5番目に抜栓したイタリアワインは、シチリア “マンドラロッサ シラー”(Sicilia Mandorarossa Syrah)2012です。
2000円弱の価格帯、私にとっては、このクラスからワインの個性を醸し出してくれる、と思っています。写真では解りづらいですが、今回のシチリアのシラーは紫の反射をはっきりと確認は出来ません。おそらく、ブドウが完熟するためではないか、と考えています。それと、私には一般的に云われているスパイシーな香りを拾うことが出来ませんでした。
色調は透明感のある濃いめのルビー色。香りはプルーン、桑の実、サクランボと言いたいところだがフルーティーの一言、しかないかな。ほっくりしたタンニンは焼き芋を皮ごと食べてような、芳ばしいような、ほろ苦いような柔らかな渋みを感じます。酸味と甘さのバランスの取れた温州ミカンのような酸があります。果実味、味わい、アフターに特質すべきことはないが、バランスの良い仕上がりに安心感があります。
4番目のイタリアワインはラトエヨ社のヴァッレ ダオスタ プティ ルージュ(Valle d’Aoste Petit Rouge) 2011、去年とヴィンテージが変わっていませんでした。残念ながらブッショネ、しかし、野太い。ブッショネを押し退けるように、特定できないフルーティーな香りに、鼻腔に無理やり押し入る白い花の香り。しかし、翌日に瓶の底に残っているワインを聞くと、前日の香りが嘘のように変わり、去年も感じたラズベリーやイチゴのシロップのような香りがします。フルーティーな香りの後を、ふらふらと薬草のような香りがまとわり付いてきます。去年のコメントを見ると、蒸れたような古木とか、古い薬箱の文字が残っているので、何となくではありますが、つながっているのかな、と思いました。酸とタンニンは身を潜めるように静かで上品で、果実味は弾力がありパワフル。少し長めの余韻が心地よく続きます。
ピノ ネロとは多分取り違えることは無いとは、思いますが。そこはブラインド怖いところです。
3本目はボルゴーニョのドルチェット ダルバ(Dolcetto d’Alba Borgogno)2013です。去年の2011年のコメントを読み返すと。2011年と2013年の天候の違いがはっきりと解るような気がします。それは、去年感じていた苦さに太さが無く、とてもゆったりとしているからです。私なりのドルチェットの理解はどんな癖球を投げられても、鷹揚に受け止めてくれる懐の深さにあります。2013年のように穏やかな年に造られたドルチェットは特にそのように感じられます。それと、去年拾い切れなかったナツメグやユーカリの香りや味わいが、はっきりとは感じられませんでした。しかし、ユーカリの香りを感じたい願望はあります。それと云うのも、以前ユーカリの香りを何気に拾えた時に、個性的な食材にも合わせられる理由がここにあるのではないか、と思ったからです。
サクランボの香りに隠れるようにクランベリー、グスベリーの香り。そして、ちょっと遅れてチョコレート香り。ほろ苦さを伴った滑らかで優雅なタンニンと洗練された穏やかな酸、中庸ではあるがふっくらした寛容な果実味はバランスよく。フルーティーなアフターテイストにゆったりした余韻を楽しめます。
今までの3本、同じ状態でブラインドで出されれば解るのだが、ヴィンテージが変わっていたり、ロットの違いによる変化に対する対処能力、ここをクリアー出来れば、何の問題もないのだが、そうは行かないの世の常。