かたまりて通る霧あり霧の中 高野素十
白馬岳から唐松岳へ縦走中、濃い霧に出会ったことがある。標も岩も何も見えない中、冷たい霧に濡れながらひたすら歩く。途中、別の濃い霧がやって来て我が身を通過していった。足元には、ピンクの白山風露が雫をためて咲いていた。(近藤英子)
秋の深まる朝まだき
ウオーキングの道すがら一瞬、霧の塊にすれ違う
霧がほどける間際の一瞬のことだと思う
少し前までは全体が霧の中だったに相違ない (小林たけし)
例句 作者
「英霊」はなぜ十五歳いまも霧 松田ひろむ
あけぼのの霧がはなるる鷺の丈 齊藤泥雪
あと少し泣いたら霧を纏えるか 近恵
いつか山霧姉は姉のままで老い 岸本マチ子
うつぼぐさ川霧さりしあかるさに 川島彷徨子
きりぎしや朝霧はやまとことばめき 児玉悦子
くちびるに夜霧を吸へりあまかりき 三橋鷹女
げじげじや霧にゆらぎてランプの灯 志摩芳次郎
こんなに霧深宿舎はまるで白衣を着て 金子皆子