硝子戸の外へ。

優しい世界になるようにと、のんびり書き綴っています。

恋物語 71

2021-07-14 21:43:39 | 日記
「いらっしゃいませ。お二人ですか? 」

店員さんの愛想よい定型文にうなずく。午後三時という中途半端な時間だけあって、ほぼ貸し切り状態。私達にとっては都合がいい。
駅が見下ろせる窓際の席に移ると、向かい合わせに座り、帽子とジャケットを脱いで腰を下ろした。ソフィアはすぐにメニューを手に取ると、テーブルの中央に置いて開けた。

「ありがとう。じゃぁ、好きなもの頼んでいいよ。」

「どうしようかなぁ。今日はオフの日だから炭水化物はやめとこうかな。」

「炭水化物抜き? ソフィアは体脂肪率ってどれくらい? 」

「9くらいかな。」

「9! それなら気にしなくていいじゃん! 今日くらい食べなよ。」

「あすかちゃんがそう言うなら。」

「それでよろしい。」

「もし、体脂肪増えたら、また、一緒に走ってくれますか? 」

「いや。それは別だな。」

ソフィアが身体を逸らして笑う。筋の通った鼻、くっきりとした目。きめの細かい白い肌。帽子で変に癖がついた黒い短髪。時々、私なんかと過ごしてて時間の無駄にはならないのかとも思う。

「じゃあ、セルシッチャのセルフサンドイッチと、ドリンクバー」

「控えめじゃん! 」

「だって、一緒に走ってくれないんでしょ。」

ちょっと拗ねながら言う。ほんと妹みたいだ。

「わかった。じゃあ私は、アンチョビとルーコラのビザ。Wチーズと、ドリンクバー。」

メニューの番号を注文票に書き込む。その間にソフィアが呼び出しボタンを押す。
その動作は、初めから決まっていたというくらいに、ごく自然に。