徳川吉宗さまの時代から昭和40年代までは、『燗つけ酒』が主流でした。
そう云う訳で、地酒を扱い始めた頃の田園では、酒の提供に若干の注意が必要でした。
当たり前みたいに冷酒を出すと ・・・
「 俺は、ヒヤ酒呑むごつ 落ちぶれちゃおらん 💢(怒)」
特に、意識タカめ系のお客さまが要注意でした。

当時の風潮では、同じ様にカストリ焼酎や甲類焼酎も、“店の格式”に拠っては
提供をためらっていた処もありました。
何故かと言うと、ヒヤ酒・粕取り・甲類焼酎などは、日雇い労働者が酔う為に
飲む物だとのイメージがあったのです。
一日の労苦を、手っ取り早く忘れる為のアルコール。
コレが、客の言う“落ちぶれた者”用の酒。
そんな急いで安酒を煽らんで良いとの、ホワイトカラーさんの矜恃が
燗付け酒ですね。
くだんの意識高いお客様に、もうひとつ用心するのがあります。
「 俺は二級酒呑むごつ、落ちぶれちゃーおらんばい 😠 」
日本の階級社会では、しょうがない事でしたが、安酒イメージの『二級酒』は
居場所が微妙。
ランキングを気にする日本人は、位(クライ)を重視する。
昔の列車の、一等車〜二等車の格付けが大きいように。
或いは、映画のエンドロールでの、人気役者の登場順には気を使います。
酒でも、特級酒〜一級酒〜二級酒の日本酒カーストにはピリピリもんです。
品格を尊ぶ人たちは、この差を重視しますから。

以前のブログにも書きましたが、田園カウンターでの例をもう一度。
或る日、損保のT田さんがお父上と一緒に来られました。
父上が、 「 俺には、剣菱の特級酒ばツケちくれ! 」 と。
この手の権威主義者が一番厄介ですね。
ヒゲ 「 あいにく内では、そのお酒は “手に入りません” 」 と、
やんわり申し上げました。
父上 「 そうだろう! (ニタリ顔😤 )
こん特級酒はドケ(何処)でんな、無かもんなぁ~! 」
よほど良い店でないと、置いてない事を息子にアピールします。
父上 「 ほんならマスター、(剣菱の)一級酒でよかたい 」

こうなると、ヒゲもしょうがない。
「 すみません、内の店には灘・伏見の酒はありません。 」
父上 「 何てや~💢 コギャン酒があって、剣菱が無かてや?
ほんなら、ナンバ飲ますっとや? 」
ヒゲ 「 先ずは、この二級酒を・・・ 」
父上 「 😟 😔 😲 😋 ・・・こ、こ、コルが二級酒てや!?
特級酒よか美味かじゃぁなかか~ 」
~~ 級別廃止(1992年)より少し前の昭和の景色でした。 ~~
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