いつのことだったか、何か袋小路に閉じ込められたような気持になったことがある。そのとき本屋の書棚で見つけたのが「ブッダの言葉」(中村元:訳・岩波文庫)だった。
さっそく買い求めて読んだ。「論語」と同じ形式で、ブッダの言行を短くまとめたものの集積だった。弟子との言葉のやりとりが多かった。
「論語」は、「子曰く・・・」で始まるが、「ブッダの言葉」は「・・・犀の角のごとく生きよ。」で終っていた。
仏教の教えはよく分からない。だが何故かこの言葉が印象的で意味を考えた。
「犀の角は大きいのが一本で堅そうだ。一人でしっかり生きてゆくつもりになれといういみだろうか。」
とそこまで考えて、はたと思った。
「1500年前の人々も悩みがあったのだ。」
至極あたりまえのことに気づいて何か心が落ち着いた。
「犀の角の如く生きよ。」この言葉の意味が正確にとれているかは分からない。しかし、何の気なしに出合った言葉が救いになることもあるものだと、しみじみ思った。
そのためにも乱読でいいから読書はするものだと思った。作品化するに当たっては「犀の角の如くに」の「角」を省略した。
こういうことが許容されるかは、賛否両論あろう。際どいところだ。