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窓の外にはモノレール。週末旅行の最終日、日曜日の朝を門真市で迎えました。
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名物「健康朝食」をお腹一杯に詰め込んで、1日が始まりました。梅雨が嘘のようだった昨日と対照的に、今日はどんよりした雨模様。折り畳み傘が活躍します。
京阪電車の5扉車で、京橋へ。今日は休日なので、2つの扉を閉め切って3扉車として走っていました。締め切った扉の前には、ちゃんと収納式の座席があるのが素晴らしい。すわり心地も、「常設席」と遜色ありませんでした。
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JR大阪環状線に乗り換え。環状線は車両、駅とも大リニューアルの途上にあり、京橋駅も駅名版が変わっています。
各駅ごとに異なる、発車メロディも楽しみです。大阪駅の「やっぱ好きやねん」には、なんだかじんときてしまいました。
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大阪・梅田で阪急神戸線に乗り換え。新旧問わず、景色が映りこむほどつややかに維持された阪急の電車は、いつみても気持ちがいいものです。デザインには凝っているくせに ほこりまみれの、某九州の鉄道会社も見習ってほしいもの。
そして梅田駅からの京都、宝塚、神戸線の3線同時発車は、毎度のことながら心が躍る光景です。
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西宮北口で普通に乗り換え、芦屋川駅で下車。その名の通り、ホームは芦屋川の上に位置します。
芦屋川は六甲山系から一気に下ってくる、短い川。住宅排水で汚染される間もなく流れてくるので、市街地とは思えない清らかがあります。
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山手に上がったところにあるのが、ヨドコウ迎賓館です。フランク・ロイド・ライト設計の邸宅で、もともとは灘の造り酒屋、山邑家の別邸だったもの。
今はヨドコウの施設として、一般公開されています。ヨドコウの物置とは対照的な重厚さが面白い。入場料は600円。
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重厚、かつ繊細。天井換気口からの光の取り入れた方や、投げかける光の細やかさは、シャンデリアを凌駕します。
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施主の強い要望で実現したという、和室。建物全体の雰囲気からは異質な感じもある和の空間ですが、欄間の銅版のデザインを一貫させています。
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周囲の自然環境の取り入れ方は、さすがライト建築というべきもの。圧倒的な眼下の平野と海の眺望に対し開くだけではなく、山の緑に対しても、自然と目が向いていきます。
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寄せ書き帳を見ると、近隣の大学の建築学科で課題レポートの対象になっているらしく、学生さんの書き込みが目立ちました。「すごいけど、レポートをどう書こう」という悩みの吐露もいくつか(笑)。僕も学生だったら、たいそう重荷な課題だったろうと思います。
身近に名建築があるというのは、とても恵まれた環境ではあるのですが。
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周囲は芦屋の高級住宅街。デザインにもこだわった豪邸が並んでいますが、別格の存在感を放つ名建築でした。
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では現代の邸宅街の中でも、ハイレベルな街はどんな様子なのか。阪急バスに乗って、豪邸街として有名な六麓荘町(ろくろくそうちょう)へと上ってきました。
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緑豊かな、ゆったりとした邸宅街。電線は早くから地中化され、電信柱はありません。ほとんどがRC造の、立派な邸宅ばかり。
高級マンションか、富裕層向けの福祉施設か何かと思ってしまう建物も、すべて個人の住宅です。
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駅からは遠く、街の玄関となるのは阪急バス・朝日橋バス停。バス停前には看板があり、街の理念や、通称「豪邸条例」とも呼ばれる地区計画と建築協定について、詳しく解説されていました。
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街の見取り図。個人情報に対してナーバスな時代ですが、全邸宅の姓が掲出されています。1軒1軒が街区公園の一つくらいできるのではないかという広さなのに、街の奥にはその何区画分もあるような邸宅も。一体、どんな家なんでしょう…
ため息まじりの、六麓荘町訪問でした。
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あまりに豪勢だったので、バスで町内を抜ければ普通の住宅地に…と錯覚しそうになりますが、周囲も閑静で、比較的高級な住宅地が広がります。
その証ともいえるのが、バスの終点でもある甲陽園口駅のホーム。駅ホーム上にスーパーがあるというだけでも充分珍しいのに、そのスーパーは高級志向で知られる、成城石井です。甲陽線への乗り換え時間に、マダムたちがショッピングして帰るのでしょう…
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阪急神戸線で、神戸三宮駅へ。震災後の仮復旧で建てられた駅舎は、20年以上を経てようやく本格的な駅ビル建設へと進んでいます。
昭和のターミナルは、震災で過去のものに…と思い込んでいましたが、駅の西側改札付近のコンコースは高いアーチで支えられており、歴史を感じさせるものでした。梅田ターミナルがすっかり建て変わった今となっては、貴重なものと思います。
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三宮に来たからには、生田神社にも挨拶をせねば。
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神社を通り抜け、坂道を異人館街へと上がってきました。雨模様ながら、新緑の並木道を歩く気分はよいものです。
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歴史ありげで上品な喫茶店もあまた並んでいますが、あえてスタバに来てみました。
といっても、ただのスタバではありません。震災で損壊を受けた明治の住宅を復元・移築した、登録有形文化財の洋館スタバです。
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天井が高く、ゆったりした1階の喫茶室。傾けているのはスタバの紙コップなのですが、髭のマスターでも出てきそうなカフェ、もとい喫茶店です。
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木サッシの窓の外の紫陽花も、梅雨ならではのもの。
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木の階段を上がった2階は、部屋が分かれていて落ち着いた雰囲気。
観光客やスタバ好きにはもちろん、インバウンドな皆さんも自撮りに勤しむ、大人気スポットになっていました。
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以前、男同士で来た時にはほとんどをパスした異人館でしたが、せっかく素敵な女性と共に来たので、異人館を巡ってみることに。
風見鶏の館は、異人館を代表するスポットの一つです。
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外国人でもゆったり暮らせる広さの邸宅はもちろん、窓から見える港神戸の風景も美しいものです。主は出入りする船を眺めながら、遠き故郷に思いを馳せていたのでしょう。
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隣あう萌黄の館は、共通入館券で入れます。長崎の西洋人住宅でも見られるような、広いテラスと緑色の柱・壁が印象的です。
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同じように開放感のある作りだった熊本市のジェームズ邸は、今年の熊本地震で全壊しましたが、こちらは阪神大震災を耐え抜いています。
それでも無傷とはいかず、庭には倒壊したレンガ煙突が残されていました。震災後、見学者を受け入れられるようになるまでには数年の歳月を要したそうです。
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異人館は1977年の朝ドラ「風見鶏」で取り上げられたことで注目を集め、「異人館めぐり」が一種のブームになった時期があったとのこと。
朝ドラのブームは冷めやすいのが常で、裏道に入ると空き家や空き店舗も目立ちました。
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一方で美術館やレストランなど、神戸の雰囲気に合わせて頑張っている洋館も多くあります。坂道が多くて、巡るには決してラクではないけど、また時間を取ってゆっくり訪れたいものです。
10月からの連ドラでは萌黄の館が登場するとかで、ブーム再燃もあるかも!?
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異人館街から歩いて、新神戸駅へ。六甲山系の麓にある、緑の山々を背景にした新幹線駅です。
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駅の下には渓流が流れ、BBQを楽しむ家族連れの姿も。「のぞみ」「みずほ」が全列車停車する駅とは思えない光景が、ホームの真下にありました。景勝地、布引の滝も徒歩圏内にあります。
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新幹線「さくら」で博多へ。インターネットのスーパー早特(10,290円)が取れなかったので、通常のネット割引「eきっぷ」(12,920円)になりました。船の個室をかなり上回る値段と思うと、少し複雑な気分でもあります。
しかし夕方まで神戸観光しても、夜の博多の飲み会に間に合うのは新幹線の恩恵です。4列シートに身を埋め、2時間半の休息タイム。
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ほとんどを夢の中ですごして、博多駅到着。熊本地震の影響による特別ダイヤは今も続き、新大阪からの「さくら」はほどんどが熊本止まりです。
7月には通常ダイヤへの復帰が予告されていて、九州観光復興のはずみになってくれればと思います。