ラク!その声で上を向くと、人が2人、滑落だ。あっ、と思って身を避けた20m右を、ブン、と猛スピードで転がっていった。5月5日、朝7時頃、涸沢から奥穂高岳に向かう、あの大カールの、穂高岳山荘のあるコルから200mほど下の急斜面に取りついていた。右上、急斜面の取りつき部分に2人、いることは何となく記憶している。何があったのか分からない。昨夜降った雨が、相当固く閉まっていたため、滑落のスピードが凄かったのだと思う。ザックとピッケルがばらばらに落ち、サックの中身も散乱していたので、恐らく、何かの準備をしていたときに、何か、不測の事態が起こったのかもしれない。1人が落ち、もう1人が巻き込まれたようだ。ザイテングラートの横、あずき沢を600m滑落、二人とも亡くなった。50代の男女だそうだ。
5日は、5時に涸沢ヒュッテを出発、奥穂高岳を目指した。昨日来の雨は予報通りあがり、天気は上々、これからどんどん良くなると思われる。涸沢カールはまだ一面雪に覆われ、直登が可能だ。早朝、2,300mの涸沢ヒュッテ近辺は、雪も適度に締り、アイゼンがよく効く。ザイテングラートを右手に高度を上げると、斜度もきつく、雪も固く締り、相当ビビる。コルまでもう少し、という、こんなときに事故は起きた。
昨夜は、ヒュッテで相当長い時間を過ごした。「岳」を3巻も読んだ。目の前で起こった出来事は、あのコミックの世界そのままだ。滑落し、外傷性ショック死。目の前を落ちていった人も、人形のように、手と足をばらばらに振りながら、いった。すでに意識はなかったのだろう。この時間、カール全体が、固く締まっていた。3時間後、同じ斜面は、春のザラメ雪に戻っていた。この状態では、あんな事故はありえない。ほんの限られた時間帯、一瞬のミスが、大事故になるのだ。
事故を目撃した直後、正直、ショックで、ただでさえビビっていたわけだから、もう、このまま下山したかった。でも、下るのもまた怖いので、とりあえずコル目指して登ることにした。何しろ安全な場所に行きたかった。コルには、穂高岳山荘がある。
ラク!今度はストックが降ってきた!やはり2人が滑落したあたりに3人見える。後でわかった話だが、この3人も相当危ない状況だったようだ。アイゼン、ピッケル無しでこの状況を降りようとしていた、韓国人グループ。何事もなく、本当に良かった。岐阜県警のレスキューの皆さんのおかげと思う。
コルまで登ると一気に快晴となった。下り斜面は陽が当たれば緩む。その間、当初目的の奥穂高岳に向かう。梯子と鎖で最初の直登を登ると固い雪の急斜面が現れる。今日のショッキングな状況ではもう、無理!あえなく撤退。雪の全く付いていない反対側の涸沢岳に登って心を癒すことに。そこからは360度の大パノラマが!天気最高、眺望最高の山行だった。下山も雪は緩み、危険を感じることもなく、むしろあんなことが起こったということ自体信じられない状態で、今、こうしてブログを書いている。しかし、今日を境に、何かが変わった。山は怖い。これからは、もっとビビって山に向かうことになるのだろう。でも、それでよいのだ!
朝の穂高連峰。左の白いコルが、今回の舞台。この左手が穂高連峰の主峰、奥穂高岳(3,190m)、コルをはさんで右が涸沢岳(3,110m)さらに右のキレットをはさんで北穂高岳(3,106m)。コルの右下の細長い岩稜がザイテングラート。この右横を滑落していった。
涸沢から見た北穂高岳。下には色とりどりのテント村が開業中。この右には涸沢山荘もあり、朝7時と言えば、多くの人が、テントやテラスから、雄大な穂高連峰を眺めていたことだろう。その、多くの人たちが見ている場所で、まさに事故は起こった。
コルから見下ろすとこうなる。すぐに急斜面となり、事故現場は見えない。おそらく、下山しようと急斜面まで行ったところで、固い斜面と強い風に、何らかの対応をしようとしたのではないか。
登頂を断念した(ビビった)奥穂高岳山頂部。反対の涸沢岳より。表情もビビっている。
今回もCobb氏に同行をお願いした。槍ヶ岳、圧巻の雄姿。
奥穂高と背後のジャンダルム(3,163m)。
北穂高。ここへの縦走は困難を極める。
標高2,983mの穂高岳山荘。4月末からの営業再開、岐阜県警の皆さんが常駐している。穂高連峰は難易度が高く、遭難も頻発する。
この斜面、斜度感は伝わらないが、ここを流れた。
放心状態の図。
最後は、上高地の明神池ほとりの、穂高神社奥宮に参拝。北アルプス一帯をつかさどる神宮で、奥穂高山頂にも御宮がある。ここでこれからの安全登山を祈願して、今回の活動は終了。気を取り直してまた行くぞ!!次回をお楽しみに。
よかったが、紙一重だよな。
同行者が経験豊富なようなので、ホッ・・・
二重否定は肯定を表す・・になっていました。
雪崩れも一生に一度も遭遇はしたくないはないです。
↓
雪崩れも一生に一度も遭遇はしたくはないです。
です。
キッパリ
観たのですね。
雪崩れも一生に一度も遭遇はしたくないはないです。
先日、札幌の登山愛好家の女性がエヴェレストで野営中、例のネパール大地震
に見舞われ雪崩に飲み込まれたのに、九死に一生を得て帰国、道新に記事が
出ておりました。
一緒の男性は死亡したようです。
生死の境、幸不幸の境、
その一瞬の境を目の当たりにした貴重な一日でしたね。
次回の山も楽しみにしています。