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書評:詩集 「ノスタルギィ」 福田知子著 思潮社刊

2014年05月30日 23時59分59秒 | 書評(文学)
福田知子著 詩集「ノスタルギィ」 思潮社刊


 この詩集は、四部立てである。そのなかに二十三篇の、詩が収録されている。著者の第五詩集だが、本の栞によるとそれまでになかっほど完成度が高いそうだ。

 先ずは部立てを紹介しよう。

  1、ひかりのほうへ 2、かぎりなくうたへ 

         3、かろやかな輪転 4、みどり、いくつかの光


 二十三篇の作品にはいくつかのキーワードがある。「みどり、ひかり、神話、」。

 作風は理知的で、リズムが快い。シベリア抑留、ゴールドラッシュに沸いた台湾の街など、現代社会への鋭い視線もある。


 「碧いドンゴロス」が、シベリア抑留を体験し、絵に描き続けた画家を主題としたものだ。

 「ジォウフェン」(原題は漢字)が、ゴールドラッシュに沸いた台湾の街をモチーフにした作品だ。


 又、亡くなった詩人への挽歌や、芸術家達を育んできたスイスの景勝地をモチーフにした作品もある。

 詩集の表題となった「ノスタルギィ」は、ドイツに素材を求めているが、ドイツの社会や現代史への批判的見方を暗示しているようだ。

 また最後に収録された「肉球ぷにぷに」の末尾には、京都弁も活かされている。著者は京都在住の詩人だ。「神話、神社」といった、伝統と現代を見つめる作品もある。

 全体を通しての主題は、「人間、みどり、ひかり」を一体に捉えた詩的世界の展開だ。

 しかし著者にとって、この詩集が終着点ではあるまい。彼女は「詩人の聲」のプロジェクトで「聲を撃って」いる。これから新境地を開拓していくことだろう。

「詩人の聲」の公演での彼女の作品には出来、不出来がある。その点、この詩集に収録された作品は、選りすぐりのものだろう。




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