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岩田亨の短歌工房 -斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・短歌・日本語-

短歌・日本語・斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・社会・歴史について考える

佐藤佐太郎45歳:風露草(ふうろそう)のもみじを詠う

2010年10月10日 23時59分59秒 | 佐藤佐太郎の短歌を読む
・さながらに秋の光に灼けしもの風露草のもみじ小さけれども・

 「地表」所収。1953年(昭和28年)作。

 先ずは読みから。「灼けし」は「やけし」と読む。「風露草」は「ふうろそう」と読む。「フウロソウ属」の花の総称「イヨフウロ」「ハクサンフウロ」「アサマフウロ」などがあり、主に山地に自生する多年草。7月から9月のかけて花をつける。高さ1メートルにも満たない。

 その「風露草」の葉が「もみじ」になっている。この場合の「もみじ」は紅葉(こうよう)のこと。文語では「もみづる」と言う。それも「秋の光に灼け」たように。秋とは言え、いまだ日差しは強い。その光に「灼け」たというのが詩的把握であろう。

 風露草を見たことのない読者にも、風露草の色形が浮かんでくる。

 それは「風露草」という漢字表記の字面。「風の露」と書く。いかにもささやかな印象が伝わってくる。

 次に、「小さい」という虚語のはたらきによる。「どのような状態か」がよく分かるのである。

 佐太郎の作品に共通しているものの一つだが、植物名を表す場合、見たことのない植物でも花の形状や姿の印象が伝わってくるのだ。つまり植物の属性(色や形状)に依りかからない作品なのである。

 難解語がないのと共通の基本に立っているということだと思うが、特別な知識がなくても読み取れる。

 佐太郎の作品に、地名・固有名詞が少ないのも同じ理由による。特別な知識がなければ読みとれない作品は、完成度が低い。




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