岩田亨の短歌工房 -斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・短歌・日本語-

短歌・日本語・斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・社会・歴史について考える

2016年の作品より:五首抄出

2019年02月14日 00時10分50秒 | 岩田亨の作品紹介
2016年の作品より:五首抄出。


 ・わが死後に何か残らん屍は除外例なく土とならんに「星座」


 ・連山は雪をいだきて静かなり裾野のここは風強けれど「星座」


 ・あら草の影くきやかに地に映る夏の光の降り来る朝は「星座α」


 ・夕暮れを逢魔が時とよくぞ言う薄暮の街はすべてがおぼろ「星座」


 ・護民官に憧れたりし少年期かくのごときを追憶と呼ぶ「星座」



 これは「星座」「星座α」に掲載。これも尾崎主筆の選。「せっかく自分を見つけ始めたのだから、そんなに頑固にならないで」と主筆から声をかけられたのはこのころ。


 確かに自己凝視が深くなっている。一首目のように「諦念」に近い心理状態になったのもこのころ。何か心を打つ言葉に出会うと、そこで一首詠むということが続いた。


 その言葉を抒情詩の域まで高めるのが難しいのだが、ここを自分の中で昇華できるようにもなった時期。「星座」「星座α」の選者に抜擢されてから数年がたち、歌会での批評の仕方も自分なりの基準が持て始めたのもこのころだ。


 批評眼、批評の基準ができて、自分の作品もそれに沿って詠むようになった。「運河」の長澤一作代表から「歌論を持て。歌論がなければ秀作、駄作が混ざる」と言われたことがあったが、それを持ち始められた時期だった。

 こうして見ると第四歌集「聲の力」にはなかった歌境に達したということだろうか。第五歌集を出したくなった。




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