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第三回:日本のポップ・ロック1976年
伊藤銀次 - 日射病
鈴木慶一とムーンライダーズ - あの娘のラブレター
吉田美奈子 - ラムはお好き?
憂歌団 - お政治オバチャン
高田渡 - 魚つりブルース
細野晴臣 - 北京ダック
久保田麻琴と夕焼け楽団 - ディキシー・フィーバー
小坂忠 - ふうらい坊
山下達郎 - CIRCUS TOWN
大貫妙子 - 時の始まり
矢野顕子 - 電話線
佐野元春 - ふたりの理由、その後
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■内容の一部を抜粋
佐野元春 : こんばんは佐野元春です。さて、今夜のテーマはこれです。「日本のポップ・ロック1976年」。'70年代の中でも特に1976年、この年は日本のロック&ポップスにとって貴重な年になりました。この年には今聴いてもいいなと思える素晴らしいレコードが続々とリリースされました。今夜のMotoharu Radio Showは、1976年、国内でリリースされたクリエイティブなロック&ポップスを特集します。「THE MUSIC OF NOTE -Motoharu Radio Show」。DJ、佐野元春でお送りします。
佐野元春 : 今夜の一曲目は僕の友人のレコードですね。1976年、大瀧詠一、山下達郎、伊藤銀次の3人で作った『Niagara Triangle Vol.1』からの曲、「日射病」。
・日射病
佐野元春 : 伊藤銀次、曲は「日射病」。銀次らしいチャンキーなギターが楽しい曲ですね。1976年、大瀧詠一、山下達郎、伊藤銀次の3人で作った『Niagara Triangle Vol.1』からの曲でした。このあとは鈴木慶一とムーンライダーズ。ファースト・アルバム『火の玉ボーイ』から一曲聴いてみます。
・あの娘のラブレター
佐野元春 : 鈴木慶一とムーンライダーズ。曲は「あの娘のラブレター」。1976年に出た彼らのファースト・アルバム『火の玉ボーイ』からの曲です。バンドはムーンライダーズの前ははちみつぱいと名乗ってました。はっぴいえんどと並んで日本のロックの先駆者です。さて、ここまで聴いて気づいた方もいると思います。今夜のMotoharu Radio Showは'70年代の日本のミュージシャンを特集してみます。'70年代の中でも特に1976年。この年は日本のロック&ポップスにとって貴重な年となりました。この年には今聴いてもいいなと思える素晴らしいレコードが続々とリリースされています。今夜のMotoharu Radio Showは1976年、国内でリリースされたクリエイティブなロック&ポップスを特集しています。
・ラムはお好き?
佐野元春 : う~ん、いいですね。ラム・アンド・コカ・コーラとか言ってます。吉田美奈子、曲は「ラムはお好き?」。1976年に出たファースト・アルバム『FLAPPER』からの曲。今でこそ国内のR&Bの女性ヴォーカリスト、歌の上手なディーバはたくさんいます。その先駆的な存在といっていいのが吉田美奈子さんですね。もちろん今でも活躍なさっています。以前、コンサート(風街レジェンド2015)の楽屋で久しぶりにお会いしましたけれども、とても元気、そしてステージでは相変わらず素晴らしいパフォーマンスをやられていました。
佐野元春 : さて、Motoharu Radio Show。今夜は1976年、国内でリリースされたロック&ポップスを特集しています。'70年代に入ると日本ではシンガー・ソングライターの時代になります。自分で作った歌を欧米のロック音楽のスタイルで表現するという新しい音楽が出てきました。ジャンルでいうとブルース、フォーク、ロック、そしてR&B。特に米国のルーツ音楽を研究するミュージシャンたちが多くいました。では1976年のレコードから米国のブルースやフォーク音楽に影響を受けたミュージシャンたちのレコードを聴いてみます。憂歌団「お政治オバチャン」、そして高田渡「魚つりブルース」。2曲続きます。
・お政治オバチャン
・魚つりブルース
佐野元春 : 憂歌団「お政治オバチャン」、そして今聴いたのは高田渡。ごめんなさい。曲紹介のとき僕は「うおつりブルース」なんて言ってしまいました。「魚(さかな)つりブルース」でした。憂歌団の内田勘太郎さん、そして高田渡さん。ギター演奏の技術がとても素晴らしい尊敬できるミュージシャンです。またリリックがおもしろいですよね。憂歌団「お政治オバチャン」。実は彼らのレパートリーに「お掃除オバチャン」という曲があるんですが、これが職業差別だということで放送禁止になります。そこで面白く切り返したのがこの「お政治オバチャン」ですね。これには誰も文句は言えなかったんじゃないかと思います。ユーモアのセンスも抜群です。DJ、佐野元春、続いてます。
佐野元春 : Motoharu Radio Show、今夜は1976年、国内でリリースされたロック&ポップスを特集しています。 今夜こうして特集して感じるのは、音楽がとてもいい感じでゆるいですよね。当時、レイドバックなんていう言葉もありました。この時代、外国ではどうだったかというと、ちょうどこの頃、セックス・ピストルズがデビューしています。そろそろ世界的にパンク、ニュー・ウェイブのムーブメントがはじまろうとしていた時期でした。そうして見てみると、この日本の'70年代レイドバックの音楽というのはエアポケットにいるような状態? 嵐の前の穏やかな時代の音楽。そんなふうに聞えます。もうひとつ聴いて面白いなぁと思うのはリズムのバリエーションが多国籍なんですよね。例えばニューオリンズやカリブの音楽、そしてハワイ、ポリネシア、沖縄といった非欧米のリズムなんかも取り入れてユニークなサウンドになっていました。ではここでそうした試みをすごく洗練したかたちでやってた二組ですね、細野晴臣、そして久保田麻琴。彼らのレコードを聴いてみます。「北京ダック」、細野晴臣。そして「ディキシー・フィーバー」、久保田麻琴と夕焼け楽団。2曲続きます。
・北京ダック
・ディキシー・フィーバー
佐野元春 : 一曲目は細野晴臣、ヴァン・ダイク・パークスの音楽を思い出す、そんな音の風景ですね。「北京ダック」。そして今聴いたのは久保田麻琴と夕焼け楽団。曲は「ディキシー・フィーバー」、2曲聴いてみました。
「THE MUSIC OF NOTE -Motoharu Radio Show」。1976年の日本のロック&ポップス特集しています。 細野晴臣、久保田麻琴に続いて聴いてみたいのは小坂忠ですね。自分の若いころ、ちょっとお世話になったということもあって、今でもときどき声をかけてもらっています。そうですね、思い出深いのは先日、自分のアルバム『Cafe Bohemia』というのがあるんですけれども、このアルバムのセッション・コンサートがありました。いろいろなシンガーが僕の曲をカヴァーしてくれたんですけれども、中でも特に小坂忠さんですね、彼が僕の「Rock'n'Roll Heart」という曲をカヴァーしてくれて、それが本当に素晴らしく、また光栄に思って、僕はとても感動しました。この後は小坂忠のレコード、アルバム『ほうろう』からの曲、プロデュースそして作詞作曲は細野晴臣、曲は「ふうらい坊」に続きます。
・ふうらい坊
佐野元春 : 小坂忠、曲は「ふうらい坊」。ヴァッキング・コーラスは吉田美奈子さんですね。ソングライターとしても素晴らしいアーティストです。山下達郎の初期の曲でもリリックを書いていました。「THE MUSIC OF NOTE -Motoharu Radio Show」。この後は山下達郎、そして吉田美奈子の曲に続きます。
・CIRCUS TOWN
佐野元春 : 山下達郎、1976年のリリース、シュガーベイブを解散した後の初のスタジオ・アルバムですね。この曲のリリックは吉田美奈子。プロデュースはチャーリー・カレロ。ニューヨークのミュージシャンとレコーデングしています。曲は「CIRCUS TOWN」を聴いてみました。
「THE MUSIC OF NOTE -Motoharu Radio Show」。今夜は1976年、国内でリリースされたロック&ポップスを特集しています。 1976年、ちょっと調べてみるとこの年は女性シンガー・ソングライターの曲が結構ヒットしています。イルカ「なごり雪」、丸山圭子「どうぞこのまま」、そして荒井由実「あの日に帰りたい」あたりですね。海外ではキャロル・キング、ジョニ・ミッチェル、マリア・マルダー、そしてローラ・二―ロ。そうした女性シンガー・ソングライターが活躍していました。それまで女性シンガーというと自分で曲を書いて歌う人というと、それほど多くはなかったんですけれども、'70年代中盤になると、そうした海外の影響もあって日本でも素晴らしい女性シンガー・ソングライターが出てきました。ではここで1976年にデビューした二人の素晴らしい女性シンガー・ソングライターの曲を聴いてみたいと思います。大貫妙子「時の始まり」、そして矢野顕子「電話線」。2曲続きます。
・時の始まり
・電話線
佐野元春 : 山下達郎シュガーベイブのメンバーだった大貫妙子。曲は「時の始まり」。続いて聴いたのは矢野顕子「電話線」ですね。二人とも今日特集している1976年のデビューです。そうですね、矢野顕子さん。彼女とはこれまでレコードやライヴで何回かご一緒しました。とてもクリエイティブで、ユーモアのセンスが抜群の女性です。ここのところちょっとご無沙汰していますけれど、またどっかでご一緒できたらいいなと思っています。
さて、「THE MUSIC OF NOTE -Motoharu Radio Show」。今夜は日本のポップ・ロック、1976年のレコードを特集してきました。番組の中では最初に紹介した僕も'80年代に参加したんですけれども大瀧詠一プロデュース『Niagara Triangle』ですね。山下達郎、伊藤銀次、そして大瀧詠一。この3人で作った『Niagara Triangle Vol.1』。このレコードも1976年この年に出ていました。今日特集した音楽はちょうど自分でいうと、僕が十代の頃でしたね、中学生高校生の頃聴いていた音楽です。まぁ、今自分がこうして歌っているのも彼らの音楽を聴いてきたおかげだと思っています。今日特集できてよかったと思います。改めて感謝したいですね。ということで番組、残り時間も少なくなってきました。今夜最後は僕の曲を聴いてください。アルバム『自由の岸辺』から曲は「ふたりの理由、その後」。
・ふたりの理由、その後
佐野元春 : Motoharu Radio Show。今夜は「日本のポップ・ロック1976年」と題して1976年に国内でリリースされたロック&ポップスを特集してみました。楽しんでもらえましたか? 来週は「Nothing But Pop!」、何はともあれポップ、みなさんの体温がちょっと上昇するそんなポップ・チューンを集めてみます。お楽しみに。「THE MUSIC OF NOTE - Motoharu Radio Show」。次回の放送は来週7月24日、よる9時から。同じステーション、同じ時間でみなさんとお会いしたいと思います。DJ、佐野元春。ではまた来週。