――アサオさん、ラオスへ行ったのは何度目ですか。
憶えてないですね。いっときは毎年行ってたから、たぶん15回以上…。
――確かに、アサオさんのブログ「63 Scott Street」のラオスの記事は現時点で21本、いちばん多いですね。
新婚旅行や家族旅行は記事にしてないから、それを含めるともっと多く行ってますかね。
――ラオスの魅力って何ですか。
何も無いことが魅力だとよく言われますね。隣国のタイには無数にあるコンビニが、ラオスには一店舗もありません。静かな環境と、そこに住む人の素朴な人柄に癒されます。タイには仕事で毎月行きますが、タイと比べればラオスは貧富の差があまりなくて、むしろみんな貧しいから平和です。
――記事を読んでいると、意外にというか、自然とか景観についての話が少なくて、人との一期一会的なエピソードが多い印象ですね。
そう言われてみると確かにそうですね。旅の移動中の出来事を書く方がテンションが上がるからかもしれません。目的地に到着したあとのことは、あまり記憶に残らないのかも…いや、残ってるんですけど、記事にするほどではないというか…単純に、自然環境にはあんまり興味がないってことですかね。
――自然に興味がないというより、人に強く興味があるということかなと思ったんですけど。
あ、そう! それ!
――日本や中国、タイにはいない人たちがラオスにはいるということ? たとえば日本の「田舎」に住む人々の「素朴さ」ともちがう…。
のんびりしているという意味では、日本の地方の人以上かも。玄関に鍵かけないお婆ちゃんみたいな。
――個人的には「2」の、小さな女の子の運転するバイクに乗って連れられて行くところが映画のシーンみたいで本当に好きです。写真もすごくいいし。あのときは怖くなかったんですか。
ぜんぜん。慣れたものでしたよ。免許もいらないような島ですから、おそらく親から乗り方を教わってるんでしょうね。まぁ実際には免許要るはずですが、取り締まる警察もいませんしね。
――面白い、と言っては、そんな幼い身で労働しているのは、本当は気の毒なことなのかもしれないけれど…
彼女は喜んでましたけどね。乗ってもいいんだ、という感じで。きっと昼間は父親が仕事で使ってるから乗せてもらえないんでしょう。ちなみに、食堂のテーブルで何か書いてたのは、宿題でもやってたんじゃないかな。レストランを経営してるので、学校に通えないほど貧乏ではないんじゃないかと。
――東南アジア随一ののんびりさかげんなんでしょうか、ラオスは。
ですね。
ただまぁ、ラオスも北部と南部とでは、だいぶ事情が異なるようです。山に囲まれた北部の人に比べると、南部の人は明るいというか大雑把というか、あまり細かく考えてないんじゃないかと思わされましたね。シーパンドンまで連れてやるとか言いながらバスターミナルに案内したり(「1」参照)。
スペインなんかでも北部と南部ではぜんぜんちがいますしね。カミュじゃないですが、太陽のせいなのかもしれません。
あと、ラオス北部の「暗さ」はベトナム戦争に巻き込まれた歴史があるからかもしれません。今でも山中で不発弾で死んだり、腕や脚を失う人がいるそうです。
――まだ「未踏」のアジア国はありますか。
バングラデシュとかネパールとかブータンですかね。
でも、行き慣れたラオスでもまだまだ行ったことのないところがあるので、そういう意味では心惹かれる未踏の地がラオスにもあります。
実際、他の国はあまり興味がないですね。自分にとっては行く意味がない、と思ってます。
――「行く意味」って? もう少し詳しく。
メコン川に惹かれるんですよ。一度ブログに書いたけど、なぜだか自分のルーツがそこにあるような…すごく懐かしいような気がするんです。鮭が遡上するような感じでしょうか。
――そう、さっき自然はあんまりって話してたけど、メコンについて訊きたいって思ってたんです。ガンガー(ガンジス川)に行ったけど何も感じなかったと前に話してましたよね。
そうなんです。ガンガーは何だか違うんです。
遺伝子に刻まれた何かがメコンに反応するような、そんな気がしています。
――不思議ですね、でも人間というか人類の歴史を考えると不思議ではないのかもしれませんね、それより、幸福ですね、自分のふるさとのようなものが見つかったのなら。
そういえば、神社の鳥居のルーツはメコン流域に住む少数民族の集落にあるという説を聞いたことがあります。ルアンパバーンでは、狐が2匹一対になって大きなお寺を守ってるんですよ。
――そうだ、訊きたいんですけど、「3」でお財布盗られたというのは、置き忘れたってことですか。
盗られたのか紛失したのか本当のところは分からないんですけどね。
――そうなんですね。
そっちの財布にはタイバーツとラオスキップ(ラオスの通貨)しか入れてなかったので、軽く考えて寝室まで持って入らなかったんですよね。日本円やクレジットカード、それと会社のお金は後生大事に寝室の枕元まで持って入ったので、それだけで安心してたんです。
――ふんふん。
財布はバンガローを出る時には既に無かったんだと思うんですけど、夜、電気点けっ放しでろくに寝られなかったので、半分寝ぼけてたかなとも思います。で、隣なんて無いと驚いて財布のことを思い出した次第でした。
思い返すと、母屋から離れてポツンと建ってる小屋に泊まる外国人なんて、良いカモですよね。
――なんかときどき…いえ、わりと、うっかりエピソードないですか。
うっかり多いんですよ。インドではパスポートを移動前の町に忘れてきたり、中国の雲南省では山中で遭難しかけたり…
――いや…そんなトラブルに見舞われても無事帰国できたというのは、旅のエキスパートというべきなのか何だかよくわかりませんが、さてさて、今回で「南ラオスへの旅」のシリーズは完結だそうですが…
はい、終わりです。
――楽しみにしてた連載なんで寂しいです。はやく次のシリーズをお願いします。
しかし家族や会社のことを考えると、若い頃のようには行けませんから、次の旅はいつになることやらですね。
憶えてないですね。いっときは毎年行ってたから、たぶん15回以上…。
――確かに、アサオさんのブログ「63 Scott Street」のラオスの記事は現時点で21本、いちばん多いですね。
新婚旅行や家族旅行は記事にしてないから、それを含めるともっと多く行ってますかね。
――ラオスの魅力って何ですか。
何も無いことが魅力だとよく言われますね。隣国のタイには無数にあるコンビニが、ラオスには一店舗もありません。静かな環境と、そこに住む人の素朴な人柄に癒されます。タイには仕事で毎月行きますが、タイと比べればラオスは貧富の差があまりなくて、むしろみんな貧しいから平和です。
――記事を読んでいると、意外にというか、自然とか景観についての話が少なくて、人との一期一会的なエピソードが多い印象ですね。
そう言われてみると確かにそうですね。旅の移動中の出来事を書く方がテンションが上がるからかもしれません。目的地に到着したあとのことは、あまり記憶に残らないのかも…いや、残ってるんですけど、記事にするほどではないというか…単純に、自然環境にはあんまり興味がないってことですかね。
――自然に興味がないというより、人に強く興味があるということかなと思ったんですけど。
あ、そう! それ!
――日本や中国、タイにはいない人たちがラオスにはいるということ? たとえば日本の「田舎」に住む人々の「素朴さ」ともちがう…。
のんびりしているという意味では、日本の地方の人以上かも。玄関に鍵かけないお婆ちゃんみたいな。
――個人的には「2」の、小さな女の子の運転するバイクに乗って連れられて行くところが映画のシーンみたいで本当に好きです。写真もすごくいいし。あのときは怖くなかったんですか。
ぜんぜん。慣れたものでしたよ。免許もいらないような島ですから、おそらく親から乗り方を教わってるんでしょうね。まぁ実際には免許要るはずですが、取り締まる警察もいませんしね。
――面白い、と言っては、そんな幼い身で労働しているのは、本当は気の毒なことなのかもしれないけれど…
彼女は喜んでましたけどね。乗ってもいいんだ、という感じで。きっと昼間は父親が仕事で使ってるから乗せてもらえないんでしょう。ちなみに、食堂のテーブルで何か書いてたのは、宿題でもやってたんじゃないかな。レストランを経営してるので、学校に通えないほど貧乏ではないんじゃないかと。
――東南アジア随一ののんびりさかげんなんでしょうか、ラオスは。
ですね。
ただまぁ、ラオスも北部と南部とでは、だいぶ事情が異なるようです。山に囲まれた北部の人に比べると、南部の人は明るいというか大雑把というか、あまり細かく考えてないんじゃないかと思わされましたね。シーパンドンまで連れてやるとか言いながらバスターミナルに案内したり(「1」参照)。
スペインなんかでも北部と南部ではぜんぜんちがいますしね。カミュじゃないですが、太陽のせいなのかもしれません。
あと、ラオス北部の「暗さ」はベトナム戦争に巻き込まれた歴史があるからかもしれません。今でも山中で不発弾で死んだり、腕や脚を失う人がいるそうです。
――まだ「未踏」のアジア国はありますか。
バングラデシュとかネパールとかブータンですかね。
でも、行き慣れたラオスでもまだまだ行ったことのないところがあるので、そういう意味では心惹かれる未踏の地がラオスにもあります。
実際、他の国はあまり興味がないですね。自分にとっては行く意味がない、と思ってます。
――「行く意味」って? もう少し詳しく。
メコン川に惹かれるんですよ。一度ブログに書いたけど、なぜだか自分のルーツがそこにあるような…すごく懐かしいような気がするんです。鮭が遡上するような感じでしょうか。
――そう、さっき自然はあんまりって話してたけど、メコンについて訊きたいって思ってたんです。ガンガー(ガンジス川)に行ったけど何も感じなかったと前に話してましたよね。
そうなんです。ガンガーは何だか違うんです。
遺伝子に刻まれた何かがメコンに反応するような、そんな気がしています。
――不思議ですね、でも人間というか人類の歴史を考えると不思議ではないのかもしれませんね、それより、幸福ですね、自分のふるさとのようなものが見つかったのなら。
そういえば、神社の鳥居のルーツはメコン流域に住む少数民族の集落にあるという説を聞いたことがあります。ルアンパバーンでは、狐が2匹一対になって大きなお寺を守ってるんですよ。
――そうだ、訊きたいんですけど、「3」でお財布盗られたというのは、置き忘れたってことですか。
盗られたのか紛失したのか本当のところは分からないんですけどね。
――そうなんですね。
そっちの財布にはタイバーツとラオスキップ(ラオスの通貨)しか入れてなかったので、軽く考えて寝室まで持って入らなかったんですよね。日本円やクレジットカード、それと会社のお金は後生大事に寝室の枕元まで持って入ったので、それだけで安心してたんです。
――ふんふん。
財布はバンガローを出る時には既に無かったんだと思うんですけど、夜、電気点けっ放しでろくに寝られなかったので、半分寝ぼけてたかなとも思います。で、隣なんて無いと驚いて財布のことを思い出した次第でした。
思い返すと、母屋から離れてポツンと建ってる小屋に泊まる外国人なんて、良いカモですよね。
――なんかときどき…いえ、わりと、うっかりエピソードないですか。
うっかり多いんですよ。インドではパスポートを移動前の町に忘れてきたり、中国の雲南省では山中で遭難しかけたり…
――いや…そんなトラブルに見舞われても無事帰国できたというのは、旅のエキスパートというべきなのか何だかよくわかりませんが、さてさて、今回で「南ラオスへの旅」のシリーズは完結だそうですが…
はい、終わりです。
――楽しみにしてた連載なんで寂しいです。はやく次のシリーズをお願いします。
しかし家族や会社のことを考えると、若い頃のようには行けませんから、次の旅はいつになることやらですね。