東京新聞出版局発行の岳人2012年10月号
久しぶりに(?)真面目で真剣な特集が組まれていました。
■第1特集『2012年のリーダー考』
私自身もそうですが、リーダー(人を連れて山に登る)ということについて真剣に向き合って考えてみる必要があります。
先日も黒部のガイド中に自称ガイドもどきの「なんちゃってリーダー」に引き連れられたグループに出くわしました。ハッキリ言って頭にくる事ばかりでした。
ちなみに当方のホームページ内「コラム」ページに同様の問題について書いたコラムがありますので以下に転載しておきます。
■困った自称ベテラン登山者
山に入っていると実に様々な登山者にを見かけるが、中にとても困った登山者がいる。よくあるのが「その山を何回も登ったことがあるからガイドぐらいできる(ガイドより上だ!)」と豪語して実際に初心者(特に女性)を率いて歩く教祖的(?)な「自称ベテラン登山者」である。「道を知っている」ということと「ガイドが出来る」ということは全く別次元の問題である。また中には登山道で足を置く石の場所も全て覚えている。という案内人の紛いのオジサンもいるが、それって本当に自然の山道?コンクリートで固められた中に石が埋め込んである歩道を歩いてるんじゃないの?と問いたくなるような無茶苦茶なことを言っている人もいる。仮に登山道であってもいつも同じ状況ということは絶対に有り得ない。なぜなら登山という行為そのものが常に変化する自然を舞台にしている以上、天候はじめ様々な外的要因の影響を大いに受けるからである。例えば登山道上で土砂崩れがあった場合はそれまで知っていたコースとは全く状況が変わってしまう。また雪山では積雪量、雪質、雪の着き方などが同じことは万に一つも有り得ない。今まで自分が歩いた時は雪崩が起きなかったからといって雪崩が起きないコースとは全く意味が違う。では「道を知っているからガイドできる」と豪語する「自称ベテラン」は何を根拠に発言し、人を引き連れているのだろうか?それは結局は何も考えていないだけなのである。ガイドするというのは単に人を引き連れて歩くだけではない。如何に疲れさせずにコンディションを保ちながら歩いてもらうか、如何に安全に楽しんでもらうか、如何に安全を確保するか、その為には如何に先を見て行動するか。そしてそれでももしアクシデントが発生した場合は如何に対応するか。それらを常に考え実行しながら案内するのがガイドするということである。だからガイドが出来るというのは少なくとも「その山が例えどんな状況になっても最低限安全を確保できることが大前提」なのである。
自分の登山をするのであればどんな登り方をしようが自由である。しかし人をガイドするというのであればそのようなことをよく考え責任を持って行動した方が良いと思う。単に先頭をきって前を歩くだけなら山麓の民宿のおばちゃんでさえできることなのだから。
「俺がつれていってやるよ!」、「守ったるから絶対安全やで!」 そう言って山に誘っておいて、事故が起きた場合は「ハイ!山は自己責任ですよ!」 と言って逃げるようなことが罷り通っている。これが現在の登山グループでは普通に起こっていることなのです。これで本当に良いのでしょうか? 登山ブームの現在、登山者も増え、それと同じく事故も増えています。そろそろ真剣に考える時だと思います。