一字違い

　雪女と雪男って、たった１字違うだけでねえ。
　ずいぶんイメージが違いますねえ。

　一方は、ほっそりとして、ほとんど透明で、もう消えてしまいそうで。
　もう一方は、デカくて、毛むくじゃらで、ドカドカと音が聞こえそうなほど濃くて。

　一方は、怖いほど美しくて。
　もう一方は、笑えそうなほど無骨で。

　一字違いで大違い。

妄語録 １

　この世の中に分類しきれないくらいいろんな性格の人がいるということ、それはそんなに恐るべきことではありません。
　いずれにしろ、時がたてば慣れるでしょう。

　しかし自分の中に整理しきれないくらいいろんな性格があるということ、これは恐るべきことです。
　気高いものにあこがれる神のような心と、残酷なものにひかれる悪魔のような心とは、同じ自分の体の中にありながら、決して相手に慣れるということがないでしょう。

　ぼくはいったい何万人のぼくなのでしょう。

繭・星座・時間 ３

　落ちていく、
　ああ、
　空へ落ちていく。

　夜の空へ落ちていく。

　白鳥座へ落ちていく。

繭・星座・時間 ２

　君はいま、泣いている？
　僕もいま、泣いている。

　そんなに君は悲しいの？
　僕もこんなに悲しいの。

　でも、ほら、もう寂しさは消えていく。

　泣いている君と
　泣いている僕は、
　だって、
　こんなに近くにいるんだもの。

繭・星座・時間 １

　やさしさからやさしさへ架かる橋を見つけよう。

　むろん見つかる。

　午前零時。
　太陽が真裏に差しかかるそのときに。

　やさしさからやさしさへ架かる橋を渡ろう。
　踏みしめ踏みしめ渡っていこう。

　太陽が正午の位置に来るときに。