・透きとほる花の幻影夜々(よひよひ)に眠りをつつむ立春前後・
「土曜日の歌集」所収。
この感覚は何だろう。幻想的だ。「花の幻影」。冒頭の「透きとほる花」桜だろうか、夜桜だろうか。なにかこう象徴を突きぬけた感覚。下の句も擬人法で表現しているが違和感がない。
普段なら擬人法を厭う作者が見事に違和感のない表現にした。
どこの花か、何の花か、個別具体的なものは「捨象」されている。「表現の限定」「言葉の削ぎ落し」だか佐藤佐太郎にはこういう感覚はない。同じ歌論に学びながら、独自の「幻想的」表現を確立した。
尾崎左永子の「幻想歌」である。
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