岩田亨の短歌工房 -斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・短歌・日本語-

短歌・日本語・斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・社会・歴史について考える

報告「天童大人プロデュース:「詩人の聲」参戦6

2014年03月22日 23時59分59秒 | 岩田亨の作品紹介
第1065回 詩人の聲 岩田亨公演(6回目)


 3月18日(火)於Cache-cache d'Art



 「あえいおえおあお かけきこけこかこ させしそせそさそ たてちとてとたと

     (発声練習)

 今回は、私の第三歌集「剣の滴」の前半を読んできます。それに加え、制作中の20首詠、50首詠、56首詠も時間の許す限り読んでいきます。

 ・地の塩

 ひそやかに物陰に咲くドクダミをベツレヘムの地の塩に例えん

・剣の滴は

 濁りなき鮮紅色にありしとぞジャンヌ=ダルクの剣の滴は

・したたかに

 したたかに幹に絡まる蔓草の葉が繁り居り夏の陽のもと

・責めるにあらず

 誰かれを責めるにあらず照り返し強き街区のバス停に立つ

・汗吹き出ずる

 しらじらと東の空が明るみて汗吹き出ずる敷き道のうえ

・風葬

 静かなる終(つい)の儀式を風葬としたきわれなり砂漠が羨(とも)し

・記憶の連鎖

 あることを思い出じれば次々と顕ちあらわれる記憶の連鎖

・心は凝る

 地響きを立てつつ風吹く夜に居てひとつの思いに心は凝る

・封印を切る

 割り切れぬ心持ちながら過ごす夜にジンジャーエールの封印を切る

・虹の色

 夜を捨てる訳にもゆかず生きているわれにも虹の色は美し

・幻であれ

 珈琲にミルク落として飲むときによぎる予感よ幻であれ


・虚数

 実在をせざる数字を虚数とぞ呼びて拓ける世界を知らず

・落ち鮎

 落ち鮎の腹子を食(は)みぬ格別に罪の意識を持つともなしに」



 ここまでが僕の第三歌集「剣の滴」の前半だった。この作品群は、第二歌集「オリオンの剣」に敢えて収録しなかったものだ。しかし読み返してみると、「剣の滴」の作品群の方が完成度が高いのに驚いた。
 
 だがもっと驚いたのは、「オリオンの剣」「剣の滴」は、ともに神奈川県歌人会の優秀歌集の最終選考に残ったのだが、二冊とも残せる作品は、半分ないということ。

 このプロジェクトの目的が、「詩人を鍛える道場」とプロデューサーの天童大人は言う。参加している詩人の多くが、旧作を捨てている。旧作を捨てるところから新しい地平が見えて来るのだろう。


 この後、新作の、30首詠、50首詠、56首詠を読んだ。このうち30首詠、50首詠は、聞きに来て頂いた詩人、評論家のかたに「完成度が高い」と評価された。これは嬉しかった。

 しかし56首詠は、不用意に選んだ作品群だったので、「言葉に寄りかかっている」のを見破られてしまった。このプロジェクトは、こういった批評も受けられる場なのだ。普段の歌会では感じられない批評だった。






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