しゅぷりったあえこお nano

ブログ版 シュプリッターエコー

エネルギーいっぱいの展覧会―ポウ展

2007-09-29 22:30:27 | 美術
 ワッと沸き立つようなエネルギッシュな展覧会が神戸・王子の原田の森ギャラリーで開かれています(9月28日―30日)。
 30回目を迎えた「ポウ展」です。
 「ポウ」とは自由奔放(ジユウホンポウ)の放(ポウ)です。
 パワフルという修飾語がカシラにつく国際的な画家・栃原敏子さんが主宰する美術グループの展覧会です。
 かつて、芸術はバクハツだ、といったシュルレアリスムの大将がいましたが、じっさい、トチハラ・サークル43人のバクハツです。

 なんとも多彩で、幅の広い顔ぶれです。
 繊細な音楽が聴こえるような足立朱麻(みま)さんの明るい色彩、快い幻視に導くコウノ真理さんの大きな空間、それらすでにくっきりと自分の世界を確立しているメンバーがいます。
 荒木きよこさんの白への挑戦、伊藤みえこさんの黒への挑戦、大塚温子さんの青への挑戦、そのように大きな転回のまっただ中にあるメンバーもいます。
 榊原メグミさんのように作品の展示ばかりでなく、この機会にワタシも精一杯楽しんでやろうと、日々のライブで作品空間の増殖を試みているメンバーもいます。
 そしてむろん自分の世界を見いだそうと苦闘を重ねている模索中のメンバーもいるのです。
 年齢の幅も美術専攻の学生から、還暦を超えてなお新たな実験に向かうベテランまで、これはおそらくだれの想像も及ばない大きさでしょう。
 それぞれがそれぞれのブースを自分の彩りでたっぷり染めて、いわば個展の大集合体のようなダイナミックな展覧会になりました。

 プロフェッショナルであるとかアマチュアであるとか、そういう壁は取り外して、どうやらマグマのような創造の場を熱く共有しているグループに見えますが、これから大きな噴火の季節を迎えるのではないでしょうか。
 そんな予感があふれています。

 入場無料。30日は午後4時まで。
 原田の森ギャラリーは078.801.1591 http://hyogo-arts.or.jp/harada/


トラの弱点③―鳥谷選手

2007-09-27 13:01:10 | 阪神タイガース
 長打も打てるリードオフ・マンと期待されて1番バッターを任されましたが、シーズン中にヒーローになったのは数えるばかりで、期待にはほど遠い働きでした。

 選手全員が試合に集注しなければならない最終盤にきて、写真週刊誌に女性がらみのスキャンダルも暴露され、ゲームに対していい加減な意識しか持っていないように見える彼の振る舞いは、懸命にゲームに打ち込む選手たちを逆にピエロ的な笑いものに変えてしまうことにもなりました。
 金本選手や赤星選手が身を削ってペナントレースに打ち込んでいるときに、鳥谷選手はそんなことは知ったことかと言わんばかりに女たちとうつつを抜かしていたのですから。
 まじめにやっているものがアホウに見えるようなチームでは、選手のまとまりなどもう望むべくもありません。
 まとまりをなくしたチームはただ転落するばかりです。

 けれど、鳥谷選手の「不振」も「品位の欠損」も、彼自身の問題というよりも、岡田監督はじめチームの首脳陣や評論家、それにわたしたちファンの側にむしろ根本的な問題があるようです。
 早稲田大学から大物ルーキーとして阪神に入団しましたが、そのときのはなばなしい輝きに周りのみんなの目がくらんで、あまりに大きな幻想を彼に抱いてしまったのです。
 3割、30本、30盗塁はクリアできるバッターで、人格もしっかりしているに違いないと、みんながそう見誤ってしまったのです。
 そんな幻想がプロ球界で3年も4年も続くというのは異常ですが、おそらくそこには同じ早大出身の岡田監督のいささか尋常ではない鳥谷びいきもあったでしょう。

 鳥谷選手はショートの守りは堅実に進歩していますが、打撃は2割7分か8分くらいがほんとうの実力というところでしょう。
 ホームランも20本にコンスタントに届くのはちょっと難しいのではないでしょうか。
 打順としては7番くらいが身の丈に合った位置でしょう。
 あまり器用な選手でもないですし。
 それに彼にリーダーの風格を望むのはむりなことです。
 二流とまではいいませんが、技量も精神(スピリット)もせいぜい一流半の選手です。

 虚像を実像と見誤ってベンチもファンも彼に過大な要求をしてきたことが、大きな間違いだったというわけです。  

 もちろん打順やポジションは決して本人が決めるものではなく、監督の専決事項ですから、けっきょく、鳥谷の失敗は岡田監督の失敗ということになるのですが。
 


トラの弱点②―岡田監督

2007-09-24 22:54:25 | 阪神タイガース
 対横浜戦(9月24日)に逆転負けをして、この大事な時期に5連敗。事実上、首位戦線から脱落しました。この間、岡田監督は作戦といえるような作戦を構築することがついにできませんでした。

 岡田監督の戦い方は次の2点に集約できます。
 1、打者が打ってくれるのを待つこと。
 2、先発投手が6回を投げきってくれるのを待って、久保田、ウィリアムス、藤川の、いわゆるJFK3本柱につなぐこと。
 つまり、基本的には投打とも「待つ」の戦略なわけですね。
 監督自身がゲームのつど全体の展開を構想して、それに向かって戦術を緻密に組み立てていく、というようなことはまずありません。
 ですから、ゲームはおおむね成り行きにまかせながら運ばれることになります。

 その象徴が、ゲームにバントやエンドランなどをほとんど使わないことです。
 岡田監督は現役選手の時代に、自分がバッターボックスに立っているときに、ベンチから走者を動かすようなサインが出るのをとても嫌っていましたから、これは監督の体質から来ることでもあるのでしょうが。

 ただ、この「待つ」「成り行きまかせ」の戦い方では、選手の調子がいいときにはどんどん勝ち進んでいきますが、選手の調子が落ちてくると歯止めなく負け続けるということになるのです。 
 選手にとっては自分たちの自主性を認めてもらっているような戦い方になりますから受けのいい監督といえるでしょうが、ファンにとっては放任と見えて、フラストレーションがたまります。

 いよいよ最終局面になって、岡田監督もときどきはバントやエンドランを採用するようになりましたが、ふだんやっていないことをにわかにやろうとしても、うまくいくわけがありません。
 決定的な場面でバントの失敗が目立って、それがこの5連敗の一因にもなっています。
 ここにきて中日との差が歴然としてきましたが、それはバントなどの小さい戦術を確実に成功させながら緻密な作戦を組み立てていく落合監督との差ともいえるでしょう。

 もっとも、巨人の原監督も岡田監督とどっこいどっこいのように見えますから、実は落合監督がセントラルリーグでは首ひとつ抜けていて、岡田さんもそれほど非力というわけではなく、並みの監督さんのひとりということではあるのでしょうが。 

トラの弱点―浜中選手

2007-09-23 20:48:20 | 阪神タイガース
 対ヤクルト戦(9月23日)。
 6回表、鳥谷の犠打でワンアウト二塁、三塁のチャンスになったところで代打に送り出されましたが、あえなく三振。
 浜中選手はワンストライク目の絶好球をだいたい見逃してしまいます。
 おそらく決断力が弱いのだと思います。
 どうしてもワンクッション置いてからでないとバットが振れないのです。
 ですから、コントロールの定まらない二線級のピッチャーならカウントを重ねるうちに打つチャンスも出てきますが、一線級のピッチャーだと好球を見逃して追い込まれ、けっきょく難しい球を打ちにいって、空振りに終わるケースが多いのです。
 高い技術を持っていますが、持ち腐れで、勝負に弱い選手ですね。 

猛虎魂を汚す一球

2007-09-20 15:39:16 | 阪神タイガース
 タイガースが好きになってもう50年を超えます。
 妻との歳月よりずっと長い恋愛です。
 その半世紀にあまる恋のなかで、ゆうべほどつらい思いをしたことはありません。
 ジャイアンツに11対1で惨敗した、その敗戦のことをいっているのではありません。
 甲子園球場を野球の聖地というのなら、昨夜のようなゲームはむしろ負けてよかったといえるでしょう。
 いたたまれない思いにさらされたのは、タイガースの先発・ボーグルソン投手の汚い投球のせいなのです。

 試合は巨人がボーグルソンを打ち込んで、4-0の優位のまま4回の表まで進んでいました。
 ツーアウトでセカンドの塁上に二塁打をはなった巨人8番のホリンズが立っています。
 バッターはピッチャーの内海です。
 まずヒットを打てるバッターではありません。
 ところが劣勢のボーグルソンは、その内海投手の頭を狙って投げたのです。
 汚いビーンボールです。
 ヘルメットが吹っ飛びました。
 巨人ファンもゾッとしたでしょうが、ゾッとしたのは阪神ファンも同じです。
 さいわい頭は直撃からまぬかれて大事に至らなかったのが何にもましての救いではありましたが、球場にもテレビの前にもとてもいやな空気が漂いました。
 ボーグルソンの汚れた一球(Dirty ball by Bogelsong)が、ことし数々の名場面を築いてきた巨神の最後の一戦(24回戦)を台無しにしたのです。

 今朝の新聞によりますと、ボーグルソンは「故意ではなかった」と弁解しているということですが、それはウソです。
 意志の乗ったストレートがバッターの頭を狙ってまっすぐに進んでいきました。
 すこし野球を見慣れた者にならわかることです。
 そして投げ終わるか終わらないかのうちに、彼はもうマウンドを降りてベンチへ向かっていました。
 「危険球」とアンパイアからジャッジされるのを、すでにわかっていたからです。
 内海投手には、謝罪のカケラも示さずに、です。
 むしろ顔には衆人環視のなかで悪意を遂げたもの特有の、あのギラギラした、悪魔的な表情が浮かんでいました。
 テレビカメラのクローズアップをごまかすことはできません。

 汚い一球のショックがファンだけでなく、現場の選手にも広がっていたことは、その4回の裏に赤星、シーツ、金本、という阪神の中軸バッターが、まるでフワーッと気の抜けたような三振にそろって倒れてしまったことでもわかります。
 汚いボールは敵方ばかりでなく、味方の心も深く傷つけてしまうのです。
 金本を中心に高貴な輝きさえ放ってきたタイガースの奇跡に、このアメリカからの新参投手は大きな汚点をつけたのです。
 もしこのシーズン大詰めのデッドヒートで阪神が尻すぼみになっていくようなことがあったなら、ボーグルソンのこのダーティーな振る舞いがその大きな理由になるはずです。

 ジャンといい、ボーグルソンといい、故意に死球を投げるような投手を引っ張ってくるのは、球団フロントの管理能力の問題でもあるでしょう。
 それはぼくたちの猛虎魂への侮辱ですし、それどころか野球そのものへの侮辱です。
 そういう汚い選手の契約はもう更改すべきではありません。


青の深さと音楽性―笹田敬子展

2007-09-19 13:50:01 | 美術
 笹田敬子さんはブルーをとても印象的に使う抽象画家ですが、その青を主体にした個展が神戸・ハンター坂のギャラリー島田で9月26日まで開かれています。

 1997年から98年にかけて伊豆美術祭絵画公募展大賞、上野の森美術館大賞展大賞などの受賞が続き、そのころの作品にはまだ人の顔のような形象(カタチ)が画面の一角に浮かんでいましたが、その後さらに抽象の度合を深めて、青の跳躍がいっそう前面に出てきました。

 神戸生まれ、神戸育ちの画家ですが、ひところ淡路島に住んでいたことがあって、そのときに触れた海の青さが、あるいは絵にも影響しているのかもしれませんね、とこれは画家自身の自己分析です。
 たしかに淡路島の海の青さと神戸の街の明るい光が作品の骨格になっているようにも思えます。

 音楽が画面から聞こえるようなのも笹田さんの作品の大きな特徴といえるでしょう。
 初期のころにはジャズの律動的な感覚が中心になっていて、それが徐々にクラシカルな深い響きへと変わってきているのも、興味を誘われるところです。

 ジャズといえば、まさしく都市神戸の音楽です。
 10月には神戸ジャズストリートと銘打って今年もジャズの祭りが開かれます。
 ところでクラシックも、あまり知られてはいませんが、神戸ではいちはやく開港時代(幕末~明治)の居留地にヨーロッパから入っていて、筝曲家(そうきょくか)の宮城道雄が邦楽の近代化を遂げたのも、彼が居留地育ちだったからだと分析されているほどです。
 ですから、クラシックもまた神戸の音楽文化の重要な一角を占めて今日に至っているといえるのです。

 深い青と明るい感覚とリズミカルな音楽性。笹田さんはまさしく神戸からスピリチャルなインスピレーションを汲んでいる画家なのではないでしょうか。

 ギャラリー島田は078.262.8058 http://www.gallery-shimada.com/
                 ☆
 なお笹田敬子展の個展評を本ブログの姉妹編「批評紙Splitterecho(シュプリッターエコー)」Web版に掲示しています。Web版はhttp://www16.ocn.ne.jp/~kobecat/


ポエジックな記事のこと―巨神戦

2007-09-08 19:05:41 | 阪神タイガース
 東京ドームで行われた巨人―阪神の19回戦(9月7日)は、あれこそペナントレースの天王山だったと、あとで振り返ることになる大一番だったかもしれません。
 追いつ追われつの死闘は8―8で迎えた9回表、ピンチヒッターの桧山が名投手・上原から放った右翼席へのホームランでタイガースが勝ちました。

 タイガースが勝った翌日は、モーニングを食べにいく近所の喫茶店と午後のお茶にいく都心の喫茶店で、スポーツ新聞のハシゴをするのが楽しみです。
 むろん一般紙の運動面もしっかり読みます。
 それぞれの新聞に独特の雰囲気がありますが、きわだってインパクトのある記事に出遭うのは、意外にも一般紙の読売新聞の運動面です。
 きょうの朝刊も心を揺する文でした。
 敬意を表して書き出しの段落を転載させていただきます。

 「歓声と悲鳴が交錯するドームの右翼席最前列に、美しいアーチが届いた。九回、代打・桧山の決勝3号ソロ。阪神唯一の本塁打が、打撃戦に決着をつけた。」

 簡潔で、ポエジックな文章です。
 読売新聞は知ってのとおり巨人という球団の親会社であるだけに、いっそうの味わいを感じます。
 あるいは隠れタイガースファンなのかもしれません。
 ぼくも大阪読売に潜り込んでいたトラ狂の記者を個人的には知っていますが…。

 でもやっぱりこの美しい文は、記者のプロ意識なのでしょう。
 署名は風間徹也とありました。