田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『家族』

2024-10-13 19:48:04 | 映画いろいろ

『家族』(70)(1974.12.31.NHK)

 風見精一(井川比佐志)と妻の民子(倍賞千恵子)は、父の源蔵(笠智衆)と2人の子どもたちと共に、長崎県の伊王島から、開拓のために北海道標津郡中標津町へ移住することになった。

 一家の旅の姿をオールロケーションでドキュメンタリー風に撮った山田洋次監督の異色ロードムービー。公害が問題化する北九州工業地帯、日本万国博覧会開催中の大阪、東京の上野公園、北海道の開拓村など、一家の道中に当時の日本の社会状況が浮かび上がる。

 途中、夫妻は、広島県福山市で、源蔵を引き取るはずだった弟(前田吟)と別れ、東京で赤ん坊の長女を失い、たどり着いた中標津で源蔵を失う。だが、やがて中標津にも春が訪れ、一家にとって初めての牛が生まれ、民子の胎内にも、新しい命が宿っていた。悲劇が続くが、最後は笑顔と希望で終わるところが山田洋次らしい。

 何とも切なくなる高度経済成長の裏側という点では、この映画の姉妹編とも呼ぶべき、瀬戸内海の小島で石の運搬をしている一家が高度経済成長の波に追われ、島を出て新天地で暮らすことを決断するまでを描いた『故郷」(72)(1973.12.29.NHK)の方が強く描かれている。

 主人公夫婦の石崎精一(井川比佐志))と民子(倍賞千恵子)のこんな会話が象徴的だ。

 民子「何で朝から晩まで働いて、何も悪いこともせんのに、何でこんないい所を出ていかなきゃならんのだろうね」

 精一「食っていくためさ」「みんな、時代の流れとか、大きいものとか言っているが、大きいものって何だ。何でわしが好きな海でこの仕事をするのをやめなきゃならないんじゃ」

 倍賞は、この『家族』に続いて『故郷』と『遙かなる山の呼び声』(80)でも、それぞれ別人の“民子”を演じたことから、これらを総称して、山田洋次の「民子三部作」と呼ばれる。

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『太陽を盗んだ男』

2024-10-13 14:04:00 | 映画いろいろ

『太陽を盗んだ男』(79)(1982.11.16.大井武蔵野館.併映は『魔界転生』)

 いかにも好評を得た作品らしい面白さがあったのだが、核という問題を考えた場合には少々疑問が残った。プルトニウムさえ手に入れば、ああも簡単に核爆弾が作れてしまうものなのか。だとすれば、それは至極恐ろしいことではあるのだが…。

  この核爆弾を製造した中学校の理科教師・城戸誠(沢田研二好演)が、それを盾に国家権力を向こうに回して大活躍する。それは見ていて痛快な面もあるが、単に爆弾をもて遊んでいるだけにも見える。

 ここで唯一の被爆国日本云々を言うつもりはないが、この映画から核の恐ろしさを感じることはできない。むしろ核爆弾を巡るアクション映画としての魅力の方が強い。菅原文太の不死身の警部役との対決も面白い。

 監督の長谷川和彦と脚本のレナード・シュレイダーは、国家に対する個人の力を示すために、あえて一個人に核を保有させるという突拍子もないことを考えたのだろうが、この主人公に核を持たせてみても、どうしていいのか分からない。せいぜいナイターの完全中継やローリング・ストーンズの日本公演を実現させることや、国家権力を困惑させる程度なのだ。

 それは、結局のところ、個人が持つ力の限界や、現代社会における居場所のない者の孤独を映し出す方向に向いてしまったようだ。

 冒頭に、伊藤雄之助演じる国家に対して倒錯した思いを持つバスジャック犯を登場させたものだから、もっとアナーキーな話が展開していくのかと期待したのだが、どうやらその点ではいささか裏切られたような気がする。

 ただ、こうした核や思想の問題を差し引いてみれば、映画の作り方のうまさは認めざるを得ない。ドキドキワクワクしながら見ていた自分がいたのだから。何だかんだと理屈を言っていないで素直に面白かったと認めてしまえばいいものを…。

【今の一言】この映画の奥には、胎内被曝者でもある長谷川和彦監督の思いがあることを後年になって知った。その長谷川和彦は、この映画以降、映画を撮っていない。

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『侍タイムスリッパー』池袋シネマロサ

2024-10-09 07:29:47 | 映画いろいろ

 NHKのニュースで、『侍タイムスリッパー』のヒットと最初に上映した池袋シネマロサに関する特集が流れた。

 試写を見た時は数えるほどしか観客がおらず、その割に出来がよかったので応援すると決め、コラムを書いたり安田淳一監督にインタビューもしたので、このヒットはうれしい。

 先日、西部劇同好会「ウエスタン・ユニオン」の例会で、この映画と『シビル・ウォー アメリカ最後の日』を紹介したばかりだった。


【インタビュー】『侍タイムスリッパー』安田淳一監督
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/b269451fd2135a2c294456321b74ac23

『週末映画コラム』『侍タイムスリッパー』『フォールガイ』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/5a47bdd15229839c17806328177c6c3b

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マギー・スミスの出演映画 その3

2024-09-29 10:56:27 | 映画いろいろ

『ナニー・マクフィーと空飛ぶ子ブタ』(10)(2011.6.15.東宝東和試写室)

 イギリスの児童小説の映画化で不思議な力を持った乳母が主人公と聞けば、『メリーポピンズ』(64)を思い出す。ところがこの映画のエマ・トンプソン演じる乳母のマクフィーは、魔女を思わせるメークと衣装で登場して意表を突く(一作目は未見なのでこれが初対面なのだ)。

 確かに、イギリスの児童小説は、チャールズ・ディケンズの「大いなる遺産」「オリヴァー・ツイスト」を始め、ダークでブラックなものが多いし、『メリーポピンズ』も決して明るい話ではなかった。

 この映画の舞台は戦中だがわざと時代を特定できないように描いているし、牧歌的な農場の子どもたちと都会の子どもとの対立も映し出す。子どもたちが改心するにつれてマクフィーが段々きれいになっていくところがご愛嬌。製作・脚本もエマ・トンプソンだからこれは当然の結果か。

 女性監督のスザンナ・ホワイト、母親役のマギー・ギレンホールや大ベテランのマギー・スミスが大活躍と、全体的に男性の影が薄い気がするが、この映画は父親の不在や子どもたちの自立を描いた一種の寓話なのだから、これはこれでいいのかもしれない。良くも悪くもハリウッド製のファンタジーとは違う味わいがある。


『カルテット! 人生のオペラハウス』(12)

https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/39402
https://tvfan.kyodo.co.jp/news/36937


『ミス・シェパードをお手本に』(15)

https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/9f156b66b57255d8c6a7f8e0417c5ace

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マギー・スミスの出演映画 その2

2024-09-29 10:29:58 | 映画いろいろ

『フック』(91)(1992.8.10.日本劇場)

マギー・スミスはウェンディ・ダーリング役

 ピーターパン・シンドロームと揶揄され続けてきたスピルバーグがついに撮った本物のピーターパン映画。だが志向的には甚だピーターパン的であった『未知との遭遇』(77)『E.T.』(82)を超えてはいなかったし、アクションの面白さから見ても「インディ・ジョーンズ」シリーズには及ばない。

 贔屓目に見ても、スピルバーグの力量低下やアンブリンプロ製作映画のマンネリ化は否めない。こうなると、スピルバーグもジョージ・ルーカスのように、プロダクションを作った時点で監督ではなくプロデュース側に回った方がよかったのかもしれないと思えてくる。

 なぜなら、彼はもはや若いうちに自らの映画的な夢は達成してしまったのだから、あとは何を撮っても、かつての栄光と比較されてしまうからだ。

 もちろん、ルーカスとは違い監督にこだわり続けるスピルバーグの方に好感は持てるのだが、そこに何らかの新味がなければ観客は離れていくだろう。今日のように、彼の映画をガラガラの客席で見るのはつらいものがあった。

 とはいえ、百歩譲ってこの映画を弁護すれば、この、大人になってしまい、夢と現実のはざまで悩むピーターパンこそ、スピルバーグ自身の投影なのではないか。そしてこの直球ではない、変化球ピーターパンこそ、彼の映画をピーターパン・シンドロームと揶揄する世評に対する彼流の答えなのではないかという気もする。

 この映画が彼のピーターパンに対するエンディングであるならば、それを乗り越えたところで、新たな展開に移行する可能性も大いにあるのだ。

【今の一言】今から思えば、この頃のスピルバーグはスランプ期だったと思うが、それを見事に乗り越えて、いまだに現役の監督であり続けているのだから感服する。


『天使にラブ・ソングを…』(92) 修道院長

https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/e18d403aa1902cfed9b1d5bce3adef04


『天使にラブ・ソングを2』(93)

https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/4de5ce0f5651871f819f8bc26799cbb5

https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/89b957d241687f1fdcd7d5e3cb53414e


『ハリー・ポッターと賢者の石』(01) ミネルバ・マクゴナガル先生
『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』(07) 

https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/a1e81f2ae9b62b1f03412be2b9449434

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マギー・スミスの出演映画 その1

2024-09-29 09:23:15 | 映画いろいろ

 

『予期せぬ出来事』(63)

https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/0c88113285fbe0bd58b9650bc4bc6524


『名探偵登場』(76)

https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/933d6a655b34bead1a6bd66a35486a30


『ナイル殺人事件』(78)

https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/aee0aa3e6a11c6a73a06ba1b052da8f6


『地中海殺人事件』(82)

https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/cffbb16ecac149356749bd2d2dba7f8f


 

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ジェームズ・アール・ジョーンズの出演映画 その2

2024-09-11 08:20:17 | 映画いろいろ

『レッド・オクトーバーを追え!』(90)

https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/d5eb5819e196e3322230e09b112cb417


『パトリオット・ゲーム』(92)

https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/969c66c86a0bdc0f5eace859f9ba1b81


『スニーカーズ』(92)

https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/953c3304c071471ae8eb2a1ab0e8dc5a


『サンドロット/僕らがいた夏』(93)

https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/76d2b2c85a951d4ccf9946f06dc51c85


『ライオン・キング』(94)シンバ

https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/cf676f197e33993775e9d968a714f7db


『今そこにある危機』(94)

https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/eb6186d798aaeadee8b6f695ab94ede7

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ジェームズ・アール・ジョーンズの出演映画 その1

2024-09-11 08:09:22 | 映画いろいろ

『ボクサー』(70)ジャック・ジョンソン

https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/cd15cbe58e00e3fc234cba354742dfba


『スター・ウォーズ』(77)ダース・ベイダー

https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/70eb53e24bae8bf50d2c6b94d56ca746
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/a8c92c57c2e2deeb97330766d8abfd5f


『エクソシスト2』(77)(1977.8.7.松竹セントラル)

 前作に比べると数段落ちるが、これは別物として見た。神父は最後に死ぬことになっているようだ。ラストが不明確なのは3製作のためか。音響効果には予想外に驚かされた。


「ルーツ2 わが心の大地アフリカ」(79)(1979.10.7.日曜洋画劇場アレックス・ヘイリー


 空港でのサイモン(ドリアン・ヘイウッド)とアレックス(ジェームズ・アール・ジョーンズ)親子の別れのシーン、アフリカで語り部からクンタ・キンテの名を聞いた時のジョーンズの表情、ラストに流れる一家にまつわる回想シーン…。ここまで見続けてきてよかったと実感。


『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』(80)ダース・ベイダー
『コナン・ザ・グレート』(82)


『スター・ウォーズ/ジェダイの復讐』(83)ダース・ベイダー

https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/70eb53e24bae8bf50d2c6b94d56ca746


『友よ、風に抱かれて』(87)

https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/6da85626354ab5495698e663a537ea70


『フィールド・オブ・ドリームス』(89)テレンス・マン

https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/14ca2cc584bf1b56a6168081f39d5d34

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『ビートルジュース』

2024-08-24 00:11:55 | 映画いろいろ

 35年後の続編『ビートルジュース ビートルジュース』が、9月27日から公開される。

『ビートルジュース』(88)(1994.1.16.WOWOW)

 ある日突然死んでしまった新婚カップル(アレック・ボールドウィン、ジーナ・デイビス)。立派な幽霊になるために修行中の2人が、自分たちの住んでいた家に引っ越してきた変人一家(ジェフリー・ジョーンズ、キャスリン・オハラ、ウィノナ・ライダー)を追い出そうと、霊界の用心棒”ビートルジュース”(マイケル・キートン)を呼び出した。しかしこの男、霊界一のトラブル・メーカーだったからさあ大変…。

 ティム・バートン監督独特の郊外を舞台にしたホラーコメディだが、例えば、ジョー・ダンテが描く同種の世界を陽とするなら、バートンの世界は陰、つまりよりダークサイド寄りで死のにおいに満ち、どこか冷めた悲しさを感じさせ、マニアックでもある。 もっとも、デビッド・クローネンバーグに比べれば、バートンの方が明るいのか。まあこうした比べっこはあまり意味がないのだけれど…。

 とはいえ、先頃亡くなったテレビ版「バットマン」でジョーカーを演じたシーザー・ロメロが、バートン版の『バットマン』(89)について「あんなに暗いバットマンはバットマンじゃない」と言っていたらしいから、彼の映画に暗さを感じるのは自分だけではないようだ。

 ただ、バートンがもし噂通りに『ゴジラ』を撮ったら、その暗さが逆に生きてオリジナルに近いものを撮るかもしれないと思わせるような不思議な魅力があることも否定できない。

 ところで、「ホーム・アローン」2部作でのキャスリン・オハラには、ハートウォームな母親役の奥に潜む毒気のようなを感じたのだが、順番通りにこの映画でのエキセントリックな演技を先に見ていたら何の不思議もなかったのだ。

 今回は運悪く吹き替え版で見たのだが、何とマイケル・キートンの声を西川のりおが宛てていた。結構うるさいと思ったが、実際マイケル・キートンがスラングをまくしたてても、その意味は字幕を通してでしか分からないのだから、時には吹き替えも必要なのかなと考えさせられた。


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『ちはやふる-結び-』『チア☆ダン~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~』

2024-08-20 23:12:20 | 映画いろいろ

 「マツコの知らない世界」で「かるた甲子園の世界」と「高校生マーチングバンドの世界」を取り上げていた。

 映画としては、前者関連は番組内でも流れた「ちはやふる」シリーズがあり、後者関連はマーチングバンドではないが『チア☆ダン~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~』(17)がある。どちらも主演は広瀬すずだ。

『ちはやふる-結び-』(18)
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/51257172532256172fb6d83f6e7c0e3f

『チア☆ダン~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/e43a1c9bdf172ffd545d3123d9283fec

 

 

 

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