これは作為なのか衰えなのか
北野武監督作。元やくざの老人たちと若手詐欺集団との戦いをコミカルに描く。武お得意の老人をいじる小ネタを散りばめているが、例えば、スティーブ・マックィーンに憧れ、ピストル魔となったマック(品川徹)、ところが、今は手が震えて…というような、「こんな奴がいてさ。おかしいだろ」という与太話をつなげるだけで満足しているように見えた。漫才やテレビのトークならそれでもいいが、映画でこれをやられるとつらい。
俳優たちも徹底的にいじられる中尾彬、副将役の近藤正臣は健闘を見せるが、全体的にはテンポが悪くて締まりがなく、ギャグも空回りしてあまり笑えない。これは老人たちが主役だから作為的にそう描いたのか、それとも武の衰えや適当さを反映したものなのか。加えて、武はなぜここまでやくざの世界にこだわり続けるのだろうかという疑問も拭えない。
老人たちによる集団反抗劇としては、元気な老人たちが、右傾化する社会を捨てて独立国家を作ってしまうという、岡本喜八の寓話『近頃なぜかチャールストン』(81)の面白さを思い出すことができる。もとより、岡本喜八と武とでは喜劇映画に対する思いや映画の作り方が全く違うのだろうが。