腕時計修理専門店・トゥールビヨン店主のブログです
腕時計の修理の詳細や腕時計のトリビア、店主の個人的な趣味の話などを気の向くままに書いております。
 



昨日、修理品の仕上がりを引き取りに来られたお客様とちょっとした口論(?)になりました。
(口論だったら喧嘩になるが、激論と言ったほうが妥当か)


お客様の時計はオメガのスピードマスター・プロフェッショナル。
手巻きのスピマスです。


お客様「今回のOHではパーツ交換はしなかったんですか?」

店主「消耗品のパッキンなどは交換しましたが、その他のパーツの交換は今回なかったですね」

お客様「他の人から聞いたんですが、一流ブランドの高級時計は定期的にOHしていたら、パーツの交換しなくても一生大丈夫って言ってましたけど、これも大丈夫ですか?」

店主「パーツの中には消耗するものもありますので、いくら高級品でも一生交換しないでも大丈夫なものはありませんよ」

お客様「じゃあ、よく雑誌とか時計屋さんで『この時計は一生ものです』って言うのはウソですか?」

店主「いや、ウソではないでしょう。例えば、このオメガの時計をキチンとメンテナンスされていたら、やがて息子さんにあげることもできますし、その息子さんが『これおじいちゃんが使ってたオメガ』と、お孫さんに受け継ぐこともできる。それって一生ものじゃないですかね?」

お客様「でもパーツを交換するということは一生ものと違いますよね」

店主「え?」

お客様「パーツ交換したら違うものになっちゃうでしょ?」


お客様の言われる“一生もの”の定義は、買ったときのままの状態を一生保つというもの。
それは毎日使っている機械製品(しかも精密機械)には厳しい条件です。


きちんと定期的にメンテナンスするのはもちろんのことですが、長年使用していると消耗してくるパーツが必ずあります。
歯車類、ゼンマイ、パッキン類など消耗品はたくさんあります。

消耗パーツを交換せずに一生使えるか?
難しいところですが、まず精度が落ちるでしょう。
更に使い続けるとやがて動かなくなる場合もあります。

一生使い続けるならば消耗パーツや不良パーツはキチンと交換して、ベストの状態を保つことが肝心です。


実際に時々
「おじいちゃんが使ってたらしい時計が引き出しから出てきたんですが、修理できますか?」と持って来れれるお客様がいらっしゃいます。

そういう時計って大概が何年(時には何十年)も放ったらかしで、偶然出てきたから持ってきた、みたいな時計が多いです。

機械物で一番ダメなのが放置プレイ
長期間動かさないのはよくありません。


お客様のスピードマスターはまぎれもない“一生もの”です。
大事に使い続けて下さいませ。
時計も喜びます。


ひとつのものと長い間付き合っていくのは難しい。
その秘訣の一つは“妥協”である。 ~腕時計修理専門店トゥールビヨン店主


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )