すべし」というものである。平和時に必要な道徳は「優しさ」である。戦場で勇猛果敢であることは善であり、敵に対して狂犬であることは悪いことではない。悪い奴と戦うときに「悪い奴を殺すのは楽しい」と言っている人間はよく戦うだろう。戦時に狂犬は役に立つのである。「優しさ」では悪い奴と戦えない。




≪平和主義は無抵抗主義か≫


 勇気や自己犠牲といった「軍事的徳」といわれる道徳は、世界中の国で戦争時にも平和時にも必要な道徳とされている。しかし、日本では戦後、戦争に関係のある道徳として「軍事的徳」は学校教育の中で否定された。「強い国より優しい国」が戦後日本の道徳の基準になった。優しさと平和主義が教育とマスコミを支配した。



 しかし、平和主義には問題がある。今、世界中の多くの国では、平和主義は無抵抗主義と同義であると見なされている。野蛮な軍国主義に抵抗しない無抵抗主義は、現代の国際社会の常識では悪である。現代の世界で正義とされている「反軍国主義」は軍国主義に抵抗する。悪に抵抗しない平和主義は正義ではない。国際社会が平和主義を否定するのは、「平和主義者が暴力を放棄できるのは、他の者が代わりに暴力を行使してくれているからだ」(ジョージ・オーウェル)。


 米国ではなぜ3億丁も銃があるのか。3億人の国民が自分の身を自分で守ろうとしているからである。日本人はなぜ自分の身を守るために銃を持たないのか。日本人は自分が攻撃されれば、銃を持っている誰かが自分を助けてくれると思っているからだ。



 数年前にアーミテージ元米国務副長官は、尖閣諸島を米軍が守ってくれるのかという日本人記者の質問に怒気を含んで答えた。「日本の兵士が米軍の前で戦っていれば米軍の兵士も戦う、横で戦っていても米軍の兵士は戦う。しかし、日本の兵士が米軍の後ろにいれば米軍は戦わない」





≪正義の戦いにも犠牲は生じる≫


 現代の国際法と国連は、自衛戦争、植民地独立戦争、民族解放戦争などを正義の戦争と定義している。さらに、人権を蹂躙(じゅうりん)され虐殺されている人々を助けるために国連が紛争地に武力介入する「保護する責任」に参加するように国連は加盟国に求めている。


 日本が正義の戦いに参加する場合、今の日本に欠けている部分がある。正義の戦いでも必ず死傷者が発生する。戦後の日本は戦争を無視し戦争から目を背けてきた結果、死傷者に対する感受性の高い国になった。正義の戦いに参加するためには、相応の犠牲を払う覚悟が前提になる。



 もう1つ問題がある。日本のように長い間戦争を経験していない国では、戦争の時に誰が役に立つか分からない。日露戦争後に日本の陸軍省は次のように報告した。「概して平時鬼と称せらるる人若(も)しくは之に近き人は戦時は婦女子の如く之に反して平時婦女子の如き人に豪傑の多い事は否定の出来ぬ事柄である」「鬼大尉とか鬼小隊長とか評せらるるものに戦時案外臆病で中には日本の将校にコンナ弱い隊長が居るかと思ふ程弱い人が少なくない」。戦場のマッドドッグは平時は紳士である。


 軍事力に頼る軍国主義国家がよく理解できる言語は軍事力である。軍国主義国家と交渉する場合、軍事力という共通言語によるメッセージは誤解を生む可能性が低い。現在、日本は隣国から強い軍事的圧力を受けている。不当な暴力を抑止するためには、戦う強い意志と強い軍事力を明示することが効果的であり、マッドドッグは戦う強い意志の象徴である。(東京国際大学教授・村井友秀 むらいともひで)












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「軍艦島は地獄島…」韓国映画・絵本が強制徴用の少年炭鉱員を捏造 憤る元島民たち「嘘を暴く」

2017-02-08 09:45:19 | 福沢諭吉〔脱亜論〕
【歴史戦】


「軍艦島は地獄島…」韓国映画・絵本が強制徴用の少年炭鉱員を捏造 憤る元島民たち「嘘を暴く」


http://www.sankei.com/politics/news/170208/plt1702080004-n1.html


「1945年、日帝占領期、われわれはそこを地獄島と呼んだ」

 こんな宣伝文句がつけられた韓国映画のポスターが1月下旬に公開された。映画の題名は『軍艦島』(監督・柳昇完)。「強制徴用」された朝鮮人たちが「生命を賭して脱出を試みる」という映画だ。

 あわせて公表された映画の予告編では、海底炭鉱で腰すら伸ばせないような場所で体を縮ませたまま採掘作業をする朝鮮人少年たち、ガス爆発の危険にさらされながら作業する人たちの姿が映り、そして「ここの出来事を記憶する朝鮮人たちは一人たりとも残してはいけない」という日本語のせりふが流れる。今夏公開予定という。




◇慰安婦の次は…


 映画だけではない。昨年韓国では児童用絵本『軍艦島-恥ずかしい世界文化遺産』(尹ムニョン作、ウリ教育)も刊行された。

 「戦争を引き起こし狂気の沙汰であった日本は、朝鮮半島から幼い少年たちまで強制的に日本に連行したのです。(中略)目的地も告げられずセドリ(主人公の少年の名前)が連れて行かれた場所は、まさに地獄の島『軍艦島』でした」

 映画同様、ここでも「地獄島」という言葉が使われている。絵本では「幼い少年たちが地下1000メートルにまで降りて、日本が戦争の資源として使う石炭を掘らなければならなかったのです」と記している。


 少年たちが鉄格子の檻に収容されている様子も描かれている。


 「少年たちはまさに死の恐怖の中で日々を耐えなければなりませんでした」

 鉄格子の檻の外壁にはハングルで「お母さん、会いたいよー」「おなかがすいたよ ふるさとに帰りたいよー」と書かれている。


 首都大学東京名誉教授、鄭大均はシンクタンク「日本戦略研究フォーラム」の時事論考で「戦時期の日本の炭鉱にあどけない『朝鮮人少年坑夫』など存在しなかったことは関係者なら誰でも知っている」と批判した。


 鄭は絵本になぜ朝鮮人少年が登場するかを次のように分析する。

 「絵本が出た2016年に関係している。朝鮮人慰安婦が『少女像』として脚光を浴びていた時代であり『朝鮮人少年坑夫』はその『少年版』なのだろう」


 戦後、長らく忘れられた存在だった「軍艦島」として知られる端島(はしま)に世界の注目が集まったのは、端島炭坑(長崎市)など「明治日本の産業革命遺産」が15年7月に国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産として登録されることが決まったからだ。

 韓国は官民を挙げて阻止に動いた。映画や絵本はその運動の一環だ。こうした「事実と違うことには反論しなければならない」と立ち上がったのが元島民たちだった。




◇「事実と違う」


 1月7日朝。長崎港から約19キロの沖合にある端島に8人の元島民が上陸した。一時雨との予報も出ていたが、空は晴れ上がり、波もほとんどなく、“里帰り”を歓迎しているかのようだった。

 「死ぬ気で来たよ」


 宮崎県在住の元坑内員で朝鮮半島出身者や中国人とも働いた松本栄(88)は冗談を言いながら、娘たちに脇を抱えられながらゆっくり下船すると、眼前に広がる風景に目を細めた。


 軍艦島は面積約6万3000平方メートル。南北に約480メートル、東西に約160メートル、周囲約1200メートルという東京ドームの約1.3個分ほどの大きさの島だ。最初の竪坑建設に着手した1869(明治2)年から、1974(昭和49)年に閉山するまで多くの人が生活した。

 最盛期の人口は約5300人。小さい島の限られた空間を埋めるように日本初の鉄筋コンクリート造りの高層アパートが建設された。当時の東京の人口密度の9倍だったという。




◇有刺鉄線はなかった


 閉山から43年。建物の多くは朽ち、崩壊していた。松本は「この辺には何があったかな」と、時折つぶやきながらゆっくりと島内を歩いた。


 松本が他の元島民らとともに立ち止まった場所があった。かつて中国人労働者が生活していた建物があったという場所の前だ。今は空き地になっている。


 「中国人は100人ぐらいしかいなかった」「ここに200人の中国人が入る家屋があったというが、そんなに多くの人は入らないよ」「1部屋に入るのはせいぜい10人ぐらいだった」

 中国人労働者を閉じ込めるために有刺鉄線が敷かれていたという話もあるが、松本は「有刺鉄線はなかった」と話す。


 朝鮮半島出身者の子供は日本人の子供と同じように学校に通い、机を並べて勉強した。アパート内には朝鮮半島から来た家族も多く入居していたという。


 そのうち、元島民の一人が島の上にある真っ白な灯台を指さした。

 「戦前、端島は不夜城のように明るかったから灯台なんて必要なかった」

 だが、韓国で出版された児童用絵本『軍艦島-恥ずかしい世界文化遺産』には、灯台から3本の光を発している絵が描かれている。「絵本は明らかに事実と違う」と元島民たちは口々に反論した。





◇録画で記憶を残す


 端島を訪問した元島民たちは長崎市内のホテルでほかの元島民らと合流し会合を開いた。出席者からは故郷である端島が国内外にゆがめて伝えられていることへの憤りの声が相次いだ。


 「端島について書かれた本を読むと端島が(ナチス・ドイツによる)アウシュビッツ収容所と同一だと書いてあり、頭にきた。本に書いてある嘘を暴いて、これが真実であると国内外に言わなければいけない」

 「朝鮮人労働者が虐待されたという話ばかり。欺瞞と虚偽と誇張に塗り込まれた記事が横行していることに憤りを感じる」


 「日本は事実を明確にして反論しなければいけない。慰安婦問題もそうだが、日本は事なかれ主義できたが、もう少し毅然と事実を明らかにして言うべきことは言うという姿勢で臨んでいきたい」

 「韓国では端島を『監獄島』『地獄島』と言っているそうだが、われわれはそんなところに住んだ覚えはない。日本で重い罪を犯して無期懲役を受けた者が軍艦島に来ていると書かれているが、私たちは違う」


 真実を伝えるには、端島で生まれ育った自分たちが口を開くしかない。こうした思いに突き動かされた元島民たちは「真実の歴史を追求する端島島民の会」を1月23日に設立した。

 当時のことを記憶する元島民たちの証言を動画で記録するなどして、後世に「正しい端島の歴史」を伝える考えだ。

 炭鉱労働者たちの証言記録を集めている内閣官房参与の加藤康子は会合で「皆さんの一次証言や一次資料が何よりも一番重要な真実を語る。それをそのままの形で残していきたい」と述べ、元島民や家族に協力を求めた。

=敬称略

(有元隆志、田北真樹子)




                          ◇
 



【用語解説】朝鮮人徴用

 端島など「明治日本の産業革命遺産」のユネスコ世界文化遺産登録をめぐり、韓国側は「強制労働」という言葉を盛り込もうとした。だが、徴用は国民徴用令に基づいており、当時の国際法上違法ではなかった。そもそも請求権問題は、1965年の日韓請求権協定で最終的に完全に解決済みである。ただ、日本側は韓国に配慮し「朝鮮半島などから多くの人が意思に反して連れてこられ、厳しい環境で労働を強いられた」と表明した。









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しんぶん赤旗 「ニュース女子」沖縄報道をどう伝えたか

2017-02-06 22:31:27 | マスコミ
【iRONNA発】


しんぶん赤旗 「ニュース女子」沖縄報道をどう伝えたか  杉田水脈氏


http://www.sankei.com/column/news/170205/clm1702050001-n1.html


113万部。先ごろ開かれた日本共産党大会で公表された機関紙「しんぶん赤旗」の発行部数である。最盛期には発行部数350万を超えていたというから、その影響力の大きさは決して侮れない。赤旗とはどんな新聞なのか。最近の沖縄報道を見れば、その正体がよく分かる。(iRONNA)



 東京の地上波テレビ局「TOKYO MX」の情報番組「ニュース女子」が1月2日に報じた沖縄基地問題に関する報道が話題になっています。ことの発端は、出演者の軍事ジャーナリスト、井上和彦氏が、沖縄の反基地運動が行われている高江付近に取材に行き、その異常な暴力性を指摘したものです。


 最終的に井上氏は、高江の現場に行くことを断念しています。私自身、何度も沖縄の辺野古周辺の反対運動の現場に足を運んでいますが、年々、緊張感が増しています。以前は、われわれの判断で行けたのですが、最近では、機動隊や警察と密に連絡を取りながら、その指示に従って行動しなければなりません。辺野古でこの状態ですから、高江はもっとすごいのでしょう。


 また、この報道で特に話題になったのは、井上氏がインタビューした手登根安則氏(沖縄県民)が示したビラです。このビラは、東大の上野千鶴子教授や前日弁連会長の宇都宮健児氏、評論家の佐高信氏らが共同代表に名を連ねる反ヘイトスピーチの活動団体「のりこえねっと」によって配られたとされるものです。


 私もこのビラのコピーを公安の方からいただきました。それには確かに「往復の飛行機代相当、5万円を支援します。あとは自力で頑張ってください」と書かれています。また、番組内では普天間基地の周辺で見つかったとされる2万円の金額が書かれた茶封筒を提示し、日当を受け取っているのではないかと疑問を呈しています。




◇極左論客ばかり


 反基地運動を支援する団体などはこれを「虚偽だ」と猛反発し、放送倫理・番組向上機構(BPO)に人権侵害を申し立てる事態に発展しました。また、しんぶん赤旗も1月20日の日刊版で「デマ・差別放送流した東京MX」というタイトルで、大きく紙面を割いて記事にしています。

 記事によれば、化粧品会社DHCが番組の最大スポンサーであること▽制作したDHCシアターは極右論客が登場する番組を作り続けていること▽東京MX本社前で訂正・謝罪を求める抗議デモを行ったこと-が主な内容です。不思議なことに、番組については批判していますが、出演した沖縄県民の方々に対しては一言も触れていません。


 極右論客ばかりを登場させると言いながら、赤旗自体は極左論客ばかりを起用しています。当該記事でもアワープラネットTV代表の白石草氏の意見が掲載されています。彼女は「インターネットの情報は玉石混交で、信頼に値しないと見下げる傾向があった」とし、「今回の件で、地上波もまた同レベルであることを露呈した」と続けています。そして、その原因を作ったのが、今回のニュース女子に代表されるスポンサーの「持ち込み番組」であると結論付けています。ちなみに白石氏は、反原発運動で有名な活動家でもあります。




◇「デマ」のレッテル貼り


 また、記事の最後には、東京MX前のデモの呼びかけ人であるフリーの編集者、川名真理氏が「ウソの放送内容の訂正と謝罪を放送で行うこと」「沖縄の基地建設に反対する人への偏見をあおったことへの謝罪を行うこと」の申し入れをしたとあります。

 事実を報道したテレビ局に対し、「デマ」というレッテル貼りをし、デモなどで圧力をかける。いつもの左翼活動家の手法です。この川名氏も沖縄基地反対問題の活動家であると、公安の方に教えていただきました。

 この報道がデマであるというのであれば、その証拠を見せていただきたいと思うのですが、それは全く提示せず、ただただ左翼活動家の意見を垂れ流しにする、これが赤旗の正体です。この記事一つとって検証してみてもその傾向がよく分かります。調査もせず、事実を曲げ、証拠も示さず報道するメディアを「新聞」と呼ぶことができるのでしょうか?




                         ◇


【プロフィル】杉田水脈氏 すぎた・みお 前衆院議員。昭和42年、神戸市生まれ。鳥取大農学部卒。兵庫県西宮市職員などを経て、平成24年に日本維新の会公認で衆院選に出馬し、初当選。26年に落選後は、民間国際NGOの一員として国際社会での日本の汚名をそそぐために活動を続けている。






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「ニュース女子」騒動と朝日社説 慰安婦の「大誤報」反省せず、現在進行形で海外にたれ流し

2017-02-04 21:16:25 | マスコミ

「ニュース女子」騒動と朝日社説 慰安婦の「大誤報」反省せず、現在進行形で海外にたれ流し


http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20170204/dms1702041000002-n1.htm


 朝日新聞は1月28日の社説で、東京MXテレビで放送しているDHCシアター「ニュース女子」の沖縄取材を批判した。社説は冒頭から飛ばしている。

 《事実に基づかず、特定の人々への差別と偏見を生むような番組をテレビでたれ流す。あってはならないことが起きた。》


 朝日に、東京MXテレビやDHCシアターを批判する資格がないことは後ほど説明する。引き続き、社説を引用する。


 《反対運動を支援してきた市民団体「のりこえねっと」の辛淑玉(シンスゴ)さんは、番組で「運動を職業的に行っている」などと中傷されたとして、放送倫理・番組向上機構(BPO)放送人権委員会に人権侵害を申し立てた。》

 沖縄・高江のヘリパッド工事は、北部訓練場の7543ヘクタールのうち、4010ヘクタールを返還する目的で行われた。日米双方が希望する「基地の返還」に必要な工事だった。それを日米いずれの国籍も持たない人々が問題視していた。疑問を持つメディアがあることも理解できる。


 動画サイト「ユーチューブ」にアップされた動画を見ると、辛氏は反対運動に在日朝鮮人らが含まれていることを認めていた。ヘリコプターで高江に物資を運ばれることに対し、「みんなで風船飛ばそう」「グライダー飛ばしたり」などと語っていた。ヘリが墜落したらどうするのか。


 高江や辺野古に住む住民の中には、県外者による過激な反対運動を迷惑だと訴える人もいる。また、辛氏が共同代表を務める「のりこえねっと」が「市民特派員」を募集する際、往復の飛行機代相当の5万円を支給すると告知していたことは事実である。


さて、朝日社説の締めである。

 《対立をあおり、人々の間に分断をもたらすことに放送を使う行いは、厳しく批判されなければならない。》




 オーストラリアで慰安婦像設置を阻止した、住民組織AJCNの山岡鉄秀代表の調査を受けて、私も1月26日付の朝日の英字サイトを確認した。


朝日は、日本語では単に「慰安婦」と書く部分を、英語では「women who were forced to provide sex to Japanese troops」(日本兵にセックスを強制された女性)と表現していた。


 慰安婦報道の「大誤報」を反省しておらず、「事実に基づかず、日本人への差別と偏見を生むような英語記事」を、現在進行形で海外にたれ流しているのではないか。私は、朝日こそが「あってはならない新聞」として、厳しく批判されなければならないと思う。




 ■ケント・ギルバート 米カリフォルニア州弁護士、タレント。1952年、米アイダホ州生まれ。71年に初来日。著書に『いよいよ歴史戦のカラクリを発信する日本人』『やっと自虐史観のアホらしさに気づいた日本人』(いずれもPHP研究所)、『日本覚醒』(宝島社)など。











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