日本近代文学館「夏の文学教室」2015年7月20日から25日
於)よみうりホール(有楽町)
今年のテーマは「『歴史』を語る、『歴史』を描く」だった。戦後70年の節目に相応しいテーマだった。
講師とテーマを紹介しよう。
20日 水原紫苑「谷崎潤一郎の戯曲」、藤田宜永「谷崎潤一郎と探偵小説」、島田雅彦「おとぼけの狡知」。
21日 中島京子「『小さいおうち』の資料たち」、和田竜「僕が読んきた歴史小説」、浅田次郎「戦争と文学」。
22日 木内昇「日常から見た歴史的事実」、池内紀「森鴎外の『椋鳥通信』、山田太一「きれぎれの追憶」。
23日 黒川創「漱石と『暗殺者たち』の間」、堀江俊幸「沈黙を迎えることについて」、町田康「多甚古村とか」。
24日 山崎佳代子「旅する言葉、異郷から母語で」、川本三郎「終戦前後の永井荷風」、荒川洋治「伊藤整『日本文壇史』の世界。
25日 伊藤比呂美「古典を読んで訳してその同時代に生きること」、いとうせいこう、高橋源一郎、対談「『あの日』の後に書くことについて」。
印象に残ったことをアトランダムに書く。
「谷崎潤一郎の探偵小説も戯曲も主題があり、人間を描いている。並外れた性欲を持っていて耽美的生活を描いたがそれを貫き、戦中も戦争に協力せずマイペースを通した。」
「内なる苦悩を見つめるのが文学であり、女性雑誌の表紙の変化に戦争が激しくなる時期の世相の変化がうかがえる。」
「森鴎外は時代を洞察していて将来をも見通していた。作品の中の人物を通して社会や時代を批判的に表していた。」
「戦争中の軍国少年でないものはいなかった。近代の戦争科学万能主義と結びついている。原発も同じだ。」
「幸徳秋水と安重根はテロリストとして処刑されたが、果たしてそうか。安重根に暗殺された伊藤博文は若い頃英国公使館を焼き打ちにし、国学者を暗殺している。歴史は多面的に見る必要がある。」
「日記文学は人間の日常のなかに文学があるのを示している。古典は先人の言葉の再現だ。」
「文学は人間のことを教えてくれる。人間を作るのが文学であり、総合的な人間の芸術が文学だ。すぐに役立つものではない。文学を勉強するなかで自分を磨ける。」
「文学の歴史は人間の歴史だ。」
こういうものを受講して読書欲を刺激されるのも一つの利点。松本清張、北杜夫の著作を買い、『戦争と文学』集英社(全20巻)をいつか読んで見たい。