長屋茶房・天真庵

「押上」にある築60年の長屋を改装して
「長屋茶房・天真庵」を建築。
一階がカフェ、2階がギャラリー。

金盃銀台を生ける。

2011-01-30 08:06:29 | Weblog
今は昔になったけど、金さん銀さんという、元気な
双子のおばあちゃんが話題になったことがある。

昨日は、そんな花を生けた。
金盃銀台(きんせんぎんだい)。水仙の別名だ。
白い台に、銀の盃を載せたような花、いいえて妙だ。
まず、青竹を削って、「くばり」をつくる。これも「土台」。
人生も同じだけど、土台が肝要なのだ。無心に削る、ときどき
雑念も削る、へたすると指も削る・・
次に水仙で、真(しん)を選ぶ。水仙の葉はよじれている。
雪の季節に咲く花なので、溶けた水が流れやすいように、ねじれている。
天地自然の神さまは、こんな小さな命にも、ちゃんとめくばりをしているのだ。
その水仙のはかまを、手でもみながら、花の幹をまず抜き、4枚の葉をぬく。
そして寸胴の高さの1・5倍くらいの高さに、長いほうの葉の長いほうの葉、
つまり一番長い葉を、「真」にする。つまり、まっつぐ立てる。心が
まがっていたら、うまくないように、真名にある「真」は、心(しん)でも
ある。このあたりの理屈が、自然と身につくと人生がおもしろいし、酒が
一段と美味くなる。

もう一本の水仙も同じよいうに、袴をとるところかやる。これはもったいないけど、
バランスとして、花は捨て、つぼみだけを選ぶ。正月に飾りや、餅の下に敷く
植物のことを、「ゆずりは」という。新旧の葉が、順番に育ったり枯れたり
するので、その縁起から命名された。同じように、一方が花が咲いていたら、
片一方は、つぼみ、というのが、いい。胡蝶蘭みたいなでしゃばりな女が
二本も三本もあると、かしましくていけない。そんな当たり前の道理、これも
天地自然の理。

二本の水仙を寸胴に生け終えた。亀田窮楽の書の横に置いた。
酒好きで一生を清貧にいきた書家だったけど、同じくお茶三昧で
一生を茶に生きた売茶翁(ばいさおう)を助けた人だ。
手元の金盃がきたので、きっと喜んでおられよう。

今日の「エリカ庵」は、風水的にいっても、そんなにいい空間で
やる。土台をしっかりつくって、金の盃で、美酒を飲むような感覚
を楽しみたいと思う。

お花の先生は原田耕三さん。その先生が故・岡田幸三さん。
日本人の大切にしてきた魂を、命がけで伝承してきたふたりの「こうぞう」さん。


2006年、初めて天真庵の建物の発見した時の写真。
自動販売機が6台並んでいた。