4月に起きた熊本地震の支援や、身内の不幸ごとなどで、なかなか事前に計画が立てられなかった今年のGW。ようやく落ち着いてきた最後の2日間(5月7日~8日)、オフとして熊本方面へと出かけてみることにしました。
今回も、九州内を自由に旅したい時には欠かせない「旅名人の九州満喫きっぷ」を利用。九州内のJR・私鉄全線乗り放題1日券が、3回分で10,800円というお得な切符を手に、出発です。
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ただし新幹線や特急は、特急料金を買い足しても乗車不可。熊本までは、快速と普通電車を乗り継いで行きます。
荒木~大牟田間のどの駅で乗り換えてもよかったので、筑後船小屋駅で降りてみました。ホークスの2軍用球場が完成した駅裏の風景は一変。メインスタジアムかと見紛うばかりの立派さです。
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熊本の1つ手前のターミナル、上熊本駅で下車。昨年3月に高架化されてから、初めての下車です。
ホームの床は木、外観は木ルーバーでデザインされています。竣工後1年以上も経つのに木の香りが残り、「理科室の匂い」(byヨメさん)が漂っていました。
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高架下のコンコースのデザインも、普通電車しか停まらない駅とは思えぬほど気合いが入っています。ロゴ入りの木製組天井は、「ななつ星」や大分駅コンコースを思い出させるものです。
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レンガ調の内壁は「張りぼて」ではあるものの、レンガの質感をよく再現していて重厚感が感じられます。
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外観も木のルーバーが主張していて、ユニークです。
新幹線開業で長距離旅客が消えてしまった駅ですが、市電・熊電・バスが結節するサブターミナルとして重視されていることが分かる、力の入れかたでした。
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一方、味のある木造駅舎だった旧上熊本駅舎は、「外側」だけ市電の電停の上屋として再築されました。
剥製のようで、見るたびに痛々しくも感じていた駅舎ですが、熊本地震でも小さな被害で済んだのは、再築時に耐震性を高めたのが功を奏したのかもしれません。
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ここからは、熊本電鉄に乗って街に出ましょう。乗るのは、今回で8年ぶり。熊本市と合志市を結ぶわずか13キロのミニ電鉄にも、いろいろ変化があっています。
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まずは熊本共通ICカード「くまもんのICカード」が導入されたこと。もともと「To熊カード」なる磁気カードが普及していたこともあって、共通ICカードの導入は九州内でも遅めになりました。ホームにバス用のカードリーダーが置かれいるのがユニークです。
この3月には、全国共通ICカードの利用も可能になって、旅行者も便利に使えるようになりました。
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そしてこの2月には、丸っこい緑の電車「青ガエル」こと、元東急5000系が引退したのも大きなエポック。後継として、東京メトロ銀座線の01系電車が導入されました。
ワンマン運転対応のバックミラーや、路面区間で路上の障害物を巻き込まないためのスカートを設置。また集電方式も第3軌条からパンタグラフに変わったので、外観はいかにも改造車然としています。
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車体側面の東京メトロのロゴは、熊電のロゴに。メトロに合わせて、青基調です。なるべくイメージを変えないよう配慮したのでしょう。
黄色の帯も変わっていないので、ホームから側面を見ている限りは、紛れもない銀座線の電車に見えます。
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車内も、銀座線時代ほとんど変わっていません。非冷房だった青ガエルに比べれば、新車といっていいほどのレベルアップになっています。
青ガエルの引退はファンとして残念だったけど、日常の利用者は喜んでいるのでは。
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ドア部分。あれれ?本当にTo Me カードのポイント付くの?(笑)
東京然とした車内だけど、走り出してしまえば熊電。ユラユラ揺れるし、踏切の音は「チンチン」と鳴る昔ながらもののだし、車窓には緑が広がります。渋谷くらいでしか地上に出られなかった銀座線時代に比べれば、「余生」として悪くない地かもしれません。
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「本線」との乗り継ぎターミナル、北熊本着。車庫には茶色の旧型電車と一緒に、青ガエルも昼寝中でした。
「あれ、まだ青ガエルいるじゃん」との声も聞かれ、古いながら親しまれていた存在であることも分かりました。
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藤崎宮前方面の電車は、元は都営三田線の車両。メトロと都営の電車が、ホームを挟んで並ぶのは珍しい光景かもしれません。01系に比べて一回り大柄で、座席もほぼ埋まっており、「本線」の風格が感じられます。
線路すれすれに立ち並ぶ沿線の家々は、倒壊まで至らずとも損傷を受けたものが目立ちました。
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市街地側のターミナル、藤崎宮前駅着。駅員さんはいるものの切符の販売を行うのみで、扱い上は無人駅です。運賃も車内清算。運転席に向かって、ずらりと行列ができます。
窓口では電車グッズが各種ディスプレイされていました。熊本地震では、上熊本支線の運休が1週間にも及んだ熊電。経営支援の意味も込めて買い込むかと思ったら、ほとんどの商品は北熊本駅にしかないとのこと。在庫が残っていた、カレーだけ買って行きました。
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藤崎宮前駅の駅舎は、11階建ての駅ビル「熊電プラザ」。地方ローカル私鉄としては破格の立派さです。実は、ほとんどを占める2~9階は駐車場なのですが(笑)。
しかし1階のパチンコ屋と、10~11階の温泉施設は数年前に撤退してしまい、事実上の駐車場ビルになっています。熊本城の見える温泉、楽しかったのに… 熊電の経営にも、打撃なのでは。
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藤崎宮前駅から上通りアーケードにかけては、こ洒落た店が集まる界隈です。時間はちょうどお昼時。古い長屋を再生したアジアン料理屋さんが開いていたので、入ってみました。
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通りに開けた店内は、開放感がありつつも落ち着いた雰囲気。開放部分が多い分、地震には弱そうにも見えるのですが、建物自体には特に被害はなかったようです。
古いからといって弱いわけではないし、新しいからと言って無事とは限らない。応急危険度判定の「緑」と「赤」を分けたものは何なのか、益城町でも随分考えさせられたことを思い出します。
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日替わりのアジアご飯セット。異国の風味が香り、おいしかったです。
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上通並木坂を下り、繁華街へ向かいます。
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上通アーケード。片付けを終え、営業している店が目立ちます。大きく損傷した建物は休業に追い込まれていますが、応急危険度「黄判定」の店は、取り急ぎの安全対策を取って再開されていた所が多かったです。
営業している店舗数も、人通りも、地震前の8割といったところでは。
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さらに電車通りを挟んだ下通りの巨大アーケードにも、「人波」が戻ってきていました。ニュース映像でショックを受けたものの一つに、ガラガラのアーケード商店街があったのですが、なんだかほっとします。
営業している店でも、メニューが限られていたり、夕方までの営業に留まっていたりはしています。地震で傷ついた商品をバーゲンしている店もあって、それぞれの店ができる限り、頑張っていました。
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電停から見た、路面電車の芝軌道と熊本城の風景。繁華街から見える歴史的な景観は、不動の熊本のシンボルでした。
大きく傷ついてしまった城の姿は、やはり痛々しいものです。復元には20年とも、それ以上ともいえる時間が必要と言われています。
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路面電車に乗って、水前寺方面へ向かいます。地震後、JRやバスが動かない中でいち早く復旧。非常時にも、頼りになる交通機関です。
水前寺公園電停で下車。近所を流れる川は、市街地と思えないほどの透明度です。
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地震直前にオンエアされた、NHKの街ブラ番組「ブラタモリ」でも取り上げられた藻器堀川。水前寺公園近辺はちょうど阿蘇の山すそに当たる場所で、伏流水が沸くことから清らかな水に恵まれています。
テレビでも放映されていた通り、よく見ると川辺からも湧き水がどんどん流れ出てきていました。水道も100%を地下水で賄う熊本市。他の政令市にはない、貴重な財産です。
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水前寺公園の裏手にある、洋学校教師館を訪ねてみました。緩い坂を登った場所に位置し、阿蘇山の山すその端の端といえる場所です。
熊本地震の影響を受けて、見学はできなくなっています。
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敷地内に移築されている夏目漱石第3旧居は、外観から見た限りでは無傷でした。移築の際に、きちんと耐震策が取られていたのでしょう。平屋建だったのも幸いしたのかもしれません。
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しかし明治4年築の洋学校教師館・ジェーンズ邸は、文字通りぺしゃんこの形に全壊してしまいまったそうです。現在は、残骸がビニールシートに覆われています。
長崎の洋館群を思わせる擬洋風の邸宅は、文明開化の息吹を伝える貴重な生き証人でした。同じく大きな被害を受けた熊本城は復元の方向性が示されていますが、ジェーンズ邸の復旧は困難と言われています。
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隣接する水前寺公園のブロック塀もかなり損傷を受けたらしく、あちこちで応急的に撤去されていました。
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石積みのよう壁もはらんでいて、一部ではくずれかかっています。通行止めにこそなってはいないものの、通行には自己責任が伴う状態でした。
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しかし水前寺公園周辺のお土産屋さん街は、ほとんどが営業を再開しています。公園そのものが閉園中とあっては、お客さんの姿はまばらです。
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「免税」の看板を掲げる店は、地震の前はインバウンドの特需に沸いていたのでしょう。相当な苦境に立たされているはずですが、それでも店としては「開けるっきゃない」はずです。
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水前寺公園の正門前は、灯篭が倒れたままの状態。地震の巨大な力に、圧倒されるばかりです。現在は安全確認や後処理のため、5月15日まで休園することがアナウンスされています。
しかし正門横の勝手口?は開いていました。警備のおっちゃん曰く、入園すること自体は構わないとのこと。
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園内の土産屋も、ほとんどが店を開けていました。どうやら、自己責任で入る分には構わないというスタンスのようです。入園料も取られませんでした。
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園内の清水神社は鳥居が倒壊しており、クレーン車が出動して撤去作業に当たっていました。お社そのものも、足場が組まれ修繕作業に入っています。
入園料の代わりにお賽銭を上げて、未だ揺れ収まらぬ大地が静まることを祈念しました。
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園内の片隅には壊れた鳥居が置かれ、痛々しかったです。
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水前寺公園の池は、地震以来水位が急速に下がっていることも、心配事の一つです。揺れが水脈に影響を与えたのか、地割れから水漏れしているのかは定かではありません。
池の水は、部分的に干上がってしまっています。いずれ元に戻ってくれるのを、見守るしかないのでしょうか。
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それでも正式な再開に備えて、庭園の手入れはずっと行われています。美しい公園を保つ努力は、地震で大変な状況になろうとも、変わらず続けられていました。
周囲や園内で頑張っているお店のためにも、今あえて訪れることも支援の一つだと思います。今こそ熊本!
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園内でもすべての店が復しているわけではなく、休業に追い込まれておる茶店も。客人のいないベンチの上には、新緑のモミジが、春らしい柔らかな影を落としていました。観光にはいい季節のはずなのに…
紅葉の頃には、元気に営業できていますように。
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公園正門前の門前町も、石灯籠が倒れたままです。立っている灯篭もあるので、余震にも注意を要します。
安全な場所で、名物「いきなり団子」をほおばりました。門前町の店も、ほとんどが営業中です。
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市内に戻り、熊本城の周辺を訪ねてみました。大きな被害によって、城内はもとより、周囲も広い範囲で立ち入り禁止になっています。
しかし、訪れた観光客にとっては思い出の地、市民にとっては心のシンボルだった城の被害は誰しも気にかけているところ。周辺には、多くの人が集まっていました。
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途方もない時間と費用が見込まれる熊本城の再建ですが、きっといずれは実現するはず。その過程を見せていくことも、観光の一つにはならないものでしょうか。
特に今は、長い再建へのスタートの時であり、現在の状況を目に焼き付けておくことも、意味あることだと思います。
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二の丸にある土産屋さん街「桜の馬場 城彩苑」は営業中。時間がなくてパスしてしまいましたが、今度来た時にはぜひ足を向けたいです。
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午後3時半、熊本駅へとやってきました。4階部分が「張りぼて」になったJR創世記のリニューアル駅舎も、新駅ビルへの建替えで取り壊しが予定されています。
新駅ビルは、大分駅のように巨大かつ独自性のあるものになる計画で、今から楽しみ。今のユニークな駅舎も、記憶に留めておきたいものです。
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快速で、一気に人吉へと向かいます。春までは同区間に観光特急が走っていたのですが、ダイヤ改定でごく普通の快速列車に格下げになってしまいました。
一方で来年春には、1日3往復の観光列車「やませみ・かわせみ」が導入される予定です。なぜ特急の廃止を急ぎ、1年間「普通の列車」を走らせることにしたのか。解せないやりかたです。
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とはいえ「旅名人きっぷ」で乗れたのは快速に格下げされたおかげ。八代での乗り換えもなく、1時間半と特急時代と遜色ない所要時間で人吉に到着しました。
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時間はちょうど5時。駅前では、からくり時計が動いていました。殿様が商人に扮して城下を遊ぶというストーリーで、なかなか面白かったです。
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くま川鉄道に乗り換えです。JRは人吉駅、くま川鉄道は人吉温泉駅という駅名ですが、同じ構内であり、直接乗り換えもできます。
車両は観光列車仕様の「田園シンフォニー」。全5両が在籍していて、くま川鉄道の列車はほとんどが同型車両による運行です。
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車両ごとに塗装も内装も異なり、人吉方が白い「白秋」、湯前方が赤い「秋」の2両編成でした。
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車内も、JR九州など多くの車両を手がける水戸岡鋭二氏によるデザインで、「普通列車ばなれ」しています。「朝夕は日本一心豊かな通学列車」のキャッチフレーズ通り、乗客のほとんどは沿線の高校生。豪華なソファ席や、テーブルにスタンドライトが付いたダイニング席?で、贅沢にくつろいでいました。
ちょっと騒々しいけど、くま川鉄道にとっては大切なお得意さま。願わくば、卒業後も乗って欲しいところです。
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多良木駅で降りて、今宵の宿へと向かいました。懐かしい寝台特急を宿にした、「ブルートレインたらぎ」です。
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2009年、惜しまれつつ廃止された東京~熊本間のブルートレイン「はやぶさ」の、晩年の姿そのまま。懐かしさで、胸が一杯になりそうです。
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今夜の寝床は、1人用B寝台個室「ソロ」です。上段、下段の部屋を鍵型に組み合わせた部屋はいかにも狭かったですが、はるか東京まで一人寝の部屋で運んでくれる個室は、憧れの的でした。学生時代は高嶺の花でなかなか乗れず、バイト代を貯めてやっと念願かなえた日を思い出します。
大手を振って乗れるだけのお金を稼げるようになった頃には、廃止へのカウントダウンが始まっていました。
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枕元のオーディオ機器や枕灯もそのままですが、電源の関係で使えないのは残念。もっともオーディオ装置は、現役時代の早い時期に壊れてしまっていましたが。
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ヨメさんは広々使いやすい下段、僕は眺めのいい上段に分かれました。上段の高さの差は1m程度のものではあるけど、天井まで回りこんだ窓が魅力で、好んで乗っていました。
夜、明りを消し窓側に枕を向け、東京のビル街、あるいは田舎の星空を、ごろごろしながら見上げていたことを思い出します。今は、外側の屋根の柱に阻まれ、「車窓」らしい景色はありません。
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「客室」はもう1両、4ベットタイプと案内されている2段式B寝台車があります。カーテン1枚で仕切る構造は完全にそのままで、懐かしいもの。グループで泊まるなら、こちらが狭苦しくなくて楽しそうです。
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トイレは現役時代のものは閉鎖されており、代わりにトイレ・洗面所棟が増築されています。ウォシュレットも付いていて、現代の生活レベルです。
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中間の車両は、寝台を撤去してフリースペースに。最期まで「はやぶさ」にロビーカーが健在だったらその車両を充てたのでしょうが、「はやぶさ」と「富士」の統合時に、一足早く廃止になってしまいました。
寝台内での飲食は禁止になっており、この車両でと案内されています。寝台の窓枠にずらっと缶ビールを並べるのも醍醐味といえば醍醐味だったけど、文化財級の車両をきれいに保つには仕方なしです。
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そしてこの車両の枠に入っている広告は、すべて国鉄分割民営化の際のもの。新型車両とも、「水戸岡デザイン」とも無縁だった時代の証人です。
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駅前通りから国道に出れば街の中心部で、コンビニにスーパー、飲食店が立ち並んでおり、思いのほか選択肢がありました。店構えをじっくり見比べ、入ったのはこちら。
個室でこぎれい、「女子会プラン」なんてメニューもある都会風の店ですが、店内にはおっちゃん達の笑い声がこだましていました。
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メニューも値段も普通の居酒屋…と思いきや、一品一品のボリュームが多い!結果的にはなかなかお安めに、満ち足りることができました。
お風呂は、駅裏の温浴施設を無料で使えて、のんびり足を伸ばしてサッパリ。寝台列車の旅としては、この上ない贅沢ではあります。
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夜になるとテールマークの行灯が灯され、車両はライトアップ。運転停車(客扱いをしない停車)で駅に止まっているかのような姿で、上りの門司駅での長時間停車を思い出しました。
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熊本のテレビは、各局ともL字型画面が継続していて、時々震度1レベルの速報が流れます。
福岡まで到達するような余震はほぼ収まり、緊急地震速報のアラームに肝を冷やす日々はずいぶん前だった気がしますが、現地では未だ「震」も「災」もおさまらぬ日々が続き、胸が痛みます。
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窓の外を、最終の「田園シンフォニー」が駆けて行きました。現役時代の「はやぶさ」なら広島か、あるいは名古屋手前といったあたりの時間。寝るならそろそろです。
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ソロの狭い廊下を、我が根城へ。揺れに足を取られることもなく、音もしないのは快適なのですが、どこか寂しさを感じるのもまた事実なのでした。
今回も、九州内を自由に旅したい時には欠かせない「旅名人の九州満喫きっぷ」を利用。九州内のJR・私鉄全線乗り放題1日券が、3回分で10,800円というお得な切符を手に、出発です。
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ただし新幹線や特急は、特急料金を買い足しても乗車不可。熊本までは、快速と普通電車を乗り継いで行きます。
荒木~大牟田間のどの駅で乗り換えてもよかったので、筑後船小屋駅で降りてみました。ホークスの2軍用球場が完成した駅裏の風景は一変。メインスタジアムかと見紛うばかりの立派さです。
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熊本の1つ手前のターミナル、上熊本駅で下車。昨年3月に高架化されてから、初めての下車です。
ホームの床は木、外観は木ルーバーでデザインされています。竣工後1年以上も経つのに木の香りが残り、「理科室の匂い」(byヨメさん)が漂っていました。
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高架下のコンコースのデザインも、普通電車しか停まらない駅とは思えぬほど気合いが入っています。ロゴ入りの木製組天井は、「ななつ星」や大分駅コンコースを思い出させるものです。
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レンガ調の内壁は「張りぼて」ではあるものの、レンガの質感をよく再現していて重厚感が感じられます。
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外観も木のルーバーが主張していて、ユニークです。
新幹線開業で長距離旅客が消えてしまった駅ですが、市電・熊電・バスが結節するサブターミナルとして重視されていることが分かる、力の入れかたでした。
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一方、味のある木造駅舎だった旧上熊本駅舎は、「外側」だけ市電の電停の上屋として再築されました。
剥製のようで、見るたびに痛々しくも感じていた駅舎ですが、熊本地震でも小さな被害で済んだのは、再築時に耐震性を高めたのが功を奏したのかもしれません。
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ここからは、熊本電鉄に乗って街に出ましょう。乗るのは、今回で8年ぶり。熊本市と合志市を結ぶわずか13キロのミニ電鉄にも、いろいろ変化があっています。
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まずは熊本共通ICカード「くまもんのICカード」が導入されたこと。もともと「To熊カード」なる磁気カードが普及していたこともあって、共通ICカードの導入は九州内でも遅めになりました。ホームにバス用のカードリーダーが置かれいるのがユニークです。
この3月には、全国共通ICカードの利用も可能になって、旅行者も便利に使えるようになりました。
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そしてこの2月には、丸っこい緑の電車「青ガエル」こと、元東急5000系が引退したのも大きなエポック。後継として、東京メトロ銀座線の01系電車が導入されました。
ワンマン運転対応のバックミラーや、路面区間で路上の障害物を巻き込まないためのスカートを設置。また集電方式も第3軌条からパンタグラフに変わったので、外観はいかにも改造車然としています。
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車体側面の東京メトロのロゴは、熊電のロゴに。メトロに合わせて、青基調です。なるべくイメージを変えないよう配慮したのでしょう。
黄色の帯も変わっていないので、ホームから側面を見ている限りは、紛れもない銀座線の電車に見えます。
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車内も、銀座線時代ほとんど変わっていません。非冷房だった青ガエルに比べれば、新車といっていいほどのレベルアップになっています。
青ガエルの引退はファンとして残念だったけど、日常の利用者は喜んでいるのでは。
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ドア部分。あれれ?本当にTo Me カードのポイント付くの?(笑)
東京然とした車内だけど、走り出してしまえば熊電。ユラユラ揺れるし、踏切の音は「チンチン」と鳴る昔ながらもののだし、車窓には緑が広がります。渋谷くらいでしか地上に出られなかった銀座線時代に比べれば、「余生」として悪くない地かもしれません。
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「本線」との乗り継ぎターミナル、北熊本着。車庫には茶色の旧型電車と一緒に、青ガエルも昼寝中でした。
「あれ、まだ青ガエルいるじゃん」との声も聞かれ、古いながら親しまれていた存在であることも分かりました。
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藤崎宮前方面の電車は、元は都営三田線の車両。メトロと都営の電車が、ホームを挟んで並ぶのは珍しい光景かもしれません。01系に比べて一回り大柄で、座席もほぼ埋まっており、「本線」の風格が感じられます。
線路すれすれに立ち並ぶ沿線の家々は、倒壊まで至らずとも損傷を受けたものが目立ちました。
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市街地側のターミナル、藤崎宮前駅着。駅員さんはいるものの切符の販売を行うのみで、扱い上は無人駅です。運賃も車内清算。運転席に向かって、ずらりと行列ができます。
窓口では電車グッズが各種ディスプレイされていました。熊本地震では、上熊本支線の運休が1週間にも及んだ熊電。経営支援の意味も込めて買い込むかと思ったら、ほとんどの商品は北熊本駅にしかないとのこと。在庫が残っていた、カレーだけ買って行きました。
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藤崎宮前駅の駅舎は、11階建ての駅ビル「熊電プラザ」。地方ローカル私鉄としては破格の立派さです。実は、ほとんどを占める2~9階は駐車場なのですが(笑)。
しかし1階のパチンコ屋と、10~11階の温泉施設は数年前に撤退してしまい、事実上の駐車場ビルになっています。熊本城の見える温泉、楽しかったのに… 熊電の経営にも、打撃なのでは。
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藤崎宮前駅から上通りアーケードにかけては、こ洒落た店が集まる界隈です。時間はちょうどお昼時。古い長屋を再生したアジアン料理屋さんが開いていたので、入ってみました。
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通りに開けた店内は、開放感がありつつも落ち着いた雰囲気。開放部分が多い分、地震には弱そうにも見えるのですが、建物自体には特に被害はなかったようです。
古いからといって弱いわけではないし、新しいからと言って無事とは限らない。応急危険度判定の「緑」と「赤」を分けたものは何なのか、益城町でも随分考えさせられたことを思い出します。
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日替わりのアジアご飯セット。異国の風味が香り、おいしかったです。
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上通並木坂を下り、繁華街へ向かいます。
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上通アーケード。片付けを終え、営業している店が目立ちます。大きく損傷した建物は休業に追い込まれていますが、応急危険度「黄判定」の店は、取り急ぎの安全対策を取って再開されていた所が多かったです。
営業している店舗数も、人通りも、地震前の8割といったところでは。
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さらに電車通りを挟んだ下通りの巨大アーケードにも、「人波」が戻ってきていました。ニュース映像でショックを受けたものの一つに、ガラガラのアーケード商店街があったのですが、なんだかほっとします。
営業している店でも、メニューが限られていたり、夕方までの営業に留まっていたりはしています。地震で傷ついた商品をバーゲンしている店もあって、それぞれの店ができる限り、頑張っていました。
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電停から見た、路面電車の芝軌道と熊本城の風景。繁華街から見える歴史的な景観は、不動の熊本のシンボルでした。
大きく傷ついてしまった城の姿は、やはり痛々しいものです。復元には20年とも、それ以上ともいえる時間が必要と言われています。
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路面電車に乗って、水前寺方面へ向かいます。地震後、JRやバスが動かない中でいち早く復旧。非常時にも、頼りになる交通機関です。
水前寺公園電停で下車。近所を流れる川は、市街地と思えないほどの透明度です。
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地震直前にオンエアされた、NHKの街ブラ番組「ブラタモリ」でも取り上げられた藻器堀川。水前寺公園近辺はちょうど阿蘇の山すそに当たる場所で、伏流水が沸くことから清らかな水に恵まれています。
テレビでも放映されていた通り、よく見ると川辺からも湧き水がどんどん流れ出てきていました。水道も100%を地下水で賄う熊本市。他の政令市にはない、貴重な財産です。
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水前寺公園の裏手にある、洋学校教師館を訪ねてみました。緩い坂を登った場所に位置し、阿蘇山の山すその端の端といえる場所です。
熊本地震の影響を受けて、見学はできなくなっています。
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敷地内に移築されている夏目漱石第3旧居は、外観から見た限りでは無傷でした。移築の際に、きちんと耐震策が取られていたのでしょう。平屋建だったのも幸いしたのかもしれません。
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しかし明治4年築の洋学校教師館・ジェーンズ邸は、文字通りぺしゃんこの形に全壊してしまいまったそうです。現在は、残骸がビニールシートに覆われています。
長崎の洋館群を思わせる擬洋風の邸宅は、文明開化の息吹を伝える貴重な生き証人でした。同じく大きな被害を受けた熊本城は復元の方向性が示されていますが、ジェーンズ邸の復旧は困難と言われています。
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隣接する水前寺公園のブロック塀もかなり損傷を受けたらしく、あちこちで応急的に撤去されていました。
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石積みのよう壁もはらんでいて、一部ではくずれかかっています。通行止めにこそなってはいないものの、通行には自己責任が伴う状態でした。
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しかし水前寺公園周辺のお土産屋さん街は、ほとんどが営業を再開しています。公園そのものが閉園中とあっては、お客さんの姿はまばらです。
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「免税」の看板を掲げる店は、地震の前はインバウンドの特需に沸いていたのでしょう。相当な苦境に立たされているはずですが、それでも店としては「開けるっきゃない」はずです。
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水前寺公園の正門前は、灯篭が倒れたままの状態。地震の巨大な力に、圧倒されるばかりです。現在は安全確認や後処理のため、5月15日まで休園することがアナウンスされています。
しかし正門横の勝手口?は開いていました。警備のおっちゃん曰く、入園すること自体は構わないとのこと。
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園内の土産屋も、ほとんどが店を開けていました。どうやら、自己責任で入る分には構わないというスタンスのようです。入園料も取られませんでした。
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園内の清水神社は鳥居が倒壊しており、クレーン車が出動して撤去作業に当たっていました。お社そのものも、足場が組まれ修繕作業に入っています。
入園料の代わりにお賽銭を上げて、未だ揺れ収まらぬ大地が静まることを祈念しました。
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園内の片隅には壊れた鳥居が置かれ、痛々しかったです。
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水前寺公園の池は、地震以来水位が急速に下がっていることも、心配事の一つです。揺れが水脈に影響を与えたのか、地割れから水漏れしているのかは定かではありません。
池の水は、部分的に干上がってしまっています。いずれ元に戻ってくれるのを、見守るしかないのでしょうか。
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それでも正式な再開に備えて、庭園の手入れはずっと行われています。美しい公園を保つ努力は、地震で大変な状況になろうとも、変わらず続けられていました。
周囲や園内で頑張っているお店のためにも、今あえて訪れることも支援の一つだと思います。今こそ熊本!
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園内でもすべての店が復しているわけではなく、休業に追い込まれておる茶店も。客人のいないベンチの上には、新緑のモミジが、春らしい柔らかな影を落としていました。観光にはいい季節のはずなのに…
紅葉の頃には、元気に営業できていますように。
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公園正門前の門前町も、石灯籠が倒れたままです。立っている灯篭もあるので、余震にも注意を要します。
安全な場所で、名物「いきなり団子」をほおばりました。門前町の店も、ほとんどが営業中です。
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市内に戻り、熊本城の周辺を訪ねてみました。大きな被害によって、城内はもとより、周囲も広い範囲で立ち入り禁止になっています。
しかし、訪れた観光客にとっては思い出の地、市民にとっては心のシンボルだった城の被害は誰しも気にかけているところ。周辺には、多くの人が集まっていました。
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途方もない時間と費用が見込まれる熊本城の再建ですが、きっといずれは実現するはず。その過程を見せていくことも、観光の一つにはならないものでしょうか。
特に今は、長い再建へのスタートの時であり、現在の状況を目に焼き付けておくことも、意味あることだと思います。
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二の丸にある土産屋さん街「桜の馬場 城彩苑」は営業中。時間がなくてパスしてしまいましたが、今度来た時にはぜひ足を向けたいです。
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午後3時半、熊本駅へとやってきました。4階部分が「張りぼて」になったJR創世記のリニューアル駅舎も、新駅ビルへの建替えで取り壊しが予定されています。
新駅ビルは、大分駅のように巨大かつ独自性のあるものになる計画で、今から楽しみ。今のユニークな駅舎も、記憶に留めておきたいものです。
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快速で、一気に人吉へと向かいます。春までは同区間に観光特急が走っていたのですが、ダイヤ改定でごく普通の快速列車に格下げになってしまいました。
一方で来年春には、1日3往復の観光列車「やませみ・かわせみ」が導入される予定です。なぜ特急の廃止を急ぎ、1年間「普通の列車」を走らせることにしたのか。解せないやりかたです。
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とはいえ「旅名人きっぷ」で乗れたのは快速に格下げされたおかげ。八代での乗り換えもなく、1時間半と特急時代と遜色ない所要時間で人吉に到着しました。
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時間はちょうど5時。駅前では、からくり時計が動いていました。殿様が商人に扮して城下を遊ぶというストーリーで、なかなか面白かったです。
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くま川鉄道に乗り換えです。JRは人吉駅、くま川鉄道は人吉温泉駅という駅名ですが、同じ構内であり、直接乗り換えもできます。
車両は観光列車仕様の「田園シンフォニー」。全5両が在籍していて、くま川鉄道の列車はほとんどが同型車両による運行です。
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車両ごとに塗装も内装も異なり、人吉方が白い「白秋」、湯前方が赤い「秋」の2両編成でした。
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車内も、JR九州など多くの車両を手がける水戸岡鋭二氏によるデザインで、「普通列車ばなれ」しています。「朝夕は日本一心豊かな通学列車」のキャッチフレーズ通り、乗客のほとんどは沿線の高校生。豪華なソファ席や、テーブルにスタンドライトが付いたダイニング席?で、贅沢にくつろいでいました。
ちょっと騒々しいけど、くま川鉄道にとっては大切なお得意さま。願わくば、卒業後も乗って欲しいところです。
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多良木駅で降りて、今宵の宿へと向かいました。懐かしい寝台特急を宿にした、「ブルートレインたらぎ」です。
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2009年、惜しまれつつ廃止された東京~熊本間のブルートレイン「はやぶさ」の、晩年の姿そのまま。懐かしさで、胸が一杯になりそうです。
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今夜の寝床は、1人用B寝台個室「ソロ」です。上段、下段の部屋を鍵型に組み合わせた部屋はいかにも狭かったですが、はるか東京まで一人寝の部屋で運んでくれる個室は、憧れの的でした。学生時代は高嶺の花でなかなか乗れず、バイト代を貯めてやっと念願かなえた日を思い出します。
大手を振って乗れるだけのお金を稼げるようになった頃には、廃止へのカウントダウンが始まっていました。
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枕元のオーディオ機器や枕灯もそのままですが、電源の関係で使えないのは残念。もっともオーディオ装置は、現役時代の早い時期に壊れてしまっていましたが。
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ヨメさんは広々使いやすい下段、僕は眺めのいい上段に分かれました。上段の高さの差は1m程度のものではあるけど、天井まで回りこんだ窓が魅力で、好んで乗っていました。
夜、明りを消し窓側に枕を向け、東京のビル街、あるいは田舎の星空を、ごろごろしながら見上げていたことを思い出します。今は、外側の屋根の柱に阻まれ、「車窓」らしい景色はありません。
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「客室」はもう1両、4ベットタイプと案内されている2段式B寝台車があります。カーテン1枚で仕切る構造は完全にそのままで、懐かしいもの。グループで泊まるなら、こちらが狭苦しくなくて楽しそうです。
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トイレは現役時代のものは閉鎖されており、代わりにトイレ・洗面所棟が増築されています。ウォシュレットも付いていて、現代の生活レベルです。
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中間の車両は、寝台を撤去してフリースペースに。最期まで「はやぶさ」にロビーカーが健在だったらその車両を充てたのでしょうが、「はやぶさ」と「富士」の統合時に、一足早く廃止になってしまいました。
寝台内での飲食は禁止になっており、この車両でと案内されています。寝台の窓枠にずらっと缶ビールを並べるのも醍醐味といえば醍醐味だったけど、文化財級の車両をきれいに保つには仕方なしです。
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そしてこの車両の枠に入っている広告は、すべて国鉄分割民営化の際のもの。新型車両とも、「水戸岡デザイン」とも無縁だった時代の証人です。
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駅前通りから国道に出れば街の中心部で、コンビニにスーパー、飲食店が立ち並んでおり、思いのほか選択肢がありました。店構えをじっくり見比べ、入ったのはこちら。
個室でこぎれい、「女子会プラン」なんてメニューもある都会風の店ですが、店内にはおっちゃん達の笑い声がこだましていました。
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メニューも値段も普通の居酒屋…と思いきや、一品一品のボリュームが多い!結果的にはなかなかお安めに、満ち足りることができました。
お風呂は、駅裏の温浴施設を無料で使えて、のんびり足を伸ばしてサッパリ。寝台列車の旅としては、この上ない贅沢ではあります。
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夜になるとテールマークの行灯が灯され、車両はライトアップ。運転停車(客扱いをしない停車)で駅に止まっているかのような姿で、上りの門司駅での長時間停車を思い出しました。
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熊本のテレビは、各局ともL字型画面が継続していて、時々震度1レベルの速報が流れます。
福岡まで到達するような余震はほぼ収まり、緊急地震速報のアラームに肝を冷やす日々はずいぶん前だった気がしますが、現地では未だ「震」も「災」もおさまらぬ日々が続き、胸が痛みます。
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窓の外を、最終の「田園シンフォニー」が駆けて行きました。現役時代の「はやぶさ」なら広島か、あるいは名古屋手前といったあたりの時間。寝るならそろそろです。
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ソロの狭い廊下を、我が根城へ。揺れに足を取られることもなく、音もしないのは快適なのですが、どこか寂しさを感じるのもまた事実なのでした。