いつもお世話になっております。年始からさっそく忙殺されておりましたが、やっと落ち着きました。腰の調子は一進一退で、治ったような治っていないような感じです。気をつけなきゃ。
1月は整体接骨院に通いながら、仕事始め、研究会、センター試験業務、卒業論文指導、出版のための校正最終段階、詰まり詰まった授業、成績採点など。2月も整体に通いながら、成績採点、入試業務、卒業論文発表会、組織改革の委員会、集中講義(教育史)、実習訪問指導、教員採用セミナー講師など。いままでは2月に入ったら多少楽になったのですが、今年はちょっと違いました。来年はもう少し落ち着くといいな…
さて、先日よりお知らせしているとおり、待望の学位論文が出版されました! 索引含めて658頁! 分厚い!
題名は『明治期大日本教育会・帝国教育会の教員改良―資質向上への指導的教員の動員』(溪水社、2017年)です。目次は溪水社ホームページに掲載していただいている通りですが、これでも長いので下記に章題だけにして紹介します。
序 章
第Ⅰ部 教員改良の原点
第1章 「師匠から教員へ」の過程における教員改良問題の発生
第2章 東京教育会における官立師範学校卒業生の動員 ―東京府教育の改良―
第3章 明治13年東京教育会における教師論 ―普通教育の擁護・推進への視点―
第4章 東京教育学会から大日本教育会へ ―全国教育の進歩を目指して―
第5章 明治期大日本教育会・帝国教育会と指導的教員
第Ⅱ部 国家隆盛を目指した教員資質の組織的向上構想
第1章 大日本教育会結成期における教員改良構想 ―教職の専門性への言及―
第2章 明治23年前後における教員改良構想 ―教職意義の拡大と深化―
第3章 大日本教育会末期の教員改良構想 ―単級教授法研究組合報告と高等師範学校附属学校編『単級学校ノ理論及実験』との比較から―
第4章 明治期帝国教育会の教員改良構想 ―日清・日露戦間期の公徳養成問題に注目して―
第5章 教育勅語解釈に基づく教員改良構想 ―国家・社会改良のための臣民育成を目指して―
第Ⅲ部 教員講習による学力向上・教職理解の機会提供
第1章 夏季講習会による教員講習の開始
第2章 大日本教育会による教員講習の拡充 ―年間を通した学力向上の機会提供―
第3章 帝国教育会結成直後の教員講習 ―教員の学習意欲・自律性への働きかけ―
第4章 明治期帝国教育会における教員講習の展開 ―帝国大学卒・高等師範学校卒の学者による小学校教員に対する中等教員程度の学力向上機会の提供―
第5章 帝国教育会による教員講習の拡充 ―中等教員講習所に焦点をあてて―
第Ⅳ部 輿論形成・政策参加による自己改良への教員動員
第1章 討議会における教員の動員 ―「討議」の限界性―
第2章 「研究」の事業化過程 ―輿論形成体制の模索―
第3章 「研究」の事業化における西村貞の理学観 ―教育の理学的研究組織の構想―
第4章 研究組合の成立 ―教育方法改良への高等師範学校教員の動員―
第5章 全国教育者大集会の開催背景 ―輿論形成体制への地方教育会の動員―
第6章 学制調査部の「国民学校」案 ―輿論形成・政策参加への教員動員―
第7章 全国小学校教員会議の開催 ―指導的教員による専門的輿論形成・政策参加―
結 章 明治期大日本教育会・帝国教育会の教員改良とは何か
とまあこんな感じです。だいたい学位論文の通りですが、第Ⅱ部第5章と第Ⅲ部第4章は学位取得後に書いた論文です。とくに、教育勅語解釈に関する第Ⅱ部第5章は、教育史学会で発表後、活字化のタイミングを結局逃したので、今ではこの本でしか読めません。また、序章・結章・各部の小括はもちろん、第Ⅰ部第1章・第Ⅳ部第7章も学位論文をまとめたときの書き下ろしです。第Ⅰ部第2・4・5章も、初出時とくらべてずいぶん加筆修正しました。それから、あとがきも学位論文の時に比べて自由に書かせていただいています(笑)。
本書の内容については目次の通りですが、大まかに説明すると次のような感じです。本書は、日本最古の全国教育団体である明治期大日本教育会・帝国教育会が行った教員改良活動について、実証的に研究したものです。両教育会が、教員(とくに小学校教員)の資質能力向上に対して、帝大や高師、その他の官私立高等・専門教育機関の教員などを動員しただけでなく、全国の師範学校教員や指導的小学校教員を動員したことを詳細に明らかにしました。その歴史的事実からは、近代日本の成立期において、学校教員という職業が誕生する際に、教職の専門性に対する意識がどのように生まれ、育てられようとしたかがわかります。また、全国の指導的教員が、他律的に動員されただけでなく、自ら自分自身や同僚・部下を改良しようとしていた実態も垣間見ることができました。すなわち、近代日本における教職の自律性の萌芽も明らかにしたつもりです。指導教員から「素直に書きすぎ」と批判されたところもありますが、まず愚直に史料に忠実に事実を明らかにすることが次の批判的研究につながると考えて突き進みました。
400部しか刷っていない高額(税込9,612円)の専門書ですが、どうぞ大学図書館や公立図書館に入れてもらって手にとってみてください。日本の教師とは何か研究する上では必読の本であると自負しております。
ちなみに、カバーはこんな感じですが、
これはかなりこだわって作ってもらいました。編集担当さんにずいぶん無理を言って、何度も直してもらいました(こんなことまでしているから時間がなくなるのですが苦笑)。以下、こだわりポイントの解説をさせてください(^_^)。
表紙は題名と写真等で構成されています。ここのこだわりは3つ。第1に、大日本教育会の会員章をたまたま手に入れていたので、題名の左上に使ってもらいました。史料に沿って解釈すると、会員に配られた会員章なのか功績者に配布された会章なのか判断が難しかったのですが、裏に刻まれている「会員章」という文字を信用しました。こいつはかなり貴重です。第2に、『大日本教育会雑誌』に掲載されていた明治26年に建築されたばかりの大日本教育会事務所の絵を使ってもらいました。写真もいちおう存在するのですが(現物は未確認)、帝国教育会になってからのものであり、かなりぼやけています。また、私の論文が明治中期を中心に会の成立あたりを詳細に書いているので、時代の雰囲気を伝えるためにも明治26年新築時の絵を使ってもらいました。第3に、会幹部たちの顔写真群です。私は研究生活を始めた早い時期からずっと、教育会は機械的なシステムではなく、生身の人が動かしていた人間組織であることにこだわっていました。なかでも、中央教育会の教員改良の始動や時々の画期に活躍した幹部たちに注目しました。彼らによって、明治期によちよち歩きを始めた教員という職業が専門職に向けて歩み始めたのだということを表現したかったのです。顔写真は本文でもふんだんに掲載しましたので、よく読めば誰の写真を使っているかわかるのですが、とにかく各時期のキーパーソンになった人たちを厳選しました。順番は、何となく、かかわりが古い順で下から並べています。そういう意味ではもっとたくさん載せたかった人はいるのですが、デザイン上18名に絞られました。ちなみに、顔写真を使いたかったのは私、事務所絵を使いたかったのは編集。両方を組み合わせてみようということになった結果、いい感じになりました。
背表紙のこだわりは2つ。第1に、副題が埋もれてしまわないように文字色を変えてもらいました。本書は歴史書ですが、教育学書でもあるので、教育学的な問題意識を大事にしたい気持ちがあったからです。第2に、背景に大日本教育会の会章図をあしらってもらいました。デザイン自体は単純なのですが、中の太極図や周辺の光線・剣の傾きなど、あんがいよく見ると正確でないところがあったので、何度か確認して直してもらって完成したものです。
裏表紙のこだわりは1つ。第1回全国小学校教員会議の集合写真を使ってもらいました。本文にも書いたのですが、この会議は両教育会の教員改良活動の集大成にあたるものです。表紙の人々が始めた教員改良の成果を形に表したかったので、この写真を使いました。この手法は、実は拙著『鳥取県教育会と教師』でもこだわったところです。まあとにかく教員会議の写真が残っていてよかったなあと思います。
あと、カバー全体の色ですが、薄緑色?になっています。これは、大日本教育会の会旗に使われた色が赤・黄・緑・白だったので、このあたりの色を使ってもらえないかと頼み込んで、しっくりくる色を使ってもらいました。つや消し加工もしてもらって、とてもいい色になったと思います。顔写真も埋もれず主張しすぎずの難しい色合いを要求したのですが、いい感じになりました。最後に価格ですが、税込み1万円は超えないように無理を言って聞いてもらいました(^^;)。溪水社さんのご厚意・ご協力に感謝です。
とまあ、こんなこだわりと約15年間の研究成果がこもって、やたら分厚く重い本になりましたが、ぜひ手に取ってみていただけると幸甚です。2016年度日本学術振興会科学研究費補助金研究成果公開促進費(学術図書)の補助対象物です。よろしくお願いします。
1月は整体接骨院に通いながら、仕事始め、研究会、センター試験業務、卒業論文指導、出版のための校正最終段階、詰まり詰まった授業、成績採点など。2月も整体に通いながら、成績採点、入試業務、卒業論文発表会、組織改革の委員会、集中講義(教育史)、実習訪問指導、教員採用セミナー講師など。いままでは2月に入ったら多少楽になったのですが、今年はちょっと違いました。来年はもう少し落ち着くといいな…
さて、先日よりお知らせしているとおり、待望の学位論文が出版されました! 索引含めて658頁! 分厚い!
題名は『明治期大日本教育会・帝国教育会の教員改良―資質向上への指導的教員の動員』(溪水社、2017年)です。目次は溪水社ホームページに掲載していただいている通りですが、これでも長いので下記に章題だけにして紹介します。
序 章
第Ⅰ部 教員改良の原点
第1章 「師匠から教員へ」の過程における教員改良問題の発生
第2章 東京教育会における官立師範学校卒業生の動員 ―東京府教育の改良―
第3章 明治13年東京教育会における教師論 ―普通教育の擁護・推進への視点―
第4章 東京教育学会から大日本教育会へ ―全国教育の進歩を目指して―
第5章 明治期大日本教育会・帝国教育会と指導的教員
第Ⅱ部 国家隆盛を目指した教員資質の組織的向上構想
第1章 大日本教育会結成期における教員改良構想 ―教職の専門性への言及―
第2章 明治23年前後における教員改良構想 ―教職意義の拡大と深化―
第3章 大日本教育会末期の教員改良構想 ―単級教授法研究組合報告と高等師範学校附属学校編『単級学校ノ理論及実験』との比較から―
第4章 明治期帝国教育会の教員改良構想 ―日清・日露戦間期の公徳養成問題に注目して―
第5章 教育勅語解釈に基づく教員改良構想 ―国家・社会改良のための臣民育成を目指して―
第Ⅲ部 教員講習による学力向上・教職理解の機会提供
第1章 夏季講習会による教員講習の開始
第2章 大日本教育会による教員講習の拡充 ―年間を通した学力向上の機会提供―
第3章 帝国教育会結成直後の教員講習 ―教員の学習意欲・自律性への働きかけ―
第4章 明治期帝国教育会における教員講習の展開 ―帝国大学卒・高等師範学校卒の学者による小学校教員に対する中等教員程度の学力向上機会の提供―
第5章 帝国教育会による教員講習の拡充 ―中等教員講習所に焦点をあてて―
第Ⅳ部 輿論形成・政策参加による自己改良への教員動員
第1章 討議会における教員の動員 ―「討議」の限界性―
第2章 「研究」の事業化過程 ―輿論形成体制の模索―
第3章 「研究」の事業化における西村貞の理学観 ―教育の理学的研究組織の構想―
第4章 研究組合の成立 ―教育方法改良への高等師範学校教員の動員―
第5章 全国教育者大集会の開催背景 ―輿論形成体制への地方教育会の動員―
第6章 学制調査部の「国民学校」案 ―輿論形成・政策参加への教員動員―
第7章 全国小学校教員会議の開催 ―指導的教員による専門的輿論形成・政策参加―
結 章 明治期大日本教育会・帝国教育会の教員改良とは何か
とまあこんな感じです。だいたい学位論文の通りですが、第Ⅱ部第5章と第Ⅲ部第4章は学位取得後に書いた論文です。とくに、教育勅語解釈に関する第Ⅱ部第5章は、教育史学会で発表後、活字化のタイミングを結局逃したので、今ではこの本でしか読めません。また、序章・結章・各部の小括はもちろん、第Ⅰ部第1章・第Ⅳ部第7章も学位論文をまとめたときの書き下ろしです。第Ⅰ部第2・4・5章も、初出時とくらべてずいぶん加筆修正しました。それから、あとがきも学位論文の時に比べて自由に書かせていただいています(笑)。
本書の内容については目次の通りですが、大まかに説明すると次のような感じです。本書は、日本最古の全国教育団体である明治期大日本教育会・帝国教育会が行った教員改良活動について、実証的に研究したものです。両教育会が、教員(とくに小学校教員)の資質能力向上に対して、帝大や高師、その他の官私立高等・専門教育機関の教員などを動員しただけでなく、全国の師範学校教員や指導的小学校教員を動員したことを詳細に明らかにしました。その歴史的事実からは、近代日本の成立期において、学校教員という職業が誕生する際に、教職の専門性に対する意識がどのように生まれ、育てられようとしたかがわかります。また、全国の指導的教員が、他律的に動員されただけでなく、自ら自分自身や同僚・部下を改良しようとしていた実態も垣間見ることができました。すなわち、近代日本における教職の自律性の萌芽も明らかにしたつもりです。指導教員から「素直に書きすぎ」と批判されたところもありますが、まず愚直に史料に忠実に事実を明らかにすることが次の批判的研究につながると考えて突き進みました。
400部しか刷っていない高額(税込9,612円)の専門書ですが、どうぞ大学図書館や公立図書館に入れてもらって手にとってみてください。日本の教師とは何か研究する上では必読の本であると自負しております。
ちなみに、カバーはこんな感じですが、
これはかなりこだわって作ってもらいました。編集担当さんにずいぶん無理を言って、何度も直してもらいました(こんなことまでしているから時間がなくなるのですが苦笑)。以下、こだわりポイントの解説をさせてください(^_^)。
表紙は題名と写真等で構成されています。ここのこだわりは3つ。第1に、大日本教育会の会員章をたまたま手に入れていたので、題名の左上に使ってもらいました。史料に沿って解釈すると、会員に配られた会員章なのか功績者に配布された会章なのか判断が難しかったのですが、裏に刻まれている「会員章」という文字を信用しました。こいつはかなり貴重です。第2に、『大日本教育会雑誌』に掲載されていた明治26年に建築されたばかりの大日本教育会事務所の絵を使ってもらいました。写真もいちおう存在するのですが(現物は未確認)、帝国教育会になってからのものであり、かなりぼやけています。また、私の論文が明治中期を中心に会の成立あたりを詳細に書いているので、時代の雰囲気を伝えるためにも明治26年新築時の絵を使ってもらいました。第3に、会幹部たちの顔写真群です。私は研究生活を始めた早い時期からずっと、教育会は機械的なシステムではなく、生身の人が動かしていた人間組織であることにこだわっていました。なかでも、中央教育会の教員改良の始動や時々の画期に活躍した幹部たちに注目しました。彼らによって、明治期によちよち歩きを始めた教員という職業が専門職に向けて歩み始めたのだということを表現したかったのです。顔写真は本文でもふんだんに掲載しましたので、よく読めば誰の写真を使っているかわかるのですが、とにかく各時期のキーパーソンになった人たちを厳選しました。順番は、何となく、かかわりが古い順で下から並べています。そういう意味ではもっとたくさん載せたかった人はいるのですが、デザイン上18名に絞られました。ちなみに、顔写真を使いたかったのは私、事務所絵を使いたかったのは編集。両方を組み合わせてみようということになった結果、いい感じになりました。
背表紙のこだわりは2つ。第1に、副題が埋もれてしまわないように文字色を変えてもらいました。本書は歴史書ですが、教育学書でもあるので、教育学的な問題意識を大事にしたい気持ちがあったからです。第2に、背景に大日本教育会の会章図をあしらってもらいました。デザイン自体は単純なのですが、中の太極図や周辺の光線・剣の傾きなど、あんがいよく見ると正確でないところがあったので、何度か確認して直してもらって完成したものです。
裏表紙のこだわりは1つ。第1回全国小学校教員会議の集合写真を使ってもらいました。本文にも書いたのですが、この会議は両教育会の教員改良活動の集大成にあたるものです。表紙の人々が始めた教員改良の成果を形に表したかったので、この写真を使いました。この手法は、実は拙著『鳥取県教育会と教師』でもこだわったところです。まあとにかく教員会議の写真が残っていてよかったなあと思います。
あと、カバー全体の色ですが、薄緑色?になっています。これは、大日本教育会の会旗に使われた色が赤・黄・緑・白だったので、このあたりの色を使ってもらえないかと頼み込んで、しっくりくる色を使ってもらいました。つや消し加工もしてもらって、とてもいい色になったと思います。顔写真も埋もれず主張しすぎずの難しい色合いを要求したのですが、いい感じになりました。最後に価格ですが、税込み1万円は超えないように無理を言って聞いてもらいました(^^;)。溪水社さんのご厚意・ご協力に感謝です。
とまあ、こんなこだわりと約15年間の研究成果がこもって、やたら分厚く重い本になりましたが、ぜひ手に取ってみていただけると幸甚です。2016年度日本学術振興会科学研究費補助金研究成果公開促進費(学術図書)の補助対象物です。よろしくお願いします。