「そんなことありません! あすかちゃんはバカじゃありません! 私が入部したての頃、「は」と「ん」が上手く発音できない事や、変な日本語使っても笑わなかったのはあすかちゃんだけ。それを、優しく教えてくれたのもあすかちゃんだけ。フランスで教わった練習メニューにも耳を傾けて、一緒にトレーニングしてくれたのはあすかちゃんだけ。こうやって、会って悩み聞いてくれるのもあすかちゃんだけ。私は変わらず尊敬しているのです。」
ソフィアの気持が嬉しかった。本当にいい後輩を持った。
「ありがとう。ソフィア。」
帽子癖がついたベリーショートの髪に手を伸ばし、よしよしと頭をなでる。
ソフィアは意外にも真っ赤な顔をして、恥ずかしそうに下を向いた。
「あすかちゃん。照れますよ。でも、うれしいな。」
私達は見つめ合い、小さく笑った。
サンドウィッチとピザを平らげて、三杯目のドリンクを飲み干した頃、時計は7時になろうとしていた。貸し切り状態だったお店には、沢山のお客さんがいて、食事を楽しんでいた。
私達はお酒を飲まないから緊急事態宣言は余り関係ないけど、ソフィアは門限のある人だ。
「ヤベッ、喋りすぎちゃったね。門限何時だっけ? 」
「7時です。でも今日は先輩と会うって言ってきたから少し遅れても大丈夫です。」
「ダメだよ。ソフィアの家は、うちと違って親が心配するから。」
「えっ、でも、せっかく盛り上がっているのに、もうちょっとだけいいじゃないですかぁ。」
「だめ。私、こう見えても、こういうことはきちんとしてるの。」
そう言うと、すごく残念そうに「え~っ」といって駄々をこねた。本当に妹だな。