硝子戸の外へ。

優しい世界になるようにと、のんびり書き綴っています。

恋物語 70

2021-07-13 20:36:17 | 日記
「あすかちゃん! 」

私の名前を呼んで、イヤホンを外すと、少し前かがみになってた背を伸ばして手を振る。
黒いマスクをつけてても、素敵な笑顔だって分かってしまう。
けど、制服とジャージ以外の彼女って観たことないな。

「ごめん。待った? 」

「私も、着いたところです。」

「日本語、またうまくなったんじゃない。私よりぜんぜんうまく話すじゃん。」

「ありがとうございます。努力のたまものですかね。」

「賜物って。私達だってそんな言葉使わないよ。日本人より日本人だわ。」.

「ありがとうございます。」

「それより、寒くない? あそこのサイゼ入ろうよ。驕るから。」

「そんな。悪いですよ。割り勘で、マックにしませんか? 」

「遠慮するなよ。私もソフィアにあえてうれしいんだからさ。」

「ホントですか! うれしい。」

「寒いから、行こう! 」

即決すると、駅前ビルの「サイゼ」へ向けて歩く。二人で会うときは先輩後輩というより、姉妹のようで、私の事を「あすかちゃん」と呼ぶ。そして、歩いているときは必ず左側にいて、私の腕に腕を絡ませてくる。
最初は戸惑ったけど、中2の時にフランスから移住してきたらしいし、フランスじゃそれが普通なんだろうから、まあいいかと思ってる。
けど、二人して長身で、一方はジャージにランニングシューズ、一方は黒いキャップを目深にかぶり、ミリタリージャケットとストレートのダメージデニムにコンバースのスニーカーという、まったく女子力を感じさせない女子が、腕を組んで街を歩いていると目立ってしまうらしく、いつも、二度見する人がいる。
まぁ、気にしないけど。