世界共産主義革命のためにアグネス・スメドレーと枕まで交わしてきた尾崎秀実がやたら小さな存在に見えてくる
2018年07月27日
2018年07月27日
以下は昨日発売された週刊新潮に…戦後の世界で唯一無二のジャーナリストである高山正之が掉尾を飾って連載しているコラムからである。
日本国内のみならず世界中の人たちは皆、高山正之についての私の評を、心底から、その通り!と思っているはずである。
私は彼を読むためだけのために毎週週刊新潮を購読している。
見出し以外の文中強調は私。
さあ死刑ですよ
真珠湾まであと2か月を切ったころ、ソルゲ事件の片割れの尾崎秀実が警視庁に捕まった。
「目黒署に収監されると連日の拷問で、夜は留置場に這って帰っていた」と尾崎の古巣、朝日新聞所縁の者が書いていた。
いやそれは嘘だと取り調べた特高係長の宮下弘が断固否定する。
日本が戦争している時にスパイをやっている人間を許せないのだと言ったら青い顔して椅子から崩れ落ちた。
暫く黙ったあと「そうスパイスパイと人間の屑みたいに言わないでください。私は政治家です。それを認めてください」と哀訴するんだ。
自分でそう思っていればいいと突き放すともう簡単に落ちてしまった、というような展開だったと。
この話は納得できる。
汚職などサンズイものの捜査官の話だが、役人とか社会的地位のある者はまずその気位を徹底的に剥ぎ落とす。
心理的に素裸にされると簡単に落ちるという。
コミンテルンを背負って立ってきたつもりが、卑賤な密偵扱いされたらずっこける心境はよく分かる。
ずっこけた彼は素直に自供し巣鴨に送られた。
昭和19年4月には上告が棄却され、死刑が確定した。
そのころには「たかがスパイ」評価も納得した風で、そんな父を持った娘の先行きを気にする心情が妻への手紙から窺える。
ちょっと笑えるのは彼が私信の中でカール・クロウの『中国案内』が面白いと推奨していることだ。
米国は第一次大戦後、日本と支那を引き裂くため国務長官と陸海軍長官、それにメディア代表で仕切る米広報委員会(CPI)上海支部を立ち上げた。
蒋介石をカネで抱き込み、米外交官、特派員、宣教師からパール・バックまで使って支那人に親米反日を吹き込んでいった。
成果の一つが五四運動で米公使ポール・ラインシュが指揮を執った。
そのCPI現地指揮官がカール・クロウなのに、そんな背景も知らず、米外交の意図も知らず、世界共産主義革命のためにアグネス・スメドレーと枕まで交わしてきた尾崎秀実がやたら小さな存在に見えてくる。
この稿続く。
2020/11/18 in Kyoto