■紙屋悦子の青春
9月10日(日) 14時30分上映
整理番号15番
曇りのち雨
テアトル梅田で『紙屋悦子の青春』を観た。
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黒木和雄監督が今年4月12日に急逝しました。映画を愛し、戦争を憎み、平和を希求した75年の生涯でした。戦争レクイエム三部作(『TOMORROW/明日』、『美しい夏キリシマ』、『父と暮らせば』)にひき続く、岸田國士戯曲賞などを受賞した劇作家、松田正隆による傑作戯曲を完全映画化したこの「紙屋悦子の青春」が最後の作品となりました。
敗戦の色濃い昭和二十年、春。両親を失い、兄とその妻と鹿児島の田舎町で慎ましく暮らす娘、紙屋悦子。彼女が胸に抱く願いは家族の平穏と、密かに想いを寄せる兄の後輩、明石少尉の無事だけである。ところがある日、兄は別の男性との見合いを悦子に勧めてきた。それも相手は明石の親友・永与少尉で、明石自身も縁談成立を望んでいるらしい。傷心を押し隠し、見合いに臨む悦子。率直な愛情を示す永与にいつしか悦子も気持ちを開く。だが、悦子は明石が海軍特攻隊に志願した事実を知ってしまう。死を目前にし、明石は最愛の人を親友に託そうとしたのだ・・・
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9月のはじめ、なんとなく見ていたテレビの映画紹介で上映を知った映画。インターネットでも原田知世十年振りの主演作として話題になっていた。
観終わった第一印象は「静かな映画であった」というもの。戦争映画だというのに爆撃シーンは一切無く、焼け野原となった街も出てこない。登場人物の会話によって成立していたが、誰も声高に戦争の愚かさ、悲惨さを語りはしなかった。元が戯曲だったことは後で知った。長回しのシーンが多かったのはそのせいだろう。
しかしこの映画は反戦映画であることには間違いがない。人が大事な人を思いやる心、その心の内がひしと伝わってくる。小林薫の演技が素晴らしかったし、原田知世の号泣シーンには涙がこぼれた。波の音が象徴するのは「希望」だと思った。
それにしてもこの作品の情緒は日本人にしか理解できないものなのかもしれない。桜はまだしも、「おはぎ」の甘さ、おいしさは実際食べてみないと、わからないんじゃないかと思う。そんな古き良き日本の姿に僕は感動した。