彼と出会ったのは、音楽雑誌「バンドやろうぜ!」のメンバー募集コーナーに、僕が「アコースティックを中心としたバンドを・・・」と募っていたのがきっかけだった。 当時、僕は結婚して一年が経った頃の27歳、彼も同じ歳で、大阪の枚方に住んでいて、仕事のルート営業の中に「奈良を担当する日」があり、毎週土曜日になると午前中で終わらせた仕事のまま、当時、僕が住んでいた大和高田市のマンションにギターを持ってやってきた。 出会う前に送ってきたデモテープの声は、とても美しく、やさしく、「徳永英明」タイプの人物像を思い浮かべていたのだが、実際会った時のギャップを思い出すと今でも笑ってしまう。
彼の元には僕の代表曲として「レールの途中」「生まれて今日まで君にたどり着くまで」が入ったデモテープが送ってあって、「レールの途中」のアドリブギターソロを聴いてえらく衝撃を受けたらしく、それまで曲には「間奏」なんて必要ないと思っていたらしい・・・そして会って2回目の音あわせの時には、あのアドリブソロを完コピしてきたのだから驚きまくった。
それから彼には、簡単な「なんちゃってペンタトニックスケール」を教えたものだから、それ以後の彼の楽曲には、僕もそう弾くであろうアドリブギターが入ることになる。
彼は声が美しく、歌が上手かった。 そして作ってくる曲のメロディも、僕が一番好きなコード進行で、コーラスの感性も似ていた。
互いの曲に互いのアレンジを加えていく作業・・・彼の曲には僕がハーモニーとギターソロ、僕の曲には彼のハーモニーとギターソロ・・・そうやってお互いが、お互いの曲を調理しあって、それまでのただの弾き語りだった楽曲が、すばらしい別の楽曲へと姿を変えていった。
ある日の土曜日、いつものようにギターを抱えた営業マンは、僕の部屋にあがるなり「また出来て~ん、これ聴いてみて~」と笑みを浮かべながらもってきたカセットテープ・・・「あなたを初めて抱きしめた夜に」・・・それは彼のオリジナル曲の中でもダントツの出来だった。
それはまさしくパッヘル・ベルの「カノン」のようだった。 そしてこの楽曲が出来たいきさつを彼は笑いながら教えてくれた。
それを知る僕には、あの歌詞のすべてが解釈できるし、「おいおい、ちょっと待てよ~」と苦笑いするいきさつは今もなお僕の胸に秘めたままである。
彼の亡骸に会いに行く途中、当時のバンドメンバーは、まるで鎮魂曲のように流れるこの曲を、車の中で聴きながら涙していた。
「Yさん、ほんまええ曲いっぱい残していかはりましたね・・・」
「あんなに冷血なひとやったのに~(笑)」
「ほんまや~こんな嘘書いて、歌ったらあかんわ~(笑)」
「でも、口ではあんなんやけど、ほんま心底やさしい人間やってんなあ・・・。」
「・・・・・・・・・・。」
この「あなたを初めて抱きしめた夜に」は、僕と彼をつなぐ心の糸だ。
彼の亡骸に向かって勝手に約束した・・・俺が歌い続けていくよと・・・
そしてたくさんの人にも知ってもらい歌ってもらうことで、彼がこの世に存在したという事実を、何年も何十年も語り継がれていけばいいなと思った。 そしてそれが唯一、僕が彼の死に至るまでの、「何か・・・」を知り得なかったことに対する、せめてもの彼への気持ちでもあり、悔しさの克服でもある。
「あなたを初めて抱きしめた夜に」
悲しい恋の歌・・・愛しても恋してはいけない・・・せつない歌。
※歌ってくれてありがとう・・・そっさん、そしてゾロさん。
これからもよろしくお願いします。
彼の元には僕の代表曲として「レールの途中」「生まれて今日まで君にたどり着くまで」が入ったデモテープが送ってあって、「レールの途中」のアドリブギターソロを聴いてえらく衝撃を受けたらしく、それまで曲には「間奏」なんて必要ないと思っていたらしい・・・そして会って2回目の音あわせの時には、あのアドリブソロを完コピしてきたのだから驚きまくった。
それから彼には、簡単な「なんちゃってペンタトニックスケール」を教えたものだから、それ以後の彼の楽曲には、僕もそう弾くであろうアドリブギターが入ることになる。
彼は声が美しく、歌が上手かった。 そして作ってくる曲のメロディも、僕が一番好きなコード進行で、コーラスの感性も似ていた。
互いの曲に互いのアレンジを加えていく作業・・・彼の曲には僕がハーモニーとギターソロ、僕の曲には彼のハーモニーとギターソロ・・・そうやってお互いが、お互いの曲を調理しあって、それまでのただの弾き語りだった楽曲が、すばらしい別の楽曲へと姿を変えていった。
ある日の土曜日、いつものようにギターを抱えた営業マンは、僕の部屋にあがるなり「また出来て~ん、これ聴いてみて~」と笑みを浮かべながらもってきたカセットテープ・・・「あなたを初めて抱きしめた夜に」・・・それは彼のオリジナル曲の中でもダントツの出来だった。
それはまさしくパッヘル・ベルの「カノン」のようだった。 そしてこの楽曲が出来たいきさつを彼は笑いながら教えてくれた。
それを知る僕には、あの歌詞のすべてが解釈できるし、「おいおい、ちょっと待てよ~」と苦笑いするいきさつは今もなお僕の胸に秘めたままである。
彼の亡骸に会いに行く途中、当時のバンドメンバーは、まるで鎮魂曲のように流れるこの曲を、車の中で聴きながら涙していた。
「Yさん、ほんまええ曲いっぱい残していかはりましたね・・・」
「あんなに冷血なひとやったのに~(笑)」
「ほんまや~こんな嘘書いて、歌ったらあかんわ~(笑)」
「でも、口ではあんなんやけど、ほんま心底やさしい人間やってんなあ・・・。」
「・・・・・・・・・・。」
この「あなたを初めて抱きしめた夜に」は、僕と彼をつなぐ心の糸だ。
彼の亡骸に向かって勝手に約束した・・・俺が歌い続けていくよと・・・
そしてたくさんの人にも知ってもらい歌ってもらうことで、彼がこの世に存在したという事実を、何年も何十年も語り継がれていけばいいなと思った。 そしてそれが唯一、僕が彼の死に至るまでの、「何か・・・」を知り得なかったことに対する、せめてもの彼への気持ちでもあり、悔しさの克服でもある。
「あなたを初めて抱きしめた夜に」
悲しい恋の歌・・・愛しても恋してはいけない・・・せつない歌。
※歌ってくれてありがとう・・・そっさん、そしてゾロさん。
これからもよろしくお願いします。