硝子戸の外へ。

優しい世界になるようにと、のんびり書き綴っています。

恋物語 73

2021-07-16 21:06:03 | 日記
外を見ると、雲の切れ間からわずかにのぞいた太陽は西に大きく傾いて、駅の向こうのビルの谷間に沈んでゆこうとしていた。
駅前のスクランブル交差点で信号待ちをしている沢山の人達のほとんどが携帯をのぞき込んでいる。
当たり前の風景だけど、あの小さな画面の中に、夢中になれる事や、楽しい事、心の底から信じられるものって本当にあるのかなって時々思う。

「あすかちゃん! 」

「あっ、ああっ。ごめん。なんか、感傷的になってた。」

「もうっ! 今日は私の悩みを聞いてくれるんでしょ。」

「ごめん。なんかホッとしちゃってさ。じゃあ、話を聞こうか。」

ソフィアの悩みの多くは、陸上部での事だ。
彼女は間違いなく足が速い。だから、フランスで教わったり、自分が考えたりしたメニューでトレーニングをしてゆきたいと思っているけど、ライバル意識の強い人が、しきたりを重んじて、それを許さない。そして、真面目に取り組まないチャラい男子の部長が、どうやらソフィアの事を狙っていて、それが、嫌なのだという。
去年、ガン無視しつづけた先輩が卒業して、ホッとしていたのに、そういう男がまた現れたのだ。
気持を許さない人に好かれるのって、ストレスでしかない。
のぼせた男は、それを分かってくれない。迷惑でしかないのに、推していれば、いつか振り向いてくれるって思い続けてる。
だから、そう言う相手には、受け入れるか、逃げてしまうかの二択しかないし、どちらを選んでもストレスがたまるだけだから困る。
もし、彼女がスパイアクションのヒロインなら、瞬殺される立場なのにな。