岩田亨の短歌工房 -斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・短歌・日本語-

短歌・日本語・斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・社会・歴史について考える

「30周年記念 運河作品集」より(1)

2014年11月24日 23時59分59秒 | 岩田亨の作品紹介
『30周年記念 運河作品集』

 「歴史」(1)


・地下街に漂う時に身を置きてモカ珈琲を静かに飲みぬ


・シリウスを天狼星とよくぞ言うかくも冷たくかくも明るし


・冷淡な悪役の顔思わしめ女峰千鳥の花開きたり


・復讐の女神ネメシスに似る女そ知らぬ顔にとうとうと話す


・豊穣の神ディオニソスの居るごとく麦の畑に穂波が揺れる


・次々と人が改札過ぎる朝かぞえて居たり帽子の数を


・音高き風鳴りやまぬ薄明に寝返りを打つまたひとつ打つ


・わが聞けるラジオの雑音騒がしくバンアレン帯に異常あるべし


・展示室にいにしえ人の匂いして白磁の壺の輝きまぶし


・行き暮れて宿を求める人のごと微かに咲けり一人静は

 (以下続く)

 「運河」の30周年ということで、第三歌集『剣の滴』以降の作品のうちで、最も気に入った作品を出詠した。

 言葉遣いが「運河」の中で、僕だけ傾向が違う。新刊の『斎藤茂吉と佐藤佐太郎』(角川学芸出版)に描いたが、佐太郎の「純粋短歌論」に学ぶものが、100人いれば、100通りの新風が現れるはずだ。

 感情表現が直接的で、切実であれば、抒情詩としての質は悪くないだろう。佐太郎に学んでも、佐太郎の亜流では、意味がない。

 斎藤茂吉も言っている。「おのれの内的流転にあった言葉を用いよ。」




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