教育史研究と邦楽作曲の生活

一人の教育学者(日本教育史専門)が日々の動向と思索をつづる、個人的 な表現の場

再び道徳教育の教科化について

2013年03月02日 15時15分54秒 | 教育研究メモ

 先週2月26日、教育再生実行会議が道徳教育の教科化を提言しました。前の教育再生会議もそうでしたが、これらの会議に集められる「有識者」と政治家は、どうあっても道徳教育の教科化を進めたくてしかたない様子。確かにわかりやすい手ではありますが、単にポーズとしてわかりやすいだけで、「いじめ対策」の根本的な策ではないことはわかっているのかどうか心配です。現状を何とかしなくてはいけないという問題意識はわかりますが、学校関係者以外の大人が安心したいがための対策では無意味です。
 いじめ問題は、子どもたちの集団性の問題であると私は思っています。子どもたちが自ら「異質」を作って排除し、または「見下す存在」を作って優越感に浸ろうとする問題です。たった一つの教科で済む問題ではなく、学校教育全体の問題であるとともに、家庭・社会を含めた子どもを取り巻くストレスフル・不安定な環境の問題です。社会改善とともに進めなければ解決しません。「学校で何とかしてよ」では済まない問題なのです。
 道徳教育の教科化についての私の考えは、基本的には以前述べたことと変わっていません(2008年9月3日記事)。私は、かつての修身科の全てが悪いとは思いませんし、現行の学校教育全体における道徳教育の全てがよいとも思っていません。しかし、もしも教科化が安易に行われた場合に、学校教育全体における道徳教育(すなわち全教職員による全機会における道徳教育)への意識が薄まることを最も懸念します。
 おそらくこの後、具体策を考えるために教科化に向けた諮問が中教審にかけられると思いますが、そうなった場合、中教審の役割は重いでしょう。子どもたちの道徳性をよりバランスのとれた形で形成するための、家庭・社会・学校がそれぞれやるべきことを適切・明確に示した施策方針を打ち出す必要があります。われわれ教職課程における道徳教育関係教科担当者にとっても、他人事ではない動向が今後も続くことは間違いありません。

 あとは近況。
 先週、大きな行事が終わり、一瞬一息つけそうな時期になりました。博士論文(仮)はこつこつ書き直し、もう少しで半分くらいに達します。3月中の〆切に、なんとかなりそうなペースです。また、3月半ばに論文1本の〆切(博論とリンク)。それから、この4月出版予定の拙著『幼児教育とは何か』(幼児教育の理論とその応用1)は、2校が届きましたので校正中です。これを出版社に提出すれば出版まであと少しです。

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