『30周年記念 運河作品集』(2)
「歴史」(続き)
・谷川に沿いて歩める真昼間にダム放水の時刻となりぬ
・悲しみを深く刻みて口ずさむ低音量の黒人霊歌
・清浄な秋の大気に日の差して思うこの世の正と悪とを
・冬至すぎ痛み感ずる日を受けてブロンズ像はにぶく輝く
・冷え冷えと空気の乾く聖夜なりハロゲンランプの光眩しく
・黒ずくめの衣装にその身包み居りバンパイア伝説語る男は
・亡者らがあまた居るべき戦績にミズトラノオの紫ふかし
・父祖の地に高麗由来の地名ありて渡来人の末とわれは知りたり
・日本に土一揆ありきローマにはスパルタカスの叛乱ありき
・髭ながき老人静かに語り居りアイヌの歴史の無残と無念
昨日の記事の10首と、今日の10首。合わせて20首出詠した。いずれも「詩人の聲」で、何回か聲に載せた作品だ。北海道の「第一回北ノ聲」でも、聲に載せた。そして不自然な所は、表現を変えた。
これらの作品は、短歌雑誌「運河」の30周年記念であるとともに、僕の「詩人の聲」参加1周年の作品でもある。
僕はこの作品集を、3部注文した。そのうち1部は「霧が丘短歌会」の会員の閲覧用としようと思う。
作品集のなかにはツイッター的短歌も出詠されていたが、ごく一部で大部分は主題の鮮明な作品だった。
叙情詩としての質の高い作品集となった。僕自身は、『運河』30年のうち半分の15年間会員として活動した。その意味からも記念作品となった。