・雫する傘畳みもち地下駅の群にをり群るる者の貌して
「尾崎左永子八十八歌」所収。2015年段階の自信作。
作者は「群れる」のを厭う。幾度も直接聞いた。戦時中「群れ」となって戦争を遂行した記憶からきたのだろう。国家が民を「群れ」として把握する「マイナンバー制度」にも作者は反対している。「星座」誌の校正の場で「かまくら春秋社」の担当者に向けて明確に言った。
そんな作者の移動途上の電車の中では「群れる」。その違和感が下の句の破調で表現されているのだろう。
「地下駅」地下鉄の駅か、地上線の地下か、それは「捨象」されいている。佐藤佐太郎の「表現の限定」。下の句が作者の違和感を「象徴」しているようだ。