文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

日本の時間、世界の時間。
The time of Japan, the time of the world

ならば拘束邦人の救出をはじめ理不尽な対日政策を確実に訂正させることが第一だ。

2024年11月22日 21時38分28秒 | 全般
以下は、昨日発売された週刊新潮の掉尾を飾る櫻井よしこさんの連載コラムからである。
本論文も、彼女が最澄が定義した国宝、至上の国宝である事を証明している。
日本国民のみならず世界中の人たちが必読である。

米中せめぎ合い、石破首相は凌げるか
産経新聞特別記者、田村秀男氏の示した折れ線グラフが衝撃的だった。
中国への直接投資が2024年6月時点でマイナスになっている。 
ここから読みとれるのは習近平国家主席の陥った経済金融不況の深刻さである。
共産党独裁の経済金融政策を根本から変えない限り、出口はない。
どん詰まりの状況に、習氏ははまっている。 
そんな今、米国ではトランプ氏が大統領に返り咲いた。
氏は中国に60%の高関税を、日本を含む西側諸国にも10%の関税をかけるという。
一連の数字は狂気の沙汰だと批判されている。
だが、田村氏はこれを別の角度から解説した。
対中高関税がトランプ氏の公約した減税分を補う財源になるというのだ。 
「対中高関税はトランプ政権にとって一石二鳥-中国を痛めつけ、米国民への減税を可能にする財源なのです」 
氏は以下のように説明する。 
「23年の貿易統計を基に計算すれば、中国以外の世界の国々に10%の関税をかけた場合、関税収入はざっと2681億ドル、中国に60%かけたら2565ドルになります。大雑把にとらえて各々から2600億ドル、合計5200億ドル(78兆円)の関税収入を米国は手にすると見てよいでしょう」 
他方トランプ氏はアメリカ国民に所得税減税の延長と法人税減税を公約済みだ。
第一次政権のとき、トランプ氏は10年間で1.5兆ドルの減税を公約した。
今回は1.5兆ドルか2兆ドルかは不明だが、仮に2兆ドルとすれば年に2000億ドル(30兆円)となる。
対中関税による収入で楽々賄える額だ。
田村氏は、ビジネスマンとしてのトランプ氏の考え方はシンプルの一語につきると語る。 
対中で60%もの関税をかければ、米国内の消費者物価はどんどん上がる。
民主党政権がインフレで非難されたように、トランプ政権も同様の批判を受けるのではないかとの見方について、田村氏はこう見る。 
「無論、物価高で消費者負担は増えますが、その分、減税するとトランプ氏は言っているわけです。減税で物価高の痛みを和らげながら、米国にとって最大の脅威である中国の国力を押し潰すというのがトランプ氏の狙いではないか」 ゴールドマン・サックスの中国担当エコノミストは60%の関税をかける場合、中国のGDPは2%分減り、経済成長率は現在公称している5%から3%になると分析する。 
中国の統計がデタラメであるとしても5%前後の成長率では大不況だ。
そこからさらに2%分下がれば大問題だ。
中国はこれまで、人民元を安くすることで米国の関税に対応してきた。
そのときに起きたのは、①人民元が売られて中国内のマネーが減少する、②人民元はさらに売られて暴落する、③中国人が海外に資本を逃避させる、という事象だった。 
人民元の暴落は中国共産党の土台をつき崩す力となるだろう。
習氏は米国の高関税の前で、効果的な対応策を持ち得ていない。

非合法のカネ 
中国人による資本逃避の凄まじさを示す統計がある。
2021年から始まった不動産バブルの崩壊で、22年には3000億ドル(45兆円)の資本が海外に逃げている。
経常収支の黒字を上回る非合法のカネが外国に流出しているのだ。 
周知のように米国が世界最強の覇権国であり得ているのは、強大な軍事力に加えてそれを支える米国の通貨と金融の力があるからだ。 
中国経済の繁栄も米国をはじめとする諸国のドル投資なくしては考えられない。
1970年代から始まった鄧小平の改革開放路線、経済の急成長は外国の資金と技術なしには成し遂げられなかった。 
中国では、自国への証券投資と直接投資を受けてその合計に見合う額の人民元を中国人民銀行が発行する。
中国への投資が盛んな時は、中国国内に膨大な量のマネーが供給された。
ドルによって価値が裏打ちされた中国人民元の大量発行で、中国は目もさめるような高成長を遂げてきた。
それが一変して22年以降対中証券投資は急速に落ち込み、23年にはほぼゼロになった。
直接投資に限ればマイナスになったことはすでに述べた。
各国の企業は中国からの撤退を進めている。
日本企業も例外ではない。 
金融財政面で見れば中国は青息吐息だ。
しかし彼らの強味はモノの貿易において際立つ。
彼らは様々な物資について圧倒的なシェアを持つ。
今年1月23~26日、経団連の十倉雅和会長以下わが国の財界人210人が大挙して訪中した。
彼らは不当に拘束されているアステラス製薬北京駐在幹部の件など取り上げもしなかった。
そのかわり電気自動車(EV)に載せる電池の製造に必要なグラファイト(黒鉛)の対日輸出正常化を要請した。
中国は23年12月1日から黒鉛の輸出を規制している。
本来これはWTOに提訴すべき問題であるのに、トヨタを筆頭に十倉氏ら経済人は卑屈にへり下ってスムーズな輸出を懇願した。

日本に微笑外交 
レアアースをはじめ、多くの物資の輸出に関して中国は明確な政治的意図のもとで圧倒的なシェアを確立した。
中国は唯一の供給国として、相手国を押さえつけたいときに輸出規制を行うのだ。
だが、この戦略も、トランプ氏は高関税で叩き潰そうとしている。
加えて技術革新が中国の横暴を打ち砕き始めた。 
たとえばEV車載電池はリチウムイオン電池が主体で、習氏はそのサプライチェーンの全面制覇を狙って外交面からも予算面からも攻めてきた。
だがその試みが技術革新によって崩されつつある。
西側が開発を進めているのは硫黄を正極に用いるリチウム硫黄電池やリチウムの代わりにナトリウムを使うナトリウムイオン電池である。
石油の精製過程で生ずる硫黄も海水から採れるナトリウムもリチウムに較べればコストは安く、調達も容易だ。 
人類全体に恩恵を及ぼすこの種の技術革新が、独裁政権の目論む世界市場の占有戦略をつき崩すのだ。圧倒的なモノのシェアで世界支配を目論む習氏の野望は、トランプ戦略と技術革新で崩壊しつつある。
石破茂首相はこのような特徴ある世界の指導者らにどう向き合うべきか。
何よりもまず、わが国の国力の強さを認識して自信をつけよ。
米国との協調が何よりも大事な今、金融財政面で日本が米国を支える最大の力になっていることを認識すべきだ。 
「米国の金融市場には毎年約1兆ドル(150兆円)の資金が流入、これが生命線となっています。その6割が日本の資金です。これは金融面での安全保障です。その重要性をまず日本が認識し、米国にも共有させることです。日本国政府が最大の戦略的挑戦と位置づけた中国には決して搦めとられないことです」(田村氏) 
窮地にある中国は日本に微笑外交を展開中だ。
ならば拘束邦人の救出をはじめ理不尽な対日政策を確実に訂正させることが第一だ。
この際、原理原則なき妥協こそ避けるべきだ。


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