危機のデータのポイント1:人口問題

2006年08月23日 | 持続可能な社会
   
 環境の危機を警告するデータは、『成長の限界』(ダイヤモンド社)、ワールドウォッチ研究所の『地球白書』および『地球データブック』(どちらもダイヤモンド社)、石弘之さんの『地球環境報告』、『地球環境報告Ⅱ』(どちらも岩波新書)など、山ほど出ています。
 また、国連関係のデータは、それぞれの機関のHPで公開されています(国連環境計画 UNEP、 国連人口基金 UNFPA、国連食糧農業機関 FAO など)。
 こういうデータはほぼ信用していいだろうと思うのですが、そのデータのしかもポイントをきちんと押さえると、いま私たちがおかれている状況がきわめて困難だということが、感覚としてではなく、認識としてはっきりしてきます。

 人口問題

 まず、今の世界全体が抱えている問題の1つの大きなポイントは人口問題のようです。
 人類の歴史の中で人口問題を見てみると、国連人口基金の推計では、紀元前後(2千年前)が2.5億人ぐらいと推測されています。それから倍になるのに1600年かかっています。1600年ごろ5億人ぐらい。ところが10億になったのは1830年くらいだとされています。つまり、230年で倍、というか倍倍です。それから1930年には20億、つまり100年でさらにその倍になったわけです。1970年に40億、これは45年で倍になっているわけです。国連人口基金のHPに掲載されている以下のグラフをご覧になればおわかりのとおり、すごい曲線を描いて人口が増加している状況にあります。



 1999年が60億。国連では、かつて2020年に80億という推測をしていましたが、いま幅をもたせて2050年に91億くらいと推測しているようです。いずれにせよ、2020年とは14年後です。そこまで人口が増えるのにあとわずか14年です。90年代半ばにピークを迎えて以降、パーセンテージはわずかに下がったそうですが、それでも毎年7千万6百万人くらい増え続けているということです。

 『成長の限界』というレポートを出したローマクラブは、1968年に集会が行なわれて70年に発足した、財界人、政治家たちの地球の未来を考える研究グループです。72年の段階でレポートを出しましたが、その時点の予測が2000年に56億という予測でした。ところが、実際には95年にすでに56.9億になっています。つまり予測よりも5年早く56億を超えてしまったわけです。

 『成長の限界』の序論に、国連事務総長のウ・タントさんが、そういう予測に基づいてした、69年の発言が載っています。

 「私は芝居がかっていると思われたくはないけれども、事務総長として私が承知している情報からつぎのような結論を下し得るのみである。すなわち、国際連合加盟諸国が古くからの係争をさし控え、軍拡競争の抑制、人間環境の改善、人口爆発の回避、および開発努力に必要な力の供与を目指して世界的な協力を開始するために残された年月は、おそらくあと十年しかない。もしもこのような世界的な協力が今後十年間のうちに進展しないならば、私が指摘した問題は驚くべき程度にまで深刻化し、我々の制御能力をこえるにいたるであろう。」

 これは、69年時点の発言です。「芝居がかっていると思われたくはないけれども、データに基づいてこう言わざるを得ない」と国連事務総長が言っており、そういったことを踏まえた学者たちの警告にもかかわらず、人口に関しては(も)まったく抑制できないまま35年を経たということです。

 まずこの一事だけを取り上げても、私たちがおかれている状況がいったいどういうことなのかが、基本的に認識できると思います。
 ただ日本では、少子化現象が進んでいて、やがてこれから人口が減るだろうと言われていて、あまり深刻感がありません。
 しかし、これは世界レベルでは当然、これだけ食糧増産をこれからやっていかないと、億単位の餓死者が出るということです。しかも、2020年に向けて、あと14年しか余裕がないということです。

 ところが、食糧増産の基礎である生産可能な土地の面積はどんどん減ってきています。
 ぜひ、みなさんにも見ていただきたいのですが、人口の増加と生産可能な土地の減少が、時々刻々わかる WORLD CLOCKS というサイトがあります。これによると、人口は1秒間に3人増え続けているのに対し、生産可能な土地は7.67 秒に1ヘクタールの割合で失われていっているとのことです。
 ご自分の目でこの時計を見ていただくと、事態がきわめて深刻であることを実感していただけるのではないかと思います。

 しかしあらかじめ言っておくと、環境問題はきわめて深刻ですが、にもかかわらず私たちが正確な認識に基づいた適切な行動をすることができるならば、希望はある、と私は考えています。危機の認識を共有したいのは、希望に向かう行動を共有するための準備として不可欠だからなのです。みなさんを脅して、無力感や絶望感に陥れるためではありません。




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コメント (6)
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