竹とんぼ

家族のエールに励まされて投句や句会での結果に一喜一憂
自得の100句が生涯目標です

くつがへる檻に草伸ぶ大夏野 小田垣朱実

2020-05-28 | 今日の季語


くつがへる檻に草伸ぶ大夏野 小田垣朱実

おそらくは実景だろう
富士の裾野を一年かけて一周したことがある
そのおりに目にしたジビエ料理の店の裏庭に
鹿の頭部が枝にいくつも立てかけられているのを見た
そうした罠の類の檻ではないか
そのひっくりかえった檻の中に草がうっそうと伸びている
おそらく作者はしばらく時間を止めたことだろう
(小林たけし)


【夏野】 なつの
◇「卯月野」(うづきの) ◇「五月野」(さつきの) ◇「青野」(あおの)
夏草の生い茂る野原。緑濃く、強い日差しを受けた草の茂みからは草いきれが立つ。「卯月野」は陰暦4月の新緑の頃の野、「五月野」は陰暦5月、梅雨の頃の野である。

例句 作者

ぞろぞろと僧の頭蓋(はち)ゆく青高野 星野明世
たてがみの濡れては乾く夏野かな 柿沼茂
たてよこに富士伸びてゐる夏野かな 桂信子
でんでらの夏野の草か爺やばば 若林つる子
ともがらと歩む夏野を幸とせむ 大西岩夫
ねころんだ夏野から知恵熱 吉浜青湖
やわらかにあたらしき罠夏野原 佃悦夫
わつと夏野がありて大仏殿ありぬ 針呆介

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