竹とんぼ

家族のエールに励まされて投句や句会での結果に一喜一憂
自得の100句が生涯目標です

すかすかな原爆ドーム秋の風 栗林浩

2019-09-01 | 今日の季語


すかすかな原爆ドーム秋の風 栗林浩

八月の思い季節がゆくと秋の気配が濃厚になる
広島の慰霊の式典のあの賑わいも
かききえてくる

原爆ドームの剥き出しの鉄骨の丸屋根は
相変わらず痛々しい面持ちだが
そこを秋風が吹き抜けてゆく

措辞にある「すかすか」は
景にも人心のうつろいにをも現していて共感する
作者の深い哀しみ、憤り、諦念をも感じさせている
(小林たけし)


【秋の風】 あきのかぜ
◇「秋風」 ◇「秋風」(しゅうふう) ◇「素風」(そふう) ◇「金風」 ◇「鳩吹く風」 ◇「秋の初風」
初秋から晩秋までの秋風一般をいう。日々冷気を加えてゆく秋風は、身に染みてそこはかとなく哀れを誘うとして、古来詩歌に詠われた。色に配して白(無色)、すなわち「素風」、五行(木火土金水)に配して「金風」ともいう。秋の到来を告げる涼風を「秋の初風」といい、作句例では秋の初風を指して秋風ということも多い。


ああと言ふもあつと思ふも秋の風 小檜山繁子
あきかぜのふきぬけゆくや人の中 久保田万太郎
あきかぜの明日は豆の葉を吹かん 髙野公一
あきのかぜ水筒になり天に鳴り 片山桃史
あとがきは秋風に埋めてもらう 諏訪洋子
いちまいの小皿の上の秋のかぜ 津沢マサ子
いもうとの乳房ふたつの秋の風 久保純夫
お先にどうぞたちまちに秋風す 松澤雅世
されど空の藍に病みけり秋の風 大井恒行
しんがりは秋風となる葬の列 鍬守裕子