岩田亨の短歌工房 -斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・短歌・日本語-

短歌・日本語・斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・社会・歴史について考える

星座α18号:作品批評、茂吉・佐太郎の歌論に学んで

2019年06月13日 21時45分32秒 | 作品批評:茂吉と佐太郎の歌論に学んで
「星座α」18号 作品批評。

 抒情ということ

 短歌は定形の抒情詩。作者の思いや感情を表現しなければならない。

 ・(薄暮の海辺を見ながら半生を振り返る歌)

 自己凝視の作品である。自らの生を省みている。人間を描くのが芸術とすれば、作者という人間を自ら描いているのだ。


 ・(外灯の下で夕闇が動く歌)

 物理的に闇は動かない。だが、点滅する外灯の下では、闇が見え隠れする。これを感じた作者。夕暮の寂しげな情景がある。


 ・(人の気配のない家に白梅が散る歌)

 人間は見えない。しかし、人の気配のない情景には抒情がある。情景とは心の景。叙景歌の成立する条件がここにある。

 ・(帰ることのない風の歌)


 自在な詠い方。作者自身達観しているように思える。この作品は楽曲でいえば「レット・イット・ビー」だ。

 ・(夕日の差す歩廊で人影が届く歌)

 夕暮の情景が立ちあがり、孤独感にも似た心情が伝わって来る。一首の冷涼感もある。人影が誰のものかは関係ない。

 ・(夜更けの負の思考の連鎖がとめどない歌)

 真夜中に作者が自らを省みている。マイナスの情感が次々と浮かび上がるのだが、愚痴になっていないところがいい。

 ・(環状列石が秩序を保つ歌)

 縄文の遺跡、環状列石である。かの時代アニミズム(呪術)の信仰の対象であるとされる。独特な抒情である。

 ・(自分の在りようを思いつつ夕日を見送る歌)

 これも佳詠。作品が充実して目をみはっている。


 *通常は6首選歌するが、出来の良いものがあれば7首、8首を選んだ。*




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