岩田亨の短歌工房 -斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・短歌・日本語-

短歌・日本語・斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・社会・歴史について考える

後の世に種まくように生きたいという歌

2017年11月14日 01時09分03秒 | 岩田亨の作品紹介
▪後の世に種まくように生きたしと母に当てたる手紙書きたり

  歌集未収録「星座」に発表済み

 共謀罪が成立した直後に詠んだ作品である。共謀罪は政府にもの言う市民の口を閉ざす。漫画家の小林よしのりさんが言う。日本ペンクラブ、日本演劇者協会が反対声明を出す。国連人権委員会の特別報告者が厳しく批判する。言論の自由が危ないのだ。

 共謀罪が成立しても、僕は声を上げ続ける。共謀罪で捕まるかもしれない。すでに、萎縮している歌人がいる。「これからイイネは押さない」とFBで明言している。「言葉を尽くして議論するのが民主主義だ」という歌人がである。

 彼を責めようとは思わない。個人の責任で判断したことだ。しかし、それが歴史の批判に耐えうるものだろうか。それは疑問だ。

 戦前、戦中の短歌は、戦争の鼓舞に一役も二役も買った。戦前の轍を踏むのは避けたい。心からそう思う。

 しかし、共謀罪で捕まるかも知れない。今ではなくいつかは。そこに僕は一抹の不安がある。捕まるのが不安なのではない。僕には持病がある。重症のうつ病だ。薬がなければ日光も浴びれない。そこで、信頼できる友人と国会議員の弁護士に知らせた。僕が捕まったあとに差し入れて欲しい薬の名前と分量を。他にも何人かに知らせる積もりだ。

 母にも知らせた。それを手紙に書いたのだ。僕の覚悟を聞いて、母は涙ぐんだ。90を越えた母には、親不孝を詫びよう。しかし、これは、譲れない。

 そんな切実な思いを作品に託した。

 小林多喜二という作家がいた。文豪の志願直哉から認められた逸材である。しかし、治安維持法で逮捕され、拷問で殺された。小林多喜二は自分の生きているうちに、願いがかなうとは思っていなかっただろう。自分のあとに続く人たちが必ず出るのを信じていたことだろう。


 自分を小林多喜二と比べる意図は全くないが、小林多喜二がいたから、今頑張れる。そんな生き方をしたいと思う。




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