しゅぷりったあえこお nano

ブログ版 シュプリッターエコー

スローカメラのすゝめ

2018-10-30 23:41:00 | 写真
デジタルが主流の昨今、今またフィルムカメラが流行しているらしい。
温故知新ということか、或いは懐古的なノスタルジー、若しくは前時代へのリスペクトか。
私は専らフィルムカメラ党です。
銀と塩をハロゲン化合させた銀塩を感光材料としている為、銀塩カメラとも呼ばれる。
むしろそう呼んだ方が何となくカッコいい。
デジタルカメラの撮ってすぐ見られるインスタント性に飽きを覚え、現像に出すまでのもどかしいタイムラグに楽しみを見出す人も少なくはないはず。
銀塩写真の特徴は、柔らかな映り方に人肌の温もりを感じられるところだろうか。

対してデジタル写真は映し過ぎる。
それはあたかもモネが描く光とラッセンのそれの対比を彷彿させる。
言うなればデジタルのそれは写真ではなく画像であり、コンビニエンスストアで印刷できるデジタルコピーと大差無いと言いたい。

とは言うものの、銀塩カメラは金がかかる。
まずフィルム代。
金を出して購入したフィルムを無駄にしない為にも、一枚入魂の覚悟でシャッターを切らなければならない。
作品として光を刻む心意気。その刹那のマインドフルネス。何枚でも撮れるデジタルカメラとは気合が違う。
次に現像代。
家に暗室と現像機まで持って取り組むなら話は別だが、通常はカメラ屋に持ち込むものだろう。
ネガフィルムなら現像と同時にプリントされるものだから、持ち込んで1時間程度で写真を手に取れるものの、フィルムをカメラに装填してから数えると一週間はかかるかもしれない。
手に取ってみて初めてピンボケに気付く痛恨の衝撃もまた一興かもしれない。


この非合理性をより楽しみたい酔狂な方には是非リバーサルフィルムを推奨したい。
色を反転させるネガフィルムとは異なり現像した時点で写真そのものの色が映し出されるので、ネガと対比させてポジフィルムとも呼ばれる。
スライド写真を思い出して戴ければ分かりやすいだろう。

ポジフィルムは、まずフィルム代からしてネガよりも高い。
現像代も高い上に、取り扱っている店が少ない。
たとえ受付けて貰えても、大抵は外注に出されるので、現像だけで3~4日かかる。
ポジフィルムの場合は同時プリントが無い。
現像されたフィルムを見ながらプリントに出すべきフィルムを厳選する必要があるのだが、選ぶ時間こそ楽しいもので、ルーペ片手に思わず顔を綻ばせてしまう。
いざ厳選したフィルムをプリントに出して更に2~3日で漸く写真とご対面となる。
ポジフィルム、さすがプロや上級者向けと言われるだけあって、透明感ある美しさ、克明に映し出された色彩感、そして銀塩独特の味に感銘を受ける。
写真家の伊藤彰さんは言う、スローカメラの楽しみと。




銀塩カメラ、暗さに弱いという短所はあるものの、ピーカン天気の日には意気揚々と持ち出したい。
AF?何ですか?
シャッタースピードも絞りも焦点も、全部自分でやらないと気が済まない私は常にマニュアルカメラです。
ノスタルジーとか前時代的とか言う前に、単に機械音痴なだけと言われるならば甘んじて受けましょう。
はい、その通りです。
銀塩カメラ、このもどかしい楽しみを皆様にも是非。


(アサオケンジ)