フォークナーは、かったるい小説家である。かったるいけど、気になる作家、それがフォークナーである。
『響きと怒り』も、けっこうかったるい。もしこれから読もうという人がいたら、少し意気込んで読んでほしいと思います。結局、読み終わってから、もう一度読んでみようと思う作家なのです。じつはそれも、1回くらい読んでもよくわからないからです。
『アブサロム、アブサロム!』もそうでしたが、あらすじを楽しむ小説ではありません。あらすじをここで書いても、ほとんど意味がありません。人間をどのように捉えて描いているかという作品なのです。前にも書きましたが、20世紀文学の大きな流れとして「時間と意識」の捉え方があります。ジョイス、プルーストという巨大な流れを汲むフォークナーもまた「時間と意識」の捉え方に凝っています。(フォークナーの読み方 『アブサロム、アブサロム!』)
人間の意識の層を時間によってずらしたり、何層にも重ねたり、それはあたかも段違いになった平行棒ならぬ、段違いの層に折り重なった意識の石畳といえるでしょう。そのいくつもの意識の層を、読者に断りもなく、改行もせず行ったり来たり、あちこち渡り歩いたりするものですから、読むほうはたまったものじゃありません。「今のせりふは誰が言ったのだ?」と思うのはしょっちゅうです。ちょっと、フォークナーさん、それって反則じゃない?
ただ、分かりにくいなりに、話が進むので読んでいきます。人物の意識がたびたびフラッシュバックするのが分かります。現在から突如過去へ、過去から違う過去へ、この場所からあの場所へ、そしていつの間に現在へ、と同じセンテンスの中で、ぱっ、ぱっ、ぱっ、と光が点滅、反射するように時間と意識と空間が人物のせりふや描写と共に移り変わるのは今で言う映画的手法です。さすがフォークナーと言うべきところです(ちなみにノーベル賞作家です)。
確かに人間の意識は、フォークナーが捉えたような構造になっているかもしれません。これは、やはり20世紀哲学の存在論的な命題(サルトル)、現象学的方法としての課題(フッサール)、そして精神分析学的な解明(フロイト)でもありました。夢が映像化されるように(『睡眠中の夢が映像で見られる』)、人間の意識が映像化されると、この作品はもっとわかりやすくなるでしょう。
それにしても、『響きと怒り』という作品は、それぞれの意識の石畳に色分けがしてあったら(作者自身が望んでいました)、ずっと楽しめたと思うのに・・・、それが残念です。
『響きと怒り』も、けっこうかったるい。もしこれから読もうという人がいたら、少し意気込んで読んでほしいと思います。結局、読み終わってから、もう一度読んでみようと思う作家なのです。じつはそれも、1回くらい読んでもよくわからないからです。
『アブサロム、アブサロム!』もそうでしたが、あらすじを楽しむ小説ではありません。あらすじをここで書いても、ほとんど意味がありません。人間をどのように捉えて描いているかという作品なのです。前にも書きましたが、20世紀文学の大きな流れとして「時間と意識」の捉え方があります。ジョイス、プルーストという巨大な流れを汲むフォークナーもまた「時間と意識」の捉え方に凝っています。(フォークナーの読み方 『アブサロム、アブサロム!』)
人間の意識の層を時間によってずらしたり、何層にも重ねたり、それはあたかも段違いになった平行棒ならぬ、段違いの層に折り重なった意識の石畳といえるでしょう。そのいくつもの意識の層を、読者に断りもなく、改行もせず行ったり来たり、あちこち渡り歩いたりするものですから、読むほうはたまったものじゃありません。「今のせりふは誰が言ったのだ?」と思うのはしょっちゅうです。ちょっと、フォークナーさん、それって反則じゃない?
ただ、分かりにくいなりに、話が進むので読んでいきます。人物の意識がたびたびフラッシュバックするのが分かります。現在から突如過去へ、過去から違う過去へ、この場所からあの場所へ、そしていつの間に現在へ、と同じセンテンスの中で、ぱっ、ぱっ、ぱっ、と光が点滅、反射するように時間と意識と空間が人物のせりふや描写と共に移り変わるのは今で言う映画的手法です。さすがフォークナーと言うべきところです(ちなみにノーベル賞作家です)。
確かに人間の意識は、フォークナーが捉えたような構造になっているかもしれません。これは、やはり20世紀哲学の存在論的な命題(サルトル)、現象学的方法としての課題(フッサール)、そして精神分析学的な解明(フロイト)でもありました。夢が映像化されるように(『睡眠中の夢が映像で見られる』)、人間の意識が映像化されると、この作品はもっとわかりやすくなるでしょう。
それにしても、『響きと怒り』という作品は、それぞれの意識の石畳に色分けがしてあったら(作者自身が望んでいました)、ずっと楽しめたと思うのに・・・、それが残念です。