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FPと文学・エッセイ 〜是れ日々なり〜

ライフプラン、資産設計のほか、文学・社会・芸術・文化など気まぐれに日々、FPがつづるエッセイ。

若田光一さん ~ 宇宙飛行士のための単純で難しい資質

2009-03-26 21:51:29 | 政治・社会・歴史

宇宙飛行士 若田光一さんがスペースシャトル「ディスカバリー」で宇宙に飛び立ちました。宇宙ステーションに3ヵ月半、滞在します。

私などは、肉体的にもそうですが、精神的な負担はどうなのだろうかと素人ながら心配してしまいます。事実、宇宙に長期滞在して、精神的ストレスからうつ状態になってしまい、地球との連絡ボタンを切ってしまった宇宙飛行士もいるそうです。ジャンボ機程度の空間で、わずか数人だけの日常、しかも失敗が許されない過酷な任務。地上にいてもストレスで潰れそうなのに、今のところ若田さんは「毎日が楽しい」と報告しています。

自由度の大きさが精神的ストレスを救う

密閉空間で、人間がどれだけ精神的に耐えられるか ―。それは、自由度に大きく左右されます。私は比較的、狭くて密閉された空間に何時間いても平気なほうです。ただし、条件があります。その気になれば、いつでもその空間を自由に出入りできるということです。

日常の例では、朝、通勤の満員電車、突然の事故で停止してしまったという経験があると思います。私は数秒で心理的なパニック状態に陥りそうになります(実際は耐えますが)。身動きできない状態で、いつ動くのか、いつまで止まっているのか、さらにその放送(情報)すらないと、心理状態はかなり危なくなります(実際は耐えますが)。

いざとなれば、非常用コックでドアを開け、外に飛び出す究極的な自由度はありますが、そうそう、その自由を行使できません。自由度のない密閉空間は、閉塞空間となります。あのまま、数十分も社内放送がないと、乗客の何人かは明らかに半狂乱になるでしょう。

若田さんの場合、今回の宇宙滞在は密閉空間といえども、ステーション内は任務の制約内で自由に移動できる、NASAとは常時連絡が取れる、いつまでの滞在期間か決まっている、業務時間外は家族や友人とプライベートのメール通信ができる、任務にはルールがあっても全面的な裁量が与えられている、何より名誉かつ好きなことをやれる、などかなり自由度があるといえます。

宇宙飛行士の資質

先日、NHKで、日本人宇宙飛行士を選考する試験の模様をやっていました。千人近い候補者の中から最終選好に10人が選ばれました。ここからさらに、3人を選びます。応募者はいずれもその道のプロ、専門知識と高いレベルの経験を持つ人たちばかりです。3人が選ばれる基準はどこにあるのでしょうか。

優秀な技術と専門知識と経験、最終段階ではそうしたものは決め手になりません。それは全員が備えているからです。黙々と何時間も折鶴を折らされる忍耐力、急変時に短時間でロボットを改造するとっさの対応力、仲間を和ませるコミュニケーション力、プロジェクトが行き詰った時のリーダーシップ、などが隔離施設で試されていました。最後に選ばれるための資質は、結局、“自由を尊重した人間性”という単純なものです。単純であるけれど、もっとも難しく高い基準なのです。

宇宙飛行士となっても、このような高い資質を維持するための訓練が続くのだと思います。私たちが、密閉空間や閉塞空間の中、自由度が低い状況で精神的ストレスを感じるのとはかなり次元が違うのでしょう。