「嘘も方便」は万国共通
1983年のスーダン内戦で親と家を失い、難民キャンプで育った若者たち。“ロストボーイ”と呼ばれた彼らのアメリカ移住の実話を基に映画化。
前半は、子どもたちが何と1600キロも先の難民キャンプに徒歩でたどり着き、そこで成長していく様子をハードな描写で見せる。年端もいかない子どもたちが戦争の犠牲になる姿を見るのはとてもつらいが、作り手たちは、敢えてそれを見せることで後半との落差を強調したかったのだろう。
一転、中盤から後半は、アメリカ移住後の彼らと職業紹介所の職員キャリー(リース・ウィザースプーン)の交流を、カルチャーギャップなどを交えながら、時にコミカルにほのぼのとしたタッチで描いていく。だが同時に、受け入れ側の適当さ、差別、異国で働くことの難しさ、誤解による仲違い…なども描き込み、アメリカとて決して“天国”ではないのだ、という現実の厳しさも知らしめる。
そしてタイトルの“グッド・ライ(善き嘘)”の意味が明かされるラスト(「嘘も方便」は万国共通)、という三段構えになっている。
アメリカ移住後は、類型的できれいごととして描いたきらいはあるが、作り手たちがロストボーイにそそぐ素直な愛情や優しい視点には好感が持てる。何より、こうした事実があった、そして今も続いているということを、映画を通じて知らせたことに意義があるのではないかと感じた。
移民たちがアメリカについて学ぶ場で、マーク・トゥエインの『ハックルベリー・フィンの冒険』が、“善き嘘”を象徴する物語として教材になっているところが興味深かった。