わたしたちネコ族とヒト族のあいだにはたくさんの違いがありますけど、なかでも奇妙なのは、知識階層という風変わりなグループがヒトの世界にあることです。
アイマイモコとしたひとびとの集団で、ああいうかたがたのヌエのような生きかたはとうてい猫の性にはあいません。
なかんずくこの国のあの階層は、どうもクラゲみたいにフワフワしていて、正体をつかむにはずいぶん骨が折れそうです。
あてもなく漂いながら一生を終えるのなら、いなくてもいいようなものですが。
ただ最近はちょっと骨のあるひとも階層の中から出始めているようで、これはこの国のヒト族にもネコ族にもいい材料になりそうです。
原発の運転をあっさりと止めてしまった裁判長の山本善彦さんなんかもそのひとりだといえるでしょう。
電力会社さんは安全だ、安全だ、というけれど、よく聴けば、ただそう繰り返しているだけで、よしわかったといえるようなしっかりとした説明はいっこうに出てこないじゃないですかと、まあ、これがおおざっぱにまとめた山本さんの主張です。
電力会社さんの言い分は、なんだかんだと言ったところで、けっきょくのところ監視役の規制委員会が安全だといってくれているんだから、安全にちがいないんだ、というわけでしょう。
この国ではおカミのオスミツキがいつも大きな役割を果たしてきて、このインロウが目に入らぬか、シモジモのものは下がりおれ流に、政治が進められてきましたから、電力会社さんは今度もそれでいけると踏んでいたんでしょうけど。
インロウなどにまどわされない気骨のある裁判官があらわれた。
ヒトひとりひとり、ネコ一匹一匹がじぶんの頭で考えたら、電力会社さんの言いかたではどうもチンプンカンプンなこと、それは明々白々なんですが、その道の専門家と称するひとたちが権威をタテにこうだと言えば、やっぱりそうかなあと思ってしまう弱さがこっちのほうにもあるんですね。
それを山本さんは率直にスパッと言った。
わたしたちの心の中をそのままそっくり言ってくれた。
女主人のみよこさんの連れ合いのサトシさんの話だと、この国でも敗戦のあとしばらくは、信頼に足る知識層が生まれかけていたそうです。
信頼に足る知識層とは、サトシさんのテイギでは、国の問題をヒト族の広く普遍的な目で見るひとたちをさすそうです。
でもここ20~30年くらいのあいだにそういうひとたちがどんどん消えていったそうなんです。
マルクスの社会主義理論をトラの皮にして、それで主体的な人間のふりをしていた学者たちが、マルクス主義の衰退とともにしょぼくれていった、それは当然のことだとしても、じぶんの頭で必死で考えていた真正の知識人たちが衰えてしまった、そのことをサトシさんはガラにもなく残念がっているんです。
でも山本さんのようなかたがこれから次々出てきたら、また希望がよみがえってくるんじゃありません?
(注)猫の夢がここでいっている裁判は。2016年3月9日に大津地裁で下された仮処分決定のこと。原発は関西電力が福井県高浜町に設けている高浜原発3号機と4号機のこと。
アイマイモコとしたひとびとの集団で、ああいうかたがたのヌエのような生きかたはとうてい猫の性にはあいません。
なかんずくこの国のあの階層は、どうもクラゲみたいにフワフワしていて、正体をつかむにはずいぶん骨が折れそうです。
あてもなく漂いながら一生を終えるのなら、いなくてもいいようなものですが。
ただ最近はちょっと骨のあるひとも階層の中から出始めているようで、これはこの国のヒト族にもネコ族にもいい材料になりそうです。
原発の運転をあっさりと止めてしまった裁判長の山本善彦さんなんかもそのひとりだといえるでしょう。
電力会社さんは安全だ、安全だ、というけれど、よく聴けば、ただそう繰り返しているだけで、よしわかったといえるようなしっかりとした説明はいっこうに出てこないじゃないですかと、まあ、これがおおざっぱにまとめた山本さんの主張です。
電力会社さんの言い分は、なんだかんだと言ったところで、けっきょくのところ監視役の規制委員会が安全だといってくれているんだから、安全にちがいないんだ、というわけでしょう。
この国ではおカミのオスミツキがいつも大きな役割を果たしてきて、このインロウが目に入らぬか、シモジモのものは下がりおれ流に、政治が進められてきましたから、電力会社さんは今度もそれでいけると踏んでいたんでしょうけど。
インロウなどにまどわされない気骨のある裁判官があらわれた。
ヒトひとりひとり、ネコ一匹一匹がじぶんの頭で考えたら、電力会社さんの言いかたではどうもチンプンカンプンなこと、それは明々白々なんですが、その道の専門家と称するひとたちが権威をタテにこうだと言えば、やっぱりそうかなあと思ってしまう弱さがこっちのほうにもあるんですね。
それを山本さんは率直にスパッと言った。
わたしたちの心の中をそのままそっくり言ってくれた。
女主人のみよこさんの連れ合いのサトシさんの話だと、この国でも敗戦のあとしばらくは、信頼に足る知識層が生まれかけていたそうです。
信頼に足る知識層とは、サトシさんのテイギでは、国の問題をヒト族の広く普遍的な目で見るひとたちをさすそうです。
でもここ20~30年くらいのあいだにそういうひとたちがどんどん消えていったそうなんです。
マルクスの社会主義理論をトラの皮にして、それで主体的な人間のふりをしていた学者たちが、マルクス主義の衰退とともにしょぼくれていった、それは当然のことだとしても、じぶんの頭で必死で考えていた真正の知識人たちが衰えてしまった、そのことをサトシさんはガラにもなく残念がっているんです。
でも山本さんのようなかたがこれから次々出てきたら、また希望がよみがえってくるんじゃありません?
(注)猫の夢がここでいっている裁判は。2016年3月9日に大津地裁で下された仮処分決定のこと。原発は関西電力が福井県高浜町に設けている高浜原発3号機と4号機のこと。