Chang! Blog

福岡のハングル検定準2級建築士、そして一児の父の[ちゃん]のブログです

ぐるり北近畿・山陰の旅【3】静かな世界遺産、石見銀山を歩く

2015年01月24日 | ■旅と鉄道

 旅の最終日・1月12日(祝)の朝は、島根県の温泉津温泉で迎えました。宿でもらった無料券を手に、元湯へ。リアルなレトロ感、満載の温泉銭湯です。


 浴室も、実質本位の素朴なもの。ただ湯の析出物で、床は鍾乳洞の地面のような様相になっていました。
 温泉津温泉の源泉は、昨日入った薬師湯とここ元湯の2箇所とのことで、2つの湯を制覇したことになります。


 宿に戻れば、朝ごはんの時間。若者運営の宿ですが、しっかりと1日分の元気が摂れそうな「正しい旅館の朝ごはん」です。
 山陰に来て以来、どこもご飯がおいしくて、ついついお代わりしてしまいます。


 今日の目的地は、世界遺産の石見銀山。温泉津温泉もその構成要素のひとつですが、相互を直通する公共交通機関はありません。僕も、バス~特急~バスを乗り継ぐつもりでした。
 ところが温泉津の宿泊者を対象に、乗り合いタクシーが走っていることを、昨夜乗ったタクシーで教えてもらいました。運賃は定額1,800円ですが、3人以上集まれば1,200円。別の旅館の女子旅グループと相乗りになったので、安く快適に移動できました。


 石見銀山の見所は、古い町並みが残る大森地区と、鉱山跡にも入ることができる銀山地区の、大きく2つに分けられます。まずは大森地区で降ろしてもらい、ぶらぶらしてみました。


 石州瓦の赤色を見ると、山陰に来た実感が沸きます。


 観光客向けの店も多くありますが、9時を過ぎたばかりでまだ開いていませんでした。それよりも、観光客の少ないしっとりしたたたずまいの方に惹かれます。
 温泉津からの乗り合いタクシーは9時前に到着するので、散策にはもってこいです。


 銀山方面へは、10時半スタートの徒歩散策ガイドツアー「むすぶらり」に参加してみました。500円という値段は出雲大社と同じですが、約2時間半の長丁場です。
 まずは銀山公園の模型を使って、石見銀山の歴史と地理の勉強。目の前の模型と景色を見ながら説明を受けるので、一目瞭然でわかりやすかったです。


 徒歩で散策スタート。以前は坑道エリアまでバスが結んでいたのですが、増えすぎた観光客に地元が悲鳴を上げ、廃止になった経緯があります。
 荒れたように見える豊栄神社は、歴史の舞台。財の動く場所は、戦の歴史の場でもありました。


 昨秋に訪れた別子銅山を思い出す、清水谷の精錬所跡。精錬を始めてみれば、思いのほか銀の品質が悪かったため、わずか1年半で閉所となった幻の精錬所です。
 ただその技術は、別子銅山など他の採掘所で生かされたとのこと。旅と旅が、つながっていきます。


 清水寺(せいすいじ)は、1000年の歴史を持つという由緒正しいお寺です。
 寺に限らず、古い神社や家々の造りもしっかりしたもので、腕のいい職人が集まっていたことが分かります。


 道路には、バスを離合させるために作ったと思われる待避所が。何台もバスが連なり、ピストン輸送していた頃の名残りです。


 歩くのが辛いならレンタルサイクルの利用もできますが、それも途中まで。駐輪場から先は、歩くことになります。
 みぞれ舞うこの日は、自転車は自転車で辛かったはず。数キロの徒歩観光は特に冬場はハードで、「世界遺産だし、まあ見ておくか」程度の覚悟で来たら辛いことでしょう。本来の、玄人好みの観光地に戻った格好です。


 「間歩」と呼ばれる坑道の中でも、代表的な、龍源寺間歩(りゅうげんじまぶ)に入ります。
 入場料はガイド料と別途で410円ですが、銀山一帯は地域ワオンを導入しており、ワオンカードで支払うと割引になります。相方がワオンユーザーだったので、余得に預かれました。


 間歩の内部へ。


 毛細血管のように細い坑道が分岐しており、素掘りの跡も生々しく残ります。見学できる範囲は途中の「新坑道」までで、その先にも延々と坑道が残っているのだとか。
 風が動かない先の坑道をのぞいてみると、生暖かい空気が包んでおり、メガネがうっすらと曇りました。


 森になっている場所も、最盛期には住宅が立ち並んだ街の跡。石垣の他、シュロの木がその目印になります。
 自生はしない植物ですが、ホウキなどの材料として重宝したため植えられ、家がなくなっても残っているのだとか。


 全コースを歩き、公園に戻ったのは1時過ぎ。やれやれと思う間もなく、仁万行きのバスが1時5分だったので、バス停に走りました。
 観光客も多く利用する大田市行きに比べ、仁万行きの本数は少なく、細い道で集落を結ぶローカルバス。乗客は終始、僕らを含め3人だけでした。


 お腹が空いてくる時間ですが、仁万駅周辺の食事処といえばここだけ!ということで、レストラン・ココットへ。ラーメンがメインの、ドライブイン的な食堂です。


 ラーメンで温まったのですが、レトロな店の雰囲気には似つかわしくない(!?)スイーツメニューが気になります。「えんむすび」をオーダーしてみたら…


 なんておしゃれなシフォンケーキ!味も上品で、ますます似つかわしくありません(笑)。
 その答えは、大阪で修業された息子さんが、おやじさんの店でスイーツ営業をされているのだとか。ミスマッチ感も楽しいですが、カフェとして営業しても人気が出そうなクオリティだなと思いました。


 ココットでゆっくりしすぎたため、仁万のサンドミュージアムの見学時間はわずか5分に!世界一の大砂時計を、チラっと見上げただけで終わってしまいました…。


 快速「アクアライナー」に乗り込みます。ボックスシート主体の車内は落ち着いた内装で、現代版の「急行型」。お気に入りの車両です。


 昨日は見られなかった昼の温泉津温泉街をそぞろ歩こうと、温泉津駅で下車して「大田市生活バス」で温泉街に向かいます。
 バスはハイエースだったので意表をつかれましたが、温泉街の狭い路地には最適かも。運転士さんとお話しながら温泉街に入り、薬師湯で下車しました。


 薬師湯の旧館を再生したカフェ「内蔵丞(くらのじょう)」へ。夜中も明かりを灯していますが、営業は昼間だけなので、改めて来た次第。
 洋館のような外観もさることながら、館内も「大正ロマン」な雰囲気。


 ココットで甘味に満足した直後でしたが、温泉カプチーノとシフォンケーキで贅沢な時間を過ごしました。


 帰路は、駅まで歩いてみることに。「津」の地名が示すとおり、温泉津の温泉は、港と共にあります。


 長かった3泊3日の旅も終わり。温泉津から博多へは、新山口で1回乗り継ぐだけです。所要時間も3時間半と、思ったほどはかかりません。
 2両の特急は連休最終日とあって、自由席は満員状態。振り子列車の立席乗車は足腰にひびき、立つ人はげっそりした表情です。早めに指定席を抑えた去年の自分に感謝しつつ、ゆったりと旅を振り返りながら日常へと戻って行ったのでした。

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