今回の北見・網走へ来た目的の1つは、
網走市にあるお鮨屋さんに行くことでした。
そのお鮨屋さんを知ったのは、
北海道の各地方を取材した雑誌だったと思いますが、
人口が少ない網走(人口33000人くらい)で、
しかも高齢化が進んでいる定型的な地方都市で、
成立している高級店、という部分に興味があったのです。
網走より大きい北見市(人口11万くらい)でも、
高級鮨店は現状、無いのですが。
その3分の1以下の市場規模で客単価1万5千円以上で
商売が成立している秘訣はどこにあるのか?
個人的に非常に興味がありました。
時間通りに目的のお鮨屋さんに着くと、
大将とアルバイトの女性スタッフの2名がおられました。
私たちが一番乗りだったため、
大将といろいろとお話させていただくことができました。
大将、大学卒業後、イギリスやオーストラリアなどで暮らしていて、
日本に帰ってくる予定では無かったそうなのですが、
ちょっと魚の勉強をしようと、海外でお世話になった方が
たまたま網走の方で、その方の紹介で網走に来たそうです。
ほんの数か月、魚の勉強をしてから
ロンドンに戻ろうと思っていたそうですが、
そこからずっと網走だそう。
そして会話しながらおまかせがスタートし、
しっかりとコミュニケーションを取りながら、
タイミング良く料理を出していただきました。
気づけば、店内は満席に。
カウンター8席の鮨屋さんですが、
私たちの隣は結婚記念日のカップルで
おそらくはお医者さんのご夫婦。
その横は東京農業大学網走キャンパスの
陸上部のコーチと陸上関係の方でしょう、
会話の内容からすると・・・。
そして最も離れたところにお座りの方は、
おそらく同伴のカップルでした。
お医者さんと陸上部コーチはリピーターのようでした。
おそらくこのお鮨屋さんのメインの顧客層は、
会社経営者・医療系・公務員系の方たちでしょう。
ただ人口3万強だから、その層の絶対数が少ない。
ゆえに固定費を抑えるべく、
仕込みから調理までワンオペで回るだけの客席数にして、
ホール兼洗い物をバイトさんにやっていただく。
そしてこの味と接客力は、網走では抜きんでているので、
固定のお客様がちゃんとつく。
人口が少ないエリアで、
単価を下げて客数を狙うのではなく、
少ない客数で利益が出るように経営されているのだと思いました。
ところが、お料理を出していただいている途中で、
大将が名刺を出してご挨拶をして下さったのですが、
何とこのお店以外に鮨バーを2店、経営されているではありませんか!
しかも隣の方との会話の中で、
隣町美幌の回転鮨屋さんの経営も引き継いでされるようで、
実はこの大将、超やり手の経営者だったのです。
(もちろん、料理人さんとしても素晴らしいレベルでした)
石川県小松市のアパレル店兼カフェもそうですが、
優秀な経営者は、人口が減少していようが、
高齢化が進もうが、地方都市であろうが、
その中でしっかりとファンをつくり、利益を出されているのです。
経営がうまくいくかうまくいかないか?
それは外部環境でも市場でもなく、
経営者のセンスと能力、そして行動力次第なのだ、
ということを改めて感じました。
網走のこのお鮨屋さん、定期的に通わせていただこうと思います。