岩田亨の短歌工房 -斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・短歌・日本語-

短歌・日本語・斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・社会・歴史について考える

星座α28号・作品批評:茂吉と佐太郎の歌論に学んで

2022年04月15日 02時27分55秒 | 作品批評:茂吉と佐太郎の歌論に学んで
抒情とは何か

 「短歌は詩である。端的に言えば抒情詩である。」佐藤佐太郎の残した言葉だが、人間の生活の中に抒情がある。今号はそれを感じさせる作品が多かった。

 ・除雪する歌
 「諦観」は仏教用語。「悟りを開いてものを見る。」の意。上の句のリフレインに切迫感があるが、雪国で生活する者として、悟っているのだろうか。諦めていないところに人間としての強みがある。

 ・雪の降る街の歌
 雪の降る中で足早に家へと向かう人ら。景が顕ち、人々の凍えそうだという情感も伝わってくる。

・猫が仰向けになっている歌
 猫はふてぶてしいほどの姿で横たわる。表情にも喜怒哀楽がある。まるで人間だ。作品はそうした情景と、作者の猫への愛おしさが表現されている。

 ・残された時間が限りがあると感じる歌
 境涯詠である。作者は高齢だろうが、愚痴でないのがいい。自己凝視の深いところに、単なる説明ではない良さがある。

 ・不器用と母の小言を思い栗の皮を剥く歌
 栗の皮は剥き難い。不器用な自分か母か。母への思いやりが感じられる。また結句で言い切ったのもよい。

 ・窓から見える梵字型の雲の歌。
 梵字とはサンスクリット語の文字。墓石の背後の卒塔婆の最上部によく見られる。病院に入院中であろうか。祈りの心が伝わって来る。

 ・柿の木の洞の歌

 #洞とは大木に空いた穴。これを「昼の闇」と捉えたところに独自な切り口がある。#
  これも秀歌だ。(これは誌面では割愛した)



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